アントニオside



『落ち着いたか?』
「ん」
『ふはっ、やっぱヒドイ顔やな(笑)』
「うわ、私彼女やで!普通彼女にそんなん言う!?
アントニオやってヒドイアゴのくせに!」
『ヒドイアゴって何や!?』
「『あははははっ』」

久し振りに声を出してこびーと笑いあった気がする。
それだけすれ違っていたんだ。

「でもな、ケジメつけなアカンことがあんねん」
『は?まだそんなこと言っとるんか』
「まだみんなに謝ってへん」
『…せやな』

その時ドアをノックする音が聞こえてきて、慌ててこびーから離れてベットに戻った。

「失礼します
姉さん、どうですか?」
『ツリシか…こびーに手当てしてもろたし、落ち着いたわ』
「こびーさんが?」
「……なぁ、みんな教室に集めてくれへん?」
「…分かりました」

頭を下げて出ていったツリシ。

「ほな、行ってくるわ」
『私も行く』
「でもケガが…」
『大丈夫や
私もアイツらに謝らなアカンことがあんねん』

マジ女に対してまだ収まりのつかない奴もいるだろう。
マジ女の生徒の中にも収まりのつかない奴も居るはず。
私のタイマンで今の四天王は納得して帰ってくれたが、世代交代が済めばそうはいかないかも知れない。
そうなれば近い将来マジ女と激尾古の衝突は免れない。

私はこびーに支えられながら看護科の教室へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーー

「姉さんどうぞ」
『いや、いい』

教室に入ると、すでに舎弟全員が集まっていた。
ザコボスがいつものイスへ座らせようとしてくれたが、それを断って立ったままこびーの肩を叩いた。

「みんな…ごめんなさい」

深く頭を下げるこびーを見て、目を丸くする舎弟たち。
みんなが言葉を失う間、こびーは頭を下げ続けた。

「ええっと…こびーさんは、激尾古を思ってカチコんだんですよね?
それを謝られても、自分らは困ります」
「って言うか、私も連れてってくださいよ
声かけてくれたらどこでも着いて行ったのに
私ほど頼れる舎弟は他に居ませんよー?」
「私ほど頼れない舎弟は居ないの間違いだろ?」
「ちょっ、ヒドいですよ!」
「アントニオさんが守ろうとしたモノも、こびーさんが求めたモノも少しは分かるつもりです
こびーさんだけが悪いなんて思えません」
「欲を言えば、抱えてたもの少しは私達に吐き出して欲しかったですけど」
「みんな…」

ツリシ、ザコボス、KY言葉に他の舎弟達も頷く。

『私にも謝らせてくれ
激尾古総長としてのタイマンに負けてもうた…すまん』

こびーの隣で私も頭を下げる。

「頭上げてください」

そう言われて頭を上げると舎弟全員が私を見ていて、中には涙を流す奴もいた。

「見てください、私達は誰ひとり傷ついていません
姉さんは総長としてこびーさんも私達も守ってくれました
姉さんは総長として謝るようなことなんて何もしてません』
「姉さんとこびーさんが何を築いて、何を守っていたか…
それに気づかないほと私達だってバカじゃありません」
「そうですよ
お二人は私達に背中を預けてはくれませんでしたけど、私達なりに背中を見てきたつもりです」
「お二人がずっと守っていた激尾古です
総長と副総長として、卒業していってください」


"私は何がなんでもコイツらを守る…これが上に立つ者の、てっぺんの務めや"


いつかのハドウの言葉。
あの日からこの言葉が私のてっぺん像だった。

なかなかマジ女にカチコまなかったのだって、仲間の力を認めてなかった訳じゃない。
でもそれは、こびーだけじゃなく舎弟達にも不満はあっただろう。
陰では頼りない総長と言われているかも知れないとさえ思ってた。

