こびーside
『…ん……』
体が揺れで目が覚めた。
温かさと嗅ぎなれた匂いで、そこが彩の背中だとすぐに分かった。
『彩?』
「気付いたんか…
今治療したるからもうちょっと我慢してや」
『…負けたんや』
「…あぁ」
彩はそれ以上何も言わずに、私をいつもの教室まで運んでくれた。
「あー、これは病院行かなアカンかな」
私の手を確認して顔をしかめる彩。
とりあえず処置するで、と言って薬箱を持ってくる。
彩のお母さんは看護師で、ケンカばかりする彩に消毒や包帯の入った薬箱を持たせてくれたらしい。
彩はそれをここに持ってきて置いておいた。
『いたっ!沁みるー!痛いー!』
「当たり前や消毒してんねから」
『うぅー』
涙目になりながら消毒に耐えて、包帯を巻いてもらった。
使ったガーゼや消毒液を片付けた彩は、私の頭をポンと撫でて悲しそうな目をする。
負けてもうたしな…
「悪かったな」
『え?』
「美優紀が無茶しとるんもっと早く気付くべきやった
もっと早く止めるべきやった」
『彩?』
「着いて来いなんて偉そうなこと言うたくせに、私は何も分かってなかった
覚悟も足りなかった…美優紀の方が、よっぽど覚悟があった」
『彩が悪いんちゃうよ…私が負けたから』
「ハドウに、強くなってまた来いって言われた
その時は…また着いて来てくれるか?」
不安に揺れる彩の目は私の手に視線を移した。
彩はきっと責任を感じてるんや。
ケガなんて無茶した私の自業自得だし、決して彩のせいではない。
『……なぁ』
「ん?」
『強かったな、あの2人』
「…せやな」
歳も体格もそんなに変わらない。
ただ違うのはこの荒れた学校で1年過ごした経験値。
ならば私達もああなれるのだろうか。
いや、私達はそれ以上に強くなれるはずや。
『渾名…私達もつけようや』
「へ?渾名?」
『そんで、その渾名がこの学校に知れ渡って恐れられるようになったら…
ハドウとクロコゲに2人でリベンジや!』
「美優紀……せやな!やったんで!」
『彩の渾名は…せやなぁ……アントニオ!』
「おいっ、どこ見て言うとんねん!」
『どこって…なぁ?(笑)』
「おいアゴ触んな!
ほなもうお前は…うーん……よし、お前はこびーや!」
『こびー?』
「お前、媚び売りまくっとるからな」
『私がいつ誰に媚び売ったんよ』
「そこら中や!校長にまで!」
『えー?覚えてへん
けどまぁ、響き可愛いからええよ』
「ええんかい(汗)」
呆れた顔で私を見る彩…いや、アントニオ。
さっきまでの悲しそうな目はもうそこになかった。
この人にもうあの目をさせないことが出来るなら、世間に煙たがられるような私でも価値があるような気がする。
『なぁ、アントニオ
お腹すいた』
「へ?じゃあ何か食うて帰ろか」
『アントニオ食べさせてな?』
「は?何でや?」
『手ケガしてるし』
「うっ…しゃーないな」
『わーい!ありがとっ!』
「ちょっ、くっつくなって(汗)」
私はこの人となら強くなれる。
もう負けないように。
あなたを支えられるように…
~~~~~
アントニオside
ハドウとクロコゲに負けてから1年半ちょっと。
私達はアントニオとこびーと名乗り、その名前は校内に知れ渡った。
私達は2年生になり、今はもう2月下旬。
もうすぐ3年生になる。
「アントニオさん、沖田が3年の高田達にやられました」
「今こびーさんが数人連れて高田達の所へ…私達も行きますか?」
『いや、こびーが行ったなら問題ない
沖田は?』
「はい、ケガはありますが大事はありません」
私達にも何人か舎弟という物が出来た。
私がリーダーでこびーが副リーダー。
私が描くリーダー像は、あの日やたらと背中が大きく見えたハドウ。
あの日アイツが言っていたてっぺんとしての務め。
私は舎弟達を、そしてこびーを守れているだろうか…
正直よく分からない。
でも…
「こびーさん戻ってきました!」
「うちの子可愛がってくれたお礼はキッチリしといたでアントニオ」
『ごくろうさん』
今も変わらず着いて来てくれるこびーが、その答えやと思うことにした。
「寒いなぁ」
ソファーに座ってギターを弄る私の横に座りながら、そう言って腕を擦るこびー。
ちなみに殺風景だった教室はこびーがリサイクルショップのおっちゃん釣ってタダ同然で貰ってきたソファーや、私が持ち込んだギターやアンプ、さらには舎弟達が持って来たたこ焼き器まであった。
「すぐ暖房の温度上げます」
「ありがとう
なぁ、アントニオ…寒いな」
『そら真冬やからな…だから今温度上げたやろが』
「そうやな真冬やな
けどもう春になるやんか?」
