行為に耽り(ふけり)、互いの熱の中に愛を見つけて。火照る身体を静めようと寄り添い合いながら眠りを呼び寄せる。
うっすらと汗ばんだ体側の輪郭を追うように、指を這わせてみては掌で弄る(まさぐる)。そんな悪戯。
ふと、呟いてみた。
「ずっと、こうしてお前と一緒に居たい」
本音。
だが、その一言が今の俺とお前との関係には余計だったのだ。
《愚者、放浪の暇にて》
沈黙が降りた。
ああ、そうだった。彼は「未来」にまつわる話をするのを極端に嫌がっていた。
『私はもう、一年保たないでしょうネェ』
言い放たれたのはいつの事だったろう。事もなげに呑気に飴を口へ運びながら。
何だそれは。
俺はそんなの知らない。
あの時、お前と共に居ない未来の不確かな自分を見てしまったようで、不安と言い知れない恐怖に駆られた。
射抜くような視線を必死に彼へと向けたが、結果的に、彼は此方へと目を合わせてはくれなかった。
その日の夜。
俺は自室から出なかった。
部屋の前まで彼特有の足音を何度か聞いたが、それは部屋の戸を叩く事は無く、踵を返して行ってしまった。
けれど、こう何度も来るのは彼なりの優しさなんだと、寝台のシーツにくるまりながら実感した。ドア一枚の隔たりを経ながらも、どこか心配し、決して此方には伝わらない(と、彼は思っているのだろう)気遣い。
そんな思いやりが逆に辛くて、些細な言葉で傷付けるくらいならいっそ、突き放してくれれば良いのにと。
近くに感じる彼の雰囲気に包まれながら、声を押し殺して泣いた。
知り得ない未来を無き物にしてしまう彼をひたすらに責め続けて。されど責めても、どうにもならないのに。
それ程までに傷は。
深かった。
自分が呟いた一言が、彼にとってどういう意を差すものか良く分かっていた。
揺るぎなく運命を、行く先を、見定めていた彼の中での未来に、己の過信を押し付けてしまった。
「…ごめ、…わざとじゃ…」
決まり悪く、まずは謝った。
これに対しての返事は要らなかった。出来れば聞き流して、無かったように。なのに。
「言ったでショ。私に未来なんてものは望めないと」
だから、諦めなさい。
まるで、戒めるように。
それが俺に向けてなのか、あるいは彼自身なのか、定かではないが。
最も残酷な言葉の羅列を。
愛しい人が、目の前で。
それは、この先、二人の終末。
言わせたく、無かった。
「…死なないで」
自分でも分かるくらい声がふるえだして。
「決めつけないで。まだ…分からない」
ワガママを紡ぐ唇に。
「ぶれ、いく……」
流れ落ちた雫が、吸い込まれて。
「俺と……生きよう?」
それ以外に、何も求めないから。例え、この関係が色を失おうと、お前が側に居てくれれば。それだけで。
「ギルバート君」
困った顔に、子供を宥めるような声。明らかに俺の願いは迷惑になっている。
「…ごめんなサイ」
確信した。
終わりの時は、すぐそこにあるのだと。
言葉の破片は、更に傷を抉る。