でも、ちゃんと伝わっていた。
初めて私は間違ってなかったと思えた。


―――――――――――――――

「だいぶケガ良くなったな」
『あぁ、もう万全や』

いつもの教室に、今はこびーと二人きり。

こ「ケガしてた方が大人しくて可愛かったな」
『アンタな(怒)』
「…でも、卒業式までによくなって良かった
壇上でフラフラしたらカッコ悪いで、総長さん」

もうすぐ卒業式。
私は総長のまま、こびーは副総長のまま激尾古を卒業する。

『ホンマやで
さくらにやられてフラフラのまま卒業なんてカッコ悪すぎや』
「強かったな、ソルトもさくらも」
『…やっぱタイマンはアカンのかな』
「え?」
『私達は背中合わせて戦う時が一番強い
前にハドウが言うとったやん』
「あー、言うてたな(笑)」

負け惜しみかも知れないけど、こびーと背中を合わせてソルトさくらコンビと戦ってみたかった。
私達もソルトももう卒業なんが残念や。

「明日さくらとソルトがやり合うって」
『そうか…時代は移っていくんやな』
「さくらが勝つみたいな言い方やんか」
『いや…私が言いたいんは、生きのええ下がおるんは頼もしいなっちゅうことや』

卒業が近づき、私達の意思を継いでくれる後輩達の背中が頼もしく感じる。
私達が居なくてももう大丈夫だと実感できる。
寂しくもあるけど、これが自分達の後輩なんやと思うと何よりも誇らしい。

「私らももう卒業やからな…」
『うちは大丈夫や
根性ある下がちゃんと居るからな』
「そうやな」
『なぁこびー』
「ん?」
『私はアンタと一緒にええ夢見さしてもらった……おおきにな…』
「アホか…私もや…」

照れながら笑顔を見せたこびー。

もっと早く伝えたら…
もっと早くこの笑顔が見れたら…
どんなに後悔しても過去は変えられない。
だからもしもの話はもうやめよう。



次は二人でどんな夢を見ようか?

無限に広がる可能性
こびーと仲間になったあの日と同じように
今はただワクワクしている。



END

  
こびーside


~ 現在 ~



目の前にはソルトにやられたあの日のように傷を負ったアントニオ。
それが自分のせいだという罪悪感に胸が押し潰されそうになる。

「約束…忘れたとは言わさんぞ」

その言葉にハッとして顔を上げる。


"私に着いてこい
てっぺんからの景色見せたる"

"うん、着いてく!"

"私達がてっぺんとるまで着いて行くし、ちゃんと彩を支えるな"

"せやから二人でてっぺん…約束やで?"

"おう、二人でてっぺんとったんで!!"


いつかした約束。
もう5年以上も前の話だ。

でもアントニオと出会うまで一人だったあの頃の私は、この約束が支えだった。

「こびーが背中守ってくれたから私は今までやってこれたんや
ずっと背中を見てきた?
ちゃうよ、私達は背中合わせてここまでやってきたんや
こびー、思い出してくれ」

アントニオの言葉に今まで堪えてた物が溢れ出した。

確かにアントニオは私に背中を預けてくれていた。
背中を合わせて何度戦っただろうか…
舎弟が増え、アントニオと二人で敵と戦うことが減った。
それがいつの間にか私に大事なことを忘れさせていた。

ずっと背中を預けてくれてたのに、私はそれを裏切った。

泣く資格なんてないのに、私は声を上げて泣き崩れた。




アントニオside


泣き出したこびーを見て、こびーの気持ちが見れたようで少しだけ嬉しくなった。
こびーの涙を最後に見たのはいつだったかもう思い出せない。

"私だっててっぺん取りたいんや"

ソルトが病院に運ばれたと聞いてから、初めて私の前に現れたこびーが言った言葉。

一緒に激尾古のてっぺんに立ったつもりだった。
一緒にマジ女を倒して二人でてっぺんになりたかった。

私にとったらそれは当たり前のことで、口に出すまでもなかった。
でも、この子には伝わってなかった。
それはそうだ。
言葉にしなくても伝わるなんてとんだ自惚れだ。
私だってこびーの気持ちを何一つ分かっていなかった。

『こびーとやなかったら、私は激尾古のテッペンにもなれなかったと思っとる
だからそんな卑屈にならんとってくれ』
「でもっ……私…アントニオも…みんなも…裏切ってっ…」

