
昨日は、実家に行ってきました。
仕事が終わってからだったのですっかり暗くなりましたが、葉っぱがすべて散ってしまったナナカマドの赤い実がきれいだったので、ぱしゃり。
何しに行ったかというと、味覚障害に悩む母に「亜鉛」のサプリを届けてきたのです。
難病指定になっている病気を持病として持っている母は、もともとネガティブ大王なのですが、こと病気に関することになるととてつもなくネガティブ。
病気に憑りつかれているのではないかと思うくらい病気のことに詳しくて、誰にも反論ができないくらい理路整然とネガティブ街道をまっしぐら。
これでは、自ら進んで病気になっているのではないかと心配です。
なので、とりあえず気休めでもいいからサプリを飲め、と。
本当は食品から摂取してほしいんですけどね。
アーモンドとか小魚とか、堅いものは歯が悪いから食べられない。
カキとか毎日なんて食べられない。
海藻はそんなに量を食べられない。
じゃあ、サプリを飲め、と。
体重が40キロを切るほどやせているけど、甘いものばかり食べているので中性脂肪が半端ない。
「バランスよく食べなよ」って言っても、もう、食事の支度も面倒くさいんでしょうね。
夕方6時半から8時という食事時に娘が来ているというのに、食事を出してくれるわけでも、自分たちが食べるわけでもない。
ちゃんと食べているのかなあと心配になります。
食べたくなくても食べるように。
出来るだけ散歩も心がけるように。
母がものすごく怖れている「認知症になること」を予防するのには、紫外線を浴びた方がいいんですって。
皮膚がんのリスクが高まりそうですが、そこはバランスを考えて。
「何事も過ぎたるは及ばざるがごとしだよ」と言って帰ってきました。
大判の来年の手帳をおいてきました。
「ボケ防止に日記を書きなさい」と言って渡しましたが、本音を言えば、ネガティブなことばかり考えている母に、客観的に自分を見て欲しくて。
ほんの一言でも二言でも、明るいことをノートに書いていけるように。
ものすごく嫌な顔で受け取ってくれましたが、私も、嫌な顔をされることを覚悟しつつ「書いてる?」って確認を入れる予定。
文章書くの好きじゃない。
字が汚いから書きたくない。
「四の五の言わずに、ちょっとでも書きなさい。ボケたくないんでしょ?誰にも見せなくていいんだから。」
自分の親を叱るのって、子どもを叱るより疲れますなあ。
本日の読書:光圀伝 冲方丁
Amazonより
『なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか―。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す―。生き切る、とはこういうことだ。誰も見たこともない「水戸黄門」伝、開幕。』
ものすごく読みごたえがあります。
たとえば光圀には兄がいたのに、彼が水戸徳川家の後を継いだこと。
歴史の事実としては知っていたけれど、大事なのは事実を知ることだけではなく、なぜそのようなことになったのか。
事実に関わる人々が、何をどう考えどう生きたのかそこが大事なのだということを、光圀の生き様を通して描いた小説。
つまり、光圀が編纂を始めた「大日本史」のような、人物本位の歴史小説なのである。
…まあ、歴史小説は、大抵人物本位ではあるけども…。
儒教に傾倒した光圀にとって、兄をさしおいて自分が後を継ぐというのは、義に反することなのである。
「なぜ自分なのか?」
それがわからないから、自分に自信を持つことができない。
常に兄に対してコンプレックスを感じなくてはならなかった少年期。
コンプレックスを抱えたまま文武の才を伸ばしていった青年期。
ひととの出会いに恵まれる。
宮本武蔵。沢庵和尚。山鹿素行。林羅山とその息子林読耕斎。保科正之。藤原惺窩の息子冷泉為景。後水尾上皇。滅亡した明から逃れてきた朱舜水。
なんと才能あふれた人たちが多発した時代であったことか。
詩で天下をとると決めたながらも、次々にやるべきことが目の前にあり、まわり道の日々を送るのであるが、それが光圀を成長させていく。
志半ばで世を去っていく人たちから託された思い。
義に生きる光圀は、それらを受け止めながら自分の道を模索していく。
自分の志と義の一致を求めて。
ことに、終生のライバルであり友であった読耕斎との交流と、正妻の泰姫とのたった4年の夫婦生活が、どれほど光圀の心を開放し、才能を伸ばしたことか。
泰姫と左近の関係は、のちの『花とゆめ』の定子と清少納言に似ている。できた女官と才能あふれ心豊かな姫君。なるほど、ここから発展させたのか。
光圀が誰かを殺害するシーンから始まり、誰を何のために殺したのかを謎としながら進められるので、小説的興味も尽きないで読み進められるのだが、実はここも史実なんですよね。
解釈が通説と逆なのに納得させられる筆力。
いや、これが真実でいいんじゃないでしょうか。
徳川3~5代の時を、光圀と一緒にわくわく過ごした。
楽しかった。