交際中である同僚の英明(松尾敏伸)からほかの女性と結婚すると言われ、会社を辞めた貴子(菊池亜希子)は、叔父のサトル(内藤剛志)が経営する神保町の古書店に住まわせてもらうことに。小説に興味のなかった貴子だが次第に本の世界に引き込まれていく。そんな中、偶然かつての恋人、英明の姿を見かけて……。



原作を読みたいなと思っていたら、映画になっていたので。

ストーリーとしては単純で、失恋して仕事までやめた主人公が少しずつ立ち直っていく話。
押さえこんでいた辛い思いが苦しくて、吐き出しに行くシーンが一か所あるくらいで、あとは淡々と時間は過ぎていきます。
傷心の日々だからというよりは、主人公の元からの性格なのではないでしょうか、極めて物事に対して消極的かつ受け身です。

古書店での暮らし、神保町での暮らしにしても、初めのうちは心が動くこともなく言われたことをこなして日を送っているのですが、知り合いが増え、そのかかわりの中で徐々に心が動き出し、しっかりと前を向くことができるようになります。

「いま、時間を無駄にしているのかな?」

心が疲れてしまったときは、十分に休めばいいんだよ。
そして、歩けるようになった時に、しっかり大地を踏みしめて行けばいいのさ。
無駄にするかしないかは、あとの行動が決めること。

そんなことを思いながら見ていました。

ファーストシーンの主人公と彼の姿。
ひとりで盛り上がってしゃべり続ける貴子と、それをあからさまにうんざりした様子で聞いている彼。その彼の態度に気が付かない貴子。
これは、この二人は、無理だなと思ったら案の定破局。
だってどちらも相手を見ていないもの。
「オレ今度結婚することになったから。彼女と。で、今晩どうする?」
ひどい男。
別れて正解だよ。

もし私に古本屋のおじさんがいたら、失恋してもしなくても、さっさと住み込みで働かせていただきたい。
かび臭い、ではなく、雨上りの朝の匂いのする古本屋で。

そして、あまり本を読むことのなかった貴子が、日当たりのいい部屋で金平糖を食べながら本を読むシーンが好き。

回収されていないエピソードの種がいくつかありましたが、もう少し編集に時間をかけることはできなかったのでしょうか。
いろいろ気になったまま終わったところもあります。

雰囲気に浸れるか浸れないかで、この映画の評価はわかれると思います。
私は、神保町の雰囲気が好きでした。