何の予定もない休みの日が好き。
朝ごはんを食べて、洗濯をして、ごみ出しをして、掃除をして。
家事なんぞちょちょいとしかやらないから、すぐに終わる。
で、今日は昼風呂に入ってみた。
ちょちょいの家事でもそれなりに汗をかいたので、ぬるめのお湯につかり、いつもの如く持ち込んだ本を開こうと思ったのだけど、昔のことが思い出されたのでやめた。
3人の小学生を連れて札幌に来た年の夏、当時は2カ月にいっぺん札幌に来るか来ないかだった10さんはその日もおらず、いつも休みの日はサッカー三昧だった息子ふたりがなぜか家で暇そうにしていて、なんとなくみんなが手持無沙汰だった午後。
昼食後、近所のスーパーに買い物に出かけた。
豆腐、お刺身、サラダの材料。
家に帰って子どもたちに「晩ご飯の準備をするよ~。」と声をかけた。
長男にはお刺身を切ってお皿に並べるように、娘と次男には協力して格別おいしいサラダを作るように言い渡す。
母は、みそ汁と冷奴担当。
「おかあさ~ん。レタスはどうやって切ったらいいの?」
「食べやすい大きさに手でちぎるといいよ。」
丁寧に大きさを確認しながらちぎる娘と、バリバリ適当に葉をむしり取る次男。
「おかあさ~ん。きゅうりはどうやって切ったらいいの?」
「適当にどうぞ。」
「おかあさ~ん。トマトは…。」
「適当に。」
「おかあさ~ん。ゆでたまごは、どうやって適当に切ったらいいの?」
「縦に4つに切ってもいいし、輪切りにしてもよし。みじん切りができるようだったら、マヨネーズで和えてもよし。まかせます。」
「お母さん。お刺身は切り方ある?」
「まぐろは少し厚めに。ひらめは薄く斜めに。できる範囲でいいから。」
3人の小学生がそれぞれにマイ包丁を手に狭い台所を右往左往しているのを見るのは、実はとっても肝が冷えることだけど、けがをしたら、今度はけがをしないように注意してやるのが親の仕事だし、高校野球の監督になったつもりでいろんなことをぐっと飲み込む。
切った材料を深皿にわさっと盛って完成したサラダチーム。
お刺身は、切ったまぐろを大皿の真ん中にぐしゃっと円く盛っている。
「なんじゃ、こりゃ?」
「これはお花をイメージしてるんだよ。真中はまぐろで、花びらみたいにひらめを盛るの。」
なるほど。大人にはできない斬新な盛りつけである。
しかも、説明を受けた後はおいしそうに見えてくるから、コピーライターの仕事は偉大なのだ。
できた料理を冷蔵庫に入れ、近くの銭湯に行くことにする。
出発は4時。各自準備すること。
「は~い。」
温泉の銭湯まで、子どもの足でも10分かからない。
「じゃあ、30分後にロビーに集合ね。」
男チームに言って、娘と二人で女湯へ。
男女ともほぼ同時にロビーに集合。
銭湯の隣のスーパーの前にある自動販売機たちの前で
「ひとり一本好きなものを選んでよし。」
「やった~!」
「お母さんはビールにしてもいいかなぁ?」
「いいよぉ!」
家に帰るとちょうどご飯も炊けていて。でも、少し晩ご飯には早いかな?
「どうする?」
「食べる~!」
子どもの世界に“待て。しばし”はないのである
「かんぱ~い!!!」
「あ~、ぼくの作ったサラダはおいしい。」
「私も作ったんだよ。」
「お刺身もおいしいね。」
就寝までの、いつもより長い自由時間。
みんなで遊ぼう。お母さんもだよ。何して遊ぶ?
