あらすじ: 不慮の事故で全身麻痺(まひ)になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を探していた。スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)は生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに面接にきた不届き者だったが、フィリップは彼を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。
珍しくフランス映画です。
実話を元に作られたとか。
大金持ちであっても首から下が麻痺していて、介護者がいなければ生活することのできないフィリップ。
娘はいますが、父とかかわろうとはしない。
ドリスはスラム街に母と小さなたくさんの弟妹と住んでいる。弟のひとりは何か後ろ暗いことをしているようだし、ドリスも何かをやって家から追い出されます。
住む世界の全く違う二人。
フィリップの友だちは、ドリスのような人間を身近に置くのを心配しますが、フィリップは数多くの応募者の中からドリスを選びます。
ドリスだけが、フィリップに同情していないから。
雇用者と被雇用者、介護人と被介護人。
ふたりの間にはいろんな形の上下関係が成立してもおかしくないのですが、ストレートに感情をぶつけてくるドリスに、フィリップの心が徐々に柔らかくほぐれて、人間同士の付き合いが始まります。
それがとてもいいの。
上流社会の常識が全く通じないドリスの言動によって、少しずつフィリップの表情が変わってくる。
腫れ物に触るようにではなくて、ぶつかり合っても本音で話す。
フィリップが本当にしたいこと、本当はしたいことを、さりげなく引き出してサポートする。笑顔で。
家庭の事情でドリスが辞めた後、フィリップは以前以上に気難しくなり、代わりの介護者の手に負えなくなる。
けれど、後日ふらりと現れたドリスは、フィリップが一番必要としていたものを彼にプレゼントして立ち去る。…ところで映画は終わるけれど、実際のふたりはその後も別々の人生の中で深い絆を保っているそうです。
ぷっと吹き出すシーンもたくさんありますが、全体に心の温かくなる映画でした。
とてもとてもおすすめです。