毎日 三回 病室に訪れる
明るく声をかけ 体調を整えて 家に帰ってくるように
私も 仕事をやめ 実家に帰り 母を看る覚悟を決めていました
母の 病室に行く度に 帰り道 無性に寂しくなり
真っ直ぐ 家に帰る気にならない
特に夕方 最終的に 母の顔を見て 帰るときは
明かりを求め ショッピングセンターに
買い物もないのに 行ってしまう
最後の日 明るく希望に満ち溢れ 気分も高揚していました
病院の個室の空気違ったからです
色々 ありまして
ナースが それぞれに 母のために 最善を尽くしてくれました
病院や 福祉の仕事をしてきた 私にも
不満や不服がないほど
一人の人間として 尊厳を保たせてくれるような
プロフェッショナルな仕事をしてくれました
ただただ 有難い
哀しみも 恨みも 拭い去ってくれるような
看護を提供してくれました
だから 光に溢れた病室になったのかな?
なんて ぼんやりと考えたりもしました
それも ありつつ
人が 亡くなるときは 悲しみでなく 光に包まれ 光に帰っていくのだろうな
そうも 思えました
死は 怖くない 悲しくない そうとも 思えました
それだけではなく 千の風になっては
良くできた歌だと しみじみ思いました
霊とか そんな存在でなく
死んだ直後の母は 私と行動を共にしました
死に装束は いつものお気に入りの服にしてもらおうと 病院から 実家に服を取りに行った時
玄関を開け 家にはいると 母の匂いがしました
母は 出血が続き 独特の 鉄の匂いが 死の直前の
母の匂いでした
私に まとわりつくように 匂いがしました
子供にも 今 何か匂わない? そう問うと
あれ? おばあちゃんの匂いや
そう答えました
やはり 一緒に 帰りたがっていた 家に帰ってきたんやね
続く