『せやなもう3月になるし…つーか、さっきから何言うてんねん?じゃぶじゃぶし過ぎて頭おかしくなったんか?』
「もうすぐ卒業やな」
こびーの言いたいことがやっと分かった。
私達がずっと追いかけてきたあの2人は、あと2週間で卒業や。
『最後にきっちりリベンジせなな』
「せやな
ほなじゃぶじゃぶの前に…腹ごしらえや!」
ソファーから立ち上がったこびーは、舎弟達の所へ行ってたこ焼きを食べ始めた。
『ったく…』
「アントニオさん、カチコミですか?」
『あぁ…どうしても借り返さなアカン相手が居るんや』
ギターを弄るてを止めてソファーから立ち上がると、一斉に仲間の視線がこちらに向いた。
『行くで』
舎弟も連れて図書室の前に立つ。
ここに来たのはあの日以来初めて。
『取り巻きはアンタらに任せるわ』
「「はい」」
『こびー、準備はええか?』
「いつでも準備はできてたで…あの日からずっと」
『…私もや』
図書室の扉を勢いよく開けるとハドウとクロコゲの舎弟達が行くてを阻む。
「アントニオとこびー!?」
「おい、ハドウさん達に伝えろ」
「はい」
『伝える必要はあらへん
直接挨拶に行くわ』
「そうはいかねえな」
「ハドウさんとクロコゲさんには会わせねえよ!」
「アントニオさん、こびーさん、ここはうちらが」
『ああ、頼むわ』
「しっかりな?舐められたらアカンで」
「「はい!」」
舎弟達の戦いをすり抜け奥に進む。
そこには、今やこの学校のテッペンになった奴らの姿があった。
「そろそろ来ると思ったで
つーか待ちくたびれたわ」
「渡辺…今はこびーやったな
ちょっと見いひん間にまた可愛くなったなぁ」
「クロコゲ、親戚のババアみたいやで」
「誰がババアや!」
『待たせたな…けど、テッペンの交代劇は卒業ギリギリにして花持たしたったんや』
「ははっ、1度やられた割りには大口叩くやん」
『もう前の私らとちゃう
てっぺん、取らせてもらうで!』
「来い!」
あの日と同じようにこびーと背中を合わせる。
あの日と違うのは、もう何度目か分からない程こびーと背中を合わせて戦ってきたこと。
言ってしまえば、あの日は腕に自信のあったこびーと組んでハドウ達に挑んだだけ。
あれからこびーと幾度もの戦いを潜り抜けてきた私達は、今ならあの日持ってなかったモノを手に入れた。
安心して背中を預けられる相手。
自分が傷ついてでも背中を守ろうと思える相手。
1匹狼じゃ分からないままだった"仲間"というモノ。
『ほな…』
「『てっぺんとったんで!!』」
『…ん……』
体が揺れで目が覚めた。
温かさと嗅ぎなれた匂いで、そこが彩の背中だとすぐに分かった。
『彩?』
「気付いたんか…
今治療したるからもうちょっと我慢してや」
『…負けたんや』
「…あぁ」
彩はそれ以上何も言わずに、私をいつもの教室まで運んでくれた。
「あー、これは病院行かなアカンかな」
私の手を確認して顔をしかめる彩。
とりあえず処置するで、と言って薬箱を持ってくる。
彩のお母さんは看護師で、ケンカばかりする彩に消毒や包帯の入った薬箱を持たせてくれたらしい。
彩はそれをここに持ってきて置いておいた。
『いたっ!沁みるー!痛いー!』
「当たり前や消毒してんねから」
『うぅー』
涙目になりながら消毒に耐えて、包帯を巻いてもらった。
使ったガーゼや消毒液を片付けた彩は、私の頭をポンと撫でて悲しそうな目をする。
負けてもうたしな…
「悪かったな」
『え?』
「美優紀が無茶しとるんもっと早く気付くべきやった
もっと早く止めるべきやった」
『彩?』
「着いて来いなんて偉そうなこと言うたくせに、私は何も分かってなかった
覚悟も足りなかった…美優紀の方が、よっぽど覚悟があった」
『彩が悪いんちゃうよ…私が負けたから』
「ハドウに、強くなってまた来いって言われた
その時は…また着いて来てくれるか?」
不安に揺れる彩の目は私の手に視線を移した。
彩はきっと責任を感じてるんや。
ケガなんて無茶した私の自業自得だし、決して彩のせいではない。
『……なぁ』
「ん?」
『強かったな、あの2人』
「…せやな」
歳も体格もそんなに変わらない。
ただ違うのはこの荒れた学校で1年過ごした経験値。
ならば私達もああなれるのだろうか。
いや、私達はそれ以上に強くなれるはずや。
『渾名…私達もつけようや』
「へ?渾名?」
『そんで、その渾名がこの学校に知れ渡って恐れられるようになったら…
ハドウとクロコゲに2人でリベンジや!』
「美優紀……せやな!やったんで!」
『彩の渾名は…せやなぁ……アントニオ!』
「おいっ、どこ見て言うとんねん!」
『どこって…なぁ?(笑)』
「おいアゴ触んな!