みんなで晩ご飯を作って、銭湯に行って、ゲームをしただけなのに、寝る前に子どもたちが口々に「あ~、今日はすっごく楽しかった。またやろうね。」なんて、キラキラの笑顔で言ってくれたこと。
そんなことを、湯船の中でゆっくりと思いだした。
お風呂上がり、冷蔵庫を開けて冷えたブラッドオレンジジュースを飲む。
く~、すっぱい。
そんな今日の昼風呂体験。
本日の読書:星間商事株式会社社史編纂室 三浦しをん
カバー裏より
『川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。』
とても読みやすくてあっという間に読めちゃうけど、実はとても内容は濃い。
29歳の女性が抱える諸問題。
仕事と恋愛。恋愛と結婚。職場における自分の立場。そして結婚と友情。
どれもこれも風雲急を告げるのである。
しかしまあ、タイトルからしてわかるとおり、中心となるのは会社の仕事。
なのに、一緒に働くこのメンバーがこれだよ。
やさぐれもせず業務を遂行しようとする主人公は、実に実に真面目だと私は思う。
何事にも正面から体当たりなので、うまくいかないことはもちろん多いが、そんな時は一癖もふた癖もある同僚や、周りの人たちが助けてくれる。
何もしないで助けてもらうのを待つのではない。
何かしたことによって、周りが動きだす。そこがいい。
“自分の足が踏みしめる大地を、荒野に変えるか否かは、いつだって本人の意思にかかっている。”
幸代の趣味である同人誌作りが業務の遂行とリンクしてきて、秘密を守ろうとする者の思惑と闘っている緊迫した状況なのに、幸代の書く作品、課長の書いた昭和23年生まれの幕府の隠密が活躍…暗躍・・しない自伝、社のOBが書いたバリバリのロマンチック冒険小説、ストーリーに挟み込まれたこれらの作品が、いい意味で緊張感を解いてくれる。
そう、作品の中に登場人物の創作した作品が入り込んでくるのは「ロマンス小説の七日間」のようでもある。
無駄に入り込んでいるわけではないそれらの作品群を読み、一冊で何度もおいしい。
オタクの描写がいいんだよ。
お金も時間も大変なのに楽しんで。楽しむために大変を引き受けて。
“損得を度外視して熱中しちゃうのが、オタクの特徴ですから。”
そんな思いをして社史を作った結果が、すっきりとした勧善懲悪ではなく、へなへなした終わり方なのがまた、しをんちゃんらしい。
きっといつか、作品にならないところで川田幸代の逆襲がある、と、私は信じている。
朝ごはんを食べて、洗濯をして、ごみ出しをして、掃除をして。
家事なんぞちょちょいとしかやらないから、すぐに終わる。
で、今日は昼風呂に入ってみた。
ちょちょいの家事でもそれなりに汗をかいたので、ぬるめのお湯につかり、いつもの如く持ち込んだ本を開こうと思ったのだけど、昔のことが思い出されたのでやめた。
3人の小学生を連れて札幌に来た年の夏、当時は2カ月にいっぺん札幌に来るか来ないかだった10さんはその日もおらず、いつも休みの日はサッカー三昧だった息子ふたりがなぜか家で暇そうにしていて、なんとなくみんなが手持無沙汰だった午後。
昼食後、近所のスーパーに買い物に出かけた。
豆腐、お刺身、サラダの材料。
家に帰って子どもたちに「晩ご飯の準備をするよ~。」と声をかけた。
長男にはお刺身を切ってお皿に並べるように、娘と次男には協力して格別おいしいサラダを作るように言い渡す。
母は、みそ汁と冷奴担当。
「おかあさ~ん。レタスはどうやって切ったらいいの?」
「食べやすい大きさに手でちぎるといいよ。」
丁寧に大きさを確認しながらちぎる娘と、バリバリ適当に葉をむしり取る次男。
「おかあさ~ん。きゅうりはどうやって切ったらいいの?」
「適当にどうぞ。」
「おかあさ~ん。トマトは…。」
「適当に。」
「おかあさ~ん。ゆでたまごは、どうやって適当に切ったらいいの?」
「縦に4つに切ってもいいし、輪切りにしてもよし。みじん切りができるようだったら、マヨネーズで和えてもよし。まかせます。」
「お母さん。お刺身は切り方ある?」
「まぐろは少し厚めに。ひらめは薄く斜めに。できる範囲でいいから。」
3人の小学生がそれぞれにマイ包丁を手に狭い台所を右往左往しているのを見るのは、実はとっても肝が冷えることだけど、けがをしたら、今度はけがをしないように注意してやるのが親の仕事だし、高校野球の監督になったつもりでいろんなことをぐっと飲み込む。
切った材料を深皿にわさっと盛って完成したサラダチーム。
お刺身は、切ったまぐろを大皿の真ん中にぐしゃっと円く盛っている。
「なんじゃ、こりゃ?」
「これはお花をイメージしてるんだよ。真中はまぐろで、花びらみたいにひらめを盛るの。」
なるほど。大人にはできない斬新な盛りつけである。
しかも、説明を受けた後はおいしそうに見えてくるから、コピーライターの仕事は偉大なのだ。
できた料理を冷蔵庫に入れ、近くの銭湯に行くことにする。
出発は4時。各自準備すること。
「は~い。」
温泉の銭湯まで、子どもの足でも10分かからない。
「じゃあ、30分後にロビーに集合ね。」
男チームに言って、娘と二人で女湯へ。
男女ともほぼ同時にロビーに集合。
銭湯の隣のスーパーの前にある自動販売機たちの前で
「ひとり一本好きなものを選んでよし。」
「やった~!」
「お母さんはビールにしてもいいかなぁ?」
「いいよぉ!」
家に帰るとちょうどご飯も炊けていて。でも、少し晩ご飯には早いかな?
