毎日毎日バタバタと過ごしていて、ふと気が付いた。
次男に仕送りしてない。
ま、いっか。

と、思ったけれども、部屋で干からびていると困るので、電話で生存確認。
「生きてま~す。追試の再テストで、死ぬ直前ですけども。」

元気そうなので、仕送りしなくてもいいかな。
忙しいし、お金ないし、なによりめんどくさいから。
「いやいや、ぜひ送っていただきたい。」

え~。やぶ蛇だったか。
んじゃまぁ、気が向いたらね。
「ぜひとも、よしなに。」


ところで、集英社文庫の夏フェア、今年はAKBじゃないんだね。
「そうなんだよ。去年の夏は、集英社文庫の売り上げがいまいちだったらしくてさ。うちの店舗ではすごく売れたんだけど、全国的にはだめだったんだって。集英社の人が言ってた。」←次男は本屋でバイトしてるんです

うちの店舗ではすごく売れたって、あんた押し売りしたんじゃないだろうね。
「いやいや、普通にしか売っていませんって。ところで、今年ももうフェア始まっているので、各出版社のお勧め本よろしく~。」

仕送りしている暇なんかないけれど、明日本屋さんに行って各出版社の文庫目録もらってこよう。
わくわく。



本日の読書:きいろいゾウ 西加奈子

カバー裏より
『夫の名は武辜歩(むこあゆむ)、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。
 夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった―。』

去年映画を見て、すごく好きな作品だなぁと思ったので原作も読んでみた。
実に小説に忠実に映画化されていたんだということがわかった。

毎日をゆっくりと、丁寧に、濃密に暮らしていく二人の姿はとても好感が持てて、「ああ、私はこういう生活をしたいんだよなあ。」と、何度も思う。

とてもセンシティブなツマに対して、必要なときに必要な言葉をかけることができるムコさんは、とても大人だと思えるのだけれど、ムコさんはムコさんでツマの存在に支えられていて、ツマの不在を想像しては不安を感じていたりして。

映画を見たとき泣いてしまった理由。
泣ける映画というわけではないのに。周りの誰も泣いていなかったのに。
本を読んでいて、やっぱり泣きそうになる。
ずっと、ざわざわした心持ちで読み進める。
そして気づく。

私はこの作品が、手のかかるやっかいなツマが、不器用で臆病なムコさんが、アレチさんが、セイカさんが、大地君が、駒井さん夫婦が、平木直子が、カンユさんが、コソクが、その世界全部が、愛おしかったんだ。
とてもとても愛おしくって涙が出たんだ。

なぜ一緒に生きるのか。
互いを大切に思いあうって、どういうことなのか。
既婚暦のそこそこ長い私にも、まだそれをはっきりと言葉にすることはできないけれど、素直にそれを体現している二人の姿を見ていることは、私にも幸いなことだった。

早く大人になりたいけれど、ちゃんと子どもをやってから大人になると言った大地君。

そう。効率じゃない。
ちゃんとやっているかが大事。
ゆっくりと、丁寧に、濃密に。