りくの高校時代

私は、忘れかけながら
それでもときどき思い出していたことがあった。

だから

りくが大学に合格したあとに
出身校が発刊した
『進学実績報告・合格体験記』

そこに記されたりくとその友人たちの奮闘を読んだとき、合格の知らせを受けたときと同じくらいか、もしかするとそれ以上に

安心し感動したのである。


その3年前


高校受験直前講座の説明会だったとおもうのだけれど、その会場で

ある映像が紹介された。

映像を公開する直前に、進行を担当していた男性が

「お母さんたちから見ると、ちょっと調子にのっちゃってるかなって思うところもあるかもしれませんけれど、合格直後の若者だと思って見守ってください」という主旨のことを笑顔で明るく言った。

知らない人はいないであろう大学の
合格者1名によるTalk映像  

この年のその大学の合格者は 
こんな田舎では彼一人だったのだろう。


なにも、珍しいことではない。

その大学の現役合格者は
毎年0〜1名


芸能人のように
一人で繰り広げる合格体験talk

長男とりくの高校の先輩である


端的に言えば

自らの卒業校を揶揄し先生方を小馬鹿にした態度で、面白おかしく熱弁した。

田舎に支部を置く唯一の大手進学予備校では、

この説明会に限らず
機会あるごとに 

「高校の先生方は塾なんて行かなくてもいいようなことを言いますけど、それは違います」という話をする。

わからないわけではない。

なぜなら

この高校から
日本でトップの高偏差値
難関大学に現役合格する生徒は
数年に一人

そして
その全員が
通塾生であるのだから。




でもねぇ…と
私は思ったのである。



「お母さんたちから見ると、ちょっと調子にのっちゃってるかなって思うところもあるかもしれませんけれど、合格直後の若者だと思って見守ってください」

この映像は誰がなんのために
撮影したのだろうとか


この子は、この映像が 
どこで誰のために
いつまで放映されるのか
把握しているのだろうかとか。


ひとりの母親として
そういうことを考えながら
わりと複雑で
結構やりきれない思いをかかえて
会場を後にしたのである。