「どうする?」
「食べる~!」
子どもの世界に“待て。しばし”はないのである
「かんぱ~い!!!」
「あ~、ぼくの作ったサラダはおいしい。」
「私も作ったんだよ。」
「お刺身もおいしいね。」
就寝までの、いつもより長い自由時間。
みんなで遊ぼう。お母さんもだよ。何して遊ぶ?
みんなで晩ご飯を作って、銭湯に行って、ゲームをしただけなのに、寝る前に子どもたちが口々に「あ~、今日はすっごく楽しかった。またやろうね。」なんて、キラキラの笑顔で言ってくれたこと。
そんなことを、湯船の中でゆっくりと思いだした。
お風呂上がり、冷蔵庫を開けて冷えたブラッドオレンジジュースを飲む。
く~、すっぱい。
そんな今日の昼風呂体験。
本日の読書:星間商事株式会社社史編纂室 三浦しをん
カバー裏より
『川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。』
とても読みやすくてあっという間に読めちゃうけど、実はとても内容は濃い。
29歳の女性が抱える諸問題。
仕事と恋愛。恋愛と結婚。職場における自分の立場。そして結婚と友情。
どれもこれも風雲急を告げるのである。
しかしまあ、タイトルからしてわかるとおり、中心となるのは会社の仕事。
なのに、一緒に働くこのメンバーがこれだよ。
やさぐれもせず業務を遂行しようとする主人公は、実に実に真面目だと私は思う。
何事にも正面から体当たりなので、うまくいかないことはもちろん多いが、そんな時は一癖もふた癖もある同僚や、周りの人たちが助けてくれる。
何もしないで助けてもらうのを待つのではない。
何かしたことによって、周りが動きだす。そこがいい。
“自分の足が踏みしめる大地を、荒野に変えるか否かは、いつだって本人の意思にかかっている。”
幸代の趣味である同人誌作りが業務の遂行とリンクしてきて、秘密を守ろうとする者の思惑と闘っている緊迫した状況なのに、幸代の書く作品、課長の書いた昭和23年生まれの幕府の隠密が活躍…暗躍・・しない自伝、社のOBが書いたバリバリのロマンチック冒険小説、ストーリーに挟み込まれたこれらの作品が、いい意味で緊張感を解いてくれる。
そう、作品の中に登場人物の創作した作品が入り込んでくるのは「ロマンス小説の七日間」のようでもある。
無駄に入り込んでいるわけではないそれらの作品群を読み、一冊で何度もおいしい。
オタクの描写がいいんだよ。
お金も時間も大変なのに楽しんで。楽しむために大変を引き受けて。
“損得を度外視して熱中しちゃうのが、オタクの特徴ですから。”
そんな思いをして社史を作った結果が、すっきりとした勧善懲悪ではなく、へなへなした終わり方なのがまた、しをんちゃんらしい。
きっといつか、作品にならないところで川田幸代の逆襲がある、と、私は信じている。