咽び泣きながらも、まだそんなことを言うこびー。

『だったら私もケジメつけなアカンな』
「なん…で?」
『こびーが私を裏切ったなら、私はこびーを追い詰めた
そのケジメつけなアカン』

てっぺんに拘ったことが、ソルトに拘ったことが、こんなにもこびーを追い詰めていた。
一番大切な人を、一番守りたかった人を傷つけていた。
そんなことにも気付けないなんて総長もこびーの相棒も失格や。

「アントニオのせいやない…私が…勝手に…」
『せやったら、私のケガもアンタのせいやない』
「けどっ」
『どうしても責任取りたいなら…』

最初からお互いの思いをしっかり伝えていたら、こんなことにはならなかったかも知れない。
けどそれは、もう過ぎた話や。

そろそろこびーにも、自分の気持ちにも素直になろう。
遅すぎたかも知れない。
でも不器用な私には、こういうことがなければいつまでも言えなかったかも知れない。
今が素直になるときや。

『これからも私に着いてこい』
「え?」
『もう卒業やからいつまでもヤンキーやってる訳にはいかんけど、ヤンキーの世界だけにてっぺんがある訳やなくて…
これから先やっててっぺんはある訳で…やから…』
「アントニオ?」
『やから…その…
ずっと側に居ってくれ』
「えっ?」

泣き腫らした目を見開くこびー。
そりゃ驚くか…
今から伝えようとしてることを聞いたら、もっと驚くやろか?
嫌われるかな?
それでも…
これから君には素直になろう。

痛む体を起こしてベットから降りて、床に座り込むこびーの横にしゃがむ。

『…ふっ、不細工やな』
「は、はぁ?今そんなん」
『やって目腫れてるし、メイク落ちてるし…鼻水も出とるで(笑)』
「なっ…」
『せやけど、そんな顔でも可愛いと思ってまうねん』
「え、それどういう…」
『好きなんや
こびーが…美優紀が好きや
やから…私の側に居ってくれ』

いつからかは分からない。
気付いたら好きだった。

隣に居るのが当たり前すぎて見えてなかった物が多すぎる。
だけど打算でずっと一緒に居た訳じゃない。
それだけは分かって欲しい。

「嘘…」
『アホ、嘘でこんなこと言えるか』
「本気なん?」
『私はいつだってマジや』

ニヤッと笑って私がそう言うと、再び泣き出すこびー。
頭でも撫でてやろうと手を伸ばそうとした瞬間、飛び付いてきたきたこびーは私の胸に顔を埋めて声を上げて泣いた。

『…着いてきてくれるか?』

泣き続けながらも、コクッと頷いたこびーを抱きしめる。

「けどっ」
『裏切った話はもうええわ
言うたやろ?アンタのケジメは私の側に居ることや』
「本気なん?なぁ、ホンマに…」

まだ信じられないという目で私を見上げるこびー。

こうなるまで伝えなかった自分の責任。
自業自得だ。
だから、これは私のケジメ…

『美優紀…好きや』

私には恥ずかし過ぎるその言葉。
けど、信じてくれるまで何度でも伝えたる。


 
アントニオside



「そんなもんか?
まだテッペンは早いなアントニオ!!」
『こんなもんちゃうわ!!』

拳と拳がぶつかる。
ハドウが数歩下がって腕のガードを下ろす。

「来いや!」
『なめんな!』

まるで挑発するようにノーガードで、数歩下がったその場で私を待ち構えるハドウ。

挑発になんてそう簡単に乗るかい!
そこへ飛び込んで、冷静に急所に蹴りを放つ。

「うっ…」

私の蹴りは鳩尾に入り、この日初めてハドウの顔が歪んだ。
その衝撃で2、3歩下がったハドウはまたもやノーガードを下げて私を見る。

「まだまだやな
こんなんじゃ私は倒れん」

おかしい…
鳩尾に蹴りを食らったハドウの額には汗が浮かんでいる。
なのに尚もガードをせずに私を挑発してくる。

もしかして私の冷静さを欠くのが作戦ではないのか?
だとしたら他に何が…

ハドウに拳を放ちながら考える。
考え事をしながらどうにかなる相手ではなくて、ハドウの拳が目前に迫ってきた。

『っ……!?』

ハドウから放たれたストレートは直前にフックへ変わり、私の体は少し右へ押し出される。
急に拳の軌道を変えたせいで威力が弱かった。

威力が落ちるのに何故わざわざ軌道を変えたのか…

チラッと後ろを確認すると、クロコゲも徐々に後退していく。
また壁を背に戦おうとしてるのか…
けど1度やられたこびーはそれを警戒してるし、それはクロコゲも承知なはず。
ならばこの二人は何を狙っているのか…
チャンスだったのにハドウがストレートをフックに変えた意味…

まさか…

『こびー!あんま離れんな!』
「え?」
『離れんな
もっと側で戦え』
「う、うん」
「……」

私とこびーを引き離す。
私の予想が正しければ、さっきからハドウとクロコゲの動きはそれに徹している。
そして眉間に少しシワを寄せたハドウの表情を見れば、それは正解だったようや。

『何が狙いか知らんけど、残念やったな』
「はぁ…しゃーないな
小細工なしで全力でいくわ」
『当然や、全力でこい』
「……ハッ!」
『!?』

何が起きたか分からないまま、私の背中は床に着いていた。
分かったのは突如胸の辺りに感じた衝撃と、それによって倒れたということ。

「アントニオ!」
『…大丈夫や
クロコゲに集中せえ』

立ち上がりながらこびーに目をやる。
こびーは小さく頷いてクロコゲに向かっていく。
こびー対クロコゲはこびーに分があるようで、今回は小細工の通用しないこびーにクロコゲは苦戦しているようだ。
こっちは今のところ心配しなくて良さそうだが、問題は目の前のこの人物。

『波動…』

これがこびーの言っていた波動…気功術だろう。

目に見えない攻撃。
これは厄介やな…



『っ、…くそっ』

拳や蹴りと違って、軌道の見えない波動を避けるのは難しい。
さっきから何回あの攻撃を食らっただろうか。
口の中に血の味がしてきた。

『はぁはぁ…』
「……」

こびーは黙って私を見つめる。
私の意図を組んで手を出して来ないのだろう。
それでも背中を守ってくれる意思なのか、こびーは少し離れて私の背後に立っていた。
まったく、良くできた副リーダーやで。

座り込んだクロコゲは壁に体を預けていて、すでに戦う力は残っていないだろう。
私がハドウを倒せば、私達の勝利だ。

「そろそろ終わりにしよか」

掌を私の方に向けて再び構えるハドウ。

何回かあの攻撃を受けて分かったことがある。
あの技は構えてから技を出すまでに溜めが必要で、少し時間がかかる。
つまり、あの波動は立つ続けに出すことは出来ない。

『くっ…』

波動を食らい、吹っ飛びそうになるのを何とか堪える。

反撃するならここだ…

波動をくらって痛む体を鞭打ってハドウに飛び掛かる。

放った蹴りが一瞬ハドウの腰を曲げさせる。
そのハドウの前で構えて拳を握りしめる。
顔を上げたハドウも拳を握りしめた。

「アントニオぉぉぉ!!!」
『うぁぁぁぁぁぁ!!』

雄叫びを上げて互いに拳を放つ。


「アントニオ!!」
「ハドウ!!」



「……うっ…」

足から力が抜けて崩れ落ちるハドウ。

『勝った……』
「アントニオ!!」
『うわっ』
「あ、ごめん…」

こびーに飛び付かれて受け止めきれずに、こびーを抱えたまま倒れこむ。
上半身だけ起こして、私の足の上に座った状態のこびーを睨みつけた。

『いて…ったく、こっちは散々波動食らった後やねんからな』
「せやからごめんて」
「あんなぁ、イチャつくなら帰って?」
『なっ!?だ、誰がイチャついてなんか!』

クロコゲに言われて気がついたが、確かに恥ずかしくなるような距離。
いつもより心臓が早く脈打つのは先程の戦いのせい。
きっとそうや…

「イチャついてるようにしか見えへんけど」
『はぁ!?…てかこびーどけや!重い!!』
「ヒドッ!重ないわ!!」

ぶつぶつ言いながら私の上から退くこびー。

「アントニオ」

ゆっくり立ち上がったハドウが、私の前に立つ。
それを見て私も立ち上がりハドウを見つめる。

「強くなったな」
『まぁな』
「…お前らは背中合わせて戦う時が一番強いな」
『え?』
「ウチらもそうやねんけど、背中合わせとると気持ちの入り方が違うねん
お前らもタイマンより、そっちの方が強い」
『……』
「アントニオ…今日からお前が…いや、お前らがここのてっぺんや
二人に託せて嬉しいで」

そう言ってハドウはクロコゲと共にニコッと笑った。


~~~~~
こびーside



私達がテッペンになってからもうすぐ1年が経とうとしている。
私とアントニオの進学先はヤンキー高校の看護科に決まり、あとは卒業を待つだけ。


「大変ですこびーさん!!!」
『なんやねん、騒々しいな…』

いつもの教室のソファーで雑誌を読んでいた私は、舎弟の慌てた声で雑誌から目線を上げた。

「アントニオさんがやられました!」
『………は?』

あのアントニオが?
ありえない。

頭が真っ白になった…

「………び…ん……さん………こびーさん!!」
『あ、ごめん』
「…いえ
アントニオさんは病院に運ばれました」
『病院?そんなひどいん?』
「ケガをされてて…とにかく行きましょう」

舎弟に案内されて学校からも近い病院へやって来た。
病室に入るとベットの上で横になってるアントニオがいて、足にはキブスが巻かれていた。

『アントニオ…』
「……来たんか
すまん、負けてもうた」
『ケガひどいん?』
「骨折や…幸い場所が良かったらしくて、そう長引きはせえへんて」
『そっか……』

痛々しい姿ではあったけど、アントニオの無事を確認して泣きそうになった。

「アンタら、席外してくれ」
「はい」

それを察したのか、舎弟に席を外に出すアントニオ。

「…なんつー顔しとんねん」
『だって…』
「泣きたいのはこっちやで…こんなやられて」
『誰にやられたん?』
「………ソルト」
『え?』

ソルト…その名前は知っている。
この辺では有名なヤンキーで、私達と歳は一緒。
この街でてっぺんを取るなら、通らなければならない相手。

『ソルトとやったん?何で一人で…』
「急な出来事やったし、それにアイツは一匹狼や
兵隊率いてカチコミなんて汚い真似出来ひん」
『とにかく、私がソルトの所行ってくる』
「それはアカン」
『何で!?ウチの頭やられたんに黙ってろって言うん?』
「…こびーには無理や
ソルトは強すぎる」
『アントニオが負けたんや、ソルトが強いことくらい分かる
だからって引き下がるん?』
「引き下がりはせん」
『だったら…』

私にやらせて欲しい。
そう説得しようとアントニオと視線を合わせると、アントニオの目に強い光が宿った。

「ソルトは私が倒す
今は無理でも、強くなって絶対倒したる」
『アントニオ…』
「せやからこびー
着いてきてくれ…そんで、これからも支えてくれ」
『っ…当たり前やろ!』

そう言って私が笑ってみせると、つられるようにアントニオも笑顔を見せた。
この笑顔を、アントニオを支えられる場所に居られるなら私はそれでいい。
この時は本気でそう思っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

高校3年生になって私達は激尾古の総長と副総長になった。
そして近隣高校と次々と戦をしていた頃、舎弟がある話を持ってきた。

「マジ女のラッパッパの新部長が決まったそうですよ」
「誰だよ?」
「ソルトってやつです」
「どんな奴だ?」
「めっちゃ強いらしいです!」
「……それだけか?」
「はい!」
「てめぇ何の為の偵察なんだよ!!どんな奴かもういっぺん偵察してこい!!」
「ひぃっ」

高校になって新たに舎弟になったツリシ、ザコボス、KYが言い争っている。

『いらへんわ』
「こびーさん?」
『ソルトがどんな奴かの偵察なんていらん…なぁ、アントニオ?』
「あぁ…もうよう知っとるわ」

ソルトがラッパッパの部長になったと聞いた時から、アントニオの目にはソルトしか映ってなかった。
そして私は、自分の価値が分からなくなった。

アントニオに私は必要やったかな?