義母が亡くなって、今日で1年になります。
お母さん子だった10さんは、遺影と同じ写真をもらってきて、1年間ずっと和室に飾っていました。うちは仏壇がないので、小さな飾り棚の上にいていただいていました。
私はずっと、一人で和室にいたら淋しいから、居間に来ていただいたらと言っていたのですが、仏間のある家で育った10さんからすると、和室が最適だろうということだったのだと思います。
1年が経って10さんの気がすんだのか、今日、義母の写真は居間に来ました。
最初はテレビと並ぶように写真をおいたのですが、テレビの好きな義母だったので、テレビを見られるよう本棚にいていただくことにしました。
これで、多分10さんも淋しくないのでは?
残念ながら10さんはきょう飲み会なので、私これからDVDを見ることにします。
「ONE PIECE」だけどいいですか、お義母さん。
本日の読書:かたみ歌 朱川湊人
カバー裏より
『不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる。「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇跡を描いた連作短篇集。』
作者は2003年に日本ホラー小説大賞を受賞した、ホラー作家。
でも、おどろおどろしい小説を書く人ではありません。
この作品は昭和30~40年代の東京の下町を舞台にしたもので、どことなく懐かしく、あたたかい感じがします。
けれどもタイトルの「かたみ歌」でもわかるとおり、どの短編にも死の気配が濃密に感じられます。
覚智寺というお寺がどうも、黄泉の国とつながっているらしい。噂だけれども。
そしてちょっと見には怒っているように見えるけれども、芥川龍之介に似た、有名な野球選手と同姓同名の古本屋の店主がキーパーソンだ。
商店街のレコード店からいつも流れている、昭和の流行歌。ゆったりと流れている時間。
ちょっと変わったことの起きる町。でもとても住み心地のいい町。
そこで好きな女と暮らしたり、大好きな兄と遊んだり、恋をしたり…。
すぐそばにある黄泉の国は、私たちにはわからない。私たちの世界と黄泉の国とのあわいにあるはかないもの。それは優しさと言っても切なさと言っても少し違う気がする。
最後の短編を読むと、それまで時系列がばらばらだった作品たちが、すっきりとつながっていく。
これは、ミステリーと言ってもいいのかもしれない。