整体に行くと、施術の時に深呼吸をすることがあるのです。
整体師さんの声に合わせて、息を吸って~、吐いて~。
そのたびに思い出すのが、去年の人間ドック。

人間ドックって嫌いじゃないです。
そりゃあ、病院は嫌いですけれど、長大な待ち時間に本を読み、胃カメラの麻酔が切れるまでベッドで休ませてもらえるのは大変喜ばしい。
そんなわけで、私ができる恩返しがあれば、ぜひ返しておきたいものです。

エコー検査というのがあります。
あの扇をひっくり返したような形の砂嵐の中に何やらもやもや写っていて、「これが赤ちゃんです」とか「脂肪肝ですね」とか言われるわけです。

その日、私のエコー検査を担当してくれる人の胸に輝いていた「実習生」のバッジ。
そりゃあそうだよ。瀕死の重病人相手に実習するわけにいかないもんね。
ここはやっぱり健康な私が実習生の教材になりましょう。
恩を返す時は、今でしょ!

ほぼ同じタイミングで隣にも受診者が入りましたが、てきぱきした指示が聞こえるところを見ると、多分実習生ではなさそう。
私の方はもごもごと「ベッドに寝てください。あ…上は脱いで。」
えーと、胸にかけるタオルはないんでしょうか?

どばどば~っとジェルを塗りたくり、器具を押し当てる。
たぶん映像が見づらいんでしょうね。砂嵐だもんね。もっとはっきり見たいよね。
ぐぉりぐぉりと器具を押し付ける。
痛いって。(ノ◇≦。)←心の声

誰だって最初は初心者さ。痛いけど…痛いけど…医学の向上のために、この身を捧げましょう。

「はい、大きく息を吸って~。」
ぐぉりぐぉり。
(く、苦しい…。)
「はい、息を吐いて~。」
(ふひ~)

誰だって最初は初心者さ。苦しいけど…苦しいけど…医学の向上のために、この身を捧げましょう。

何度やっても、息を吐いて~のタイミングが遅い気がする。
そばにいる指導者の人に、何とかしてほしいと涙目で訴えるけど、暗くて伝わらない。

「はい、大きく息を吸って~。」
ぐぉりぐぉり。
(いい加減痛いし、苦しいわ!(-_-メ)
 …
 …!
 !!!)  (((( ;°Д°))))
「あ、吐いてください。」

人間ドックで死ぬかと思った。


本日の読書:鉄鼠の檻 京極夏彦

Amazonより
『忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。』

これは、最初からの計算なのでしょうか。
「姑獲鳥の夏」の舞台であった久遠寺医院の院長再登場です。
あの事件では医を司るものではあったものの、事件には関係者でありながら傍観することしかできなかったその久遠寺医師が、今回はしっかりと事件に向かい合い、医者として再生します。
関口も。あともう一人も。

前巻では精神分析とキリスト教でしたが、今巻は禅宗。
禅寺が舞台です。

修行僧だらけのこの寺が、実に人間関係が複雑で、全然悟ってないじゃんかよぅ、と思いつつ読んでおりました。

ざっくり言うと、「そもさん」「せっぱ」が臨済宗。
「只管打坐」(ひたすら座禅)が曹洞宗のようです。
越前に建立された永平寺に敬意を表して、「常山」という福井県の純米酒を飲みながら読みました。←をい!

いやいや、つらい読書でした。
何がって、誰もが認めたくない自分というものがあるじゃないですか。(私だけ?)
何人ものお坊さんが、そんな自分を見ないように必死で修行をしているのですが、それではだめなんですよね。
見たくない自分を認めるところから始めなければならない。

そして読んでいる私も、そのたびに見たくない自分を見る羽目になる訳です。
自分のコンプレックスだったり、過剰な自意識だったり。
読み終わった時は、大きく自分不信になりましたよ。こんなに嫌な奴だったかと。
それで悟れたかというと、んなわけない。

これが私です。しょうがないじゃん、と開き直るのもまた嫌な奴なので、まあ、そろそろと誰にも(本人にも)気づかれないように、少しずつ自分をよい方に変えていけたらいいね、くらいで。←ヤル気あるのか?←ええ、まあ、多少…。

今回の妄想。
関口の奥さんって、もしかしてあちらの世界の方?と、思っちゃいました。
だって、あんなに話下手で、説明下手で、なのにちゃんと理解してますよね。
「深追いしないでくださいね。」
今までの事件のことなんて、きっと何一つ関口は説明できていないはず。
なのに。

きっと関口は、クモの巣に引っかかっていた蝶を助けたりしたことがあるに違いない。

京極堂の奥さんから情報が入っているってことは考えられますが、京極堂の奥さんともどもあちらの世界の方というのも、また、あり得る話なのではないでしょうか。
しかも、京極堂は奥さんの正体知ってるんだよ、きっと。
そういう人だもの。