好意を抱く異性を

なにかのきっかけで突然

嫌いになる。



そんな現象を


グリム童話にちなんで

「蛙化現象」というのだと


みえさんが言った。




みえさんにも、若い頃に

何度かの蛙化現象がおきたという。




学生時代、太っていたみえさんは


「若い頃なんて、みんな外見でしか見ないから」

「太っているというだけで、恋愛弱者」


だったと話した。



とったとかとられたとか。 

オチたとか、オトシタとか言って


泣いたりわめいたり、喧嘩したり

財布でもあるまいし。


そんな大事?

彼氏ってなに?


そういうふうにも思ったという。



コンパに行ったって

なに話しても

『ウケ狙ってるの?』

っていわれて。


とも言っていたけれども


「何を話してもウケ狙い」


そう言われるのは


太っていたせいではないのだろうと、私は思った。




そんなみえさんも、就職をした頃からは、身内や友人からの紹介やらなにやらがあって


ある男性と交際をはじめた。


しかし、あるとき

気がついたのだそうだ。


わたし、この人と結婚したら

名字が細〇


わたし、こんなに太っているのに

細〇はないな


そう思って


別れたのだそうだ。



そのあと、苗字に「細」がつかない男性と交際をはじめた。


彼は太ってはいなかったが

ガッチリしていた。


ある日のショッピングデートで彼が


普段は穿かない細