あらすじ: 会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目の直之(堺雅人)。江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、加えて武家社会には身分が高くなるにつれ出費も増えるという構造的な問題があった。直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断し、猪山家の人々は一丸となって倹約生活を実行していく。


実際にに発見された加賀藩の武家の入払帖(家計簿)がもとになっているとのこと。

実在の家庭の借金返済の様子や、明治維新のころの身の振り方、子孫たちのその後などは史実に基づいているようです。


だからなのか、時間の流れが淡々としていて、小説が原作だったならもっと深く掘り下げられるであろう心理描写などもあっさりめ。


その代わり構成が、伏線がうまい。

あの櫛がここで活きて来るのか、あの友禅、お弁当のくだり、父をおんぶする姿、ひとつひとつに意味があったことを後で知る。


そして松坂慶子。武士の妻としての倦怠感が実にうまい。

しゃんとした武士の妻はドラマなどでもよく出て来る。けれど、家事をする必要はなく、家を守ると言えば聞こえはいいけれど、夫の後ろですることもない日々を過ごす武士の妻。

眉を剃ってお歯黒をしてキセルで煙草を吸っていたなら、すぐに江戸時代にタイムスリップしても違和感なく過ごせると思うほど。

着物道楽でもしてなきゃ、やってられないわよ。


おばばさま(草笛光子)の存在感も好きでした。

実は一番の計算おたく。いいわ。


借金を返すために家財道具を売り払い、質素倹約を堂々とする。それは、世間体を何よりも気にする武家ではなかなかしがたいこと。

でも、借金で身代をつぶしてしまうことの方がよほど恥ではないか、と。

借金を返すためのお金を貸してくれる人は、実は周りにたくさんいるのです。

でも、それに甘えて借金を返しても、新しい借金ができるだけ。何の解決にもならない。

借金ときっちり向かい合い、できることを誠実にやって返していくのが大事なのだと。

どこぞの借金大国のえらいさんに聞かせてやりたいよ。


数字の帳尻を合わせるのが経理ではない。

物やお金の動きを記録しておくのが帳簿であり、帳簿を見ることによっていかにお金や物を動かすことができるかが逆にわかる。


難しい話を楽しく、わかりやすく見せてくれた映画でした。

本の方も読みたくなりました。