ほなもうお前は…うーん……よし、お前はこびーや!」
『こびー?』
「お前、媚び売りまくっとるからな」
『私がいつ誰に媚び売ったんよ』
「そこら中や!校長にまで!」
『えー?覚えてへん
けどまぁ、響き可愛いからええよ』
「ええんかい(汗)」
呆れた顔で私を見る彩…いや、アントニオ。
さっきまでの悲しそうな目はもうそこになかった。
この人にもうあの目をさせないことが出来るなら、世間に煙たがられるような私でも価値があるような気がする。
『なぁ、アントニオ
お腹すいた』
「へ?じゃあ何か食うて帰ろか」
『アントニオ食べさせてな?』
「は?何でや?」
『手ケガしてるし』
「うっ…しゃーないな」
『わーい!ありがとっ!』
「ちょっ、くっつくなって(汗)」
私はこの人となら強くなれる。
もう負けないように。
あなたを支えられるように…
~~~~~
アントニオside
ハドウとクロコゲに負けてから1年半ちょっと。
私達はアントニオとこびーと名乗り、その名前は校内に知れ渡った。
私達は2年生になり、今はもう2月下旬。
もうすぐ3年生になる。
「アントニオさん、沖田が3年の高田達にやられました」
「今こびーさんが数人連れて高田達の所へ…私達も行きますか?」
『いや、こびーが行ったなら問題ない
沖田は?』
「はい、ケガはありますが大事はありません」
私達にも何人か舎弟という物が出来た。
私がリーダーでこびーが副リーダー。
私が描くリーダー像は、あの日やたらと背中が大きく見えたハドウ。
あの日アイツが言っていたてっぺんとしての務め。
私は舎弟達を、そしてこびーを守れているだろうか…
正直よく分からない。
でも…
「こびーさん戻ってきました!」
「うちの子可愛がってくれたお礼はキッチリしといたでアントニオ」
『ごくろうさん』
今も変わらず着いて来てくれるこびーが、その答えやと思うことにした。
「寒いなぁ」
ソファーに座ってギターを弄る私の横に座りながら、そう言って腕を擦るこびー。
ちなみに殺風景だった教室はこびーがリサイクルショップのおっちゃん釣ってタダ同然で貰ってきたソファーや、私が持ち込んだギターやアンプ、さらには舎弟達が持って来たたこ焼き器まであった。
「すぐ暖房の温度上げます」
「ありがとう
なぁ、アントニオ…寒いな」
『そら真冬やからな…だから今温度上げたやろが』
「そうやな真冬やな
けどもう春になるやんか?」
『せやなもう3月になるし…つーか、さっきから何言うてんねん?じゃぶじゃぶし過ぎて頭おかしくなったんか?』
「もうすぐ卒業やな」
こびーの言いたいことがやっと分かった。
私達がずっと追いかけてきたあの2人は、あと2週間で卒業や。
『最後にきっちりリベンジせなな』
「せやな
ほなじゃぶじゃぶの前に…腹ごしらえや!」
ソファーから立ち上がったこびーは、舎弟達の所へ行ってたこ焼きを食べ始めた。
『ったく…』
「アントニオさん、カチコミですか?」
『あぁ…どうしても借り返さなアカン相手が居るんや』
ギターを弄るてを止めてソファーから立ち上がると、一斉に仲間の視線がこちらに向いた。
『行くで』
舎弟も連れて図書室の前に立つ。
ここに来たのはあの日以来初めて。
『取り巻きはアンタらに任せるわ』
「「はい」」
『こびー、準備はええか?』
「いつでも準備はできてたで…あの日からずっと」
『…私もや』
図書室の扉を勢いよく開けるとハドウとクロコゲの舎弟達が行くてを阻む。
「アントニオとこびー!?」
「おい、ハドウさん達に伝えろ」
「はい」
『伝える必要はあらへん
直接挨拶に行くわ』
「そうはいかねえな」
「ハドウさんとクロコゲさんには会わせねえよ!」
「アントニオさん、こびーさん、ここはうちらが」
『ああ、頼むわ』
「しっかりな?舐められたらアカンで」
「「はい!」」
舎弟達の戦いをすり抜け奥に進む。
そこには、今やこの学校のテッペンになった奴らの姿があった。
「そろそろ来ると思ったで
つーか待ちくたびれたわ」
「渡辺…今はこびーやったな
ちょっと見いひん間にまた可愛くなったなぁ」
「クロコゲ、親戚のババアみたいやで」
「誰がババアや!」
『待たせたな…けど、テッペンの交代劇は卒業ギリギリにして花持たしたったんや』
「ははっ、1度やられた割りには大口叩くやん」
『もう前の私らとちゃう
てっぺん、取らせてもらうで!』
「来い!」
あの日と同じようにこびーと背中を合わせる。
あの日と違うのは、もう何度目か分からない程こびーと背中を合わせて戦ってきたこと。
言ってしまえば、あの日は腕に自信のあったこびーと組んでハドウ達に挑んだだけ。
あれからこびーと幾度もの戦いを潜り抜けてきた私達は、今ならあの日持ってなかったモノを手に入れた。
安心して背中を預けられる相手。
自分が傷ついてでも背中を守ろうと思える相手。
1匹狼じゃ分からないままだった"仲間"というモノ。
『ほな…』
「『てっぺんとったんで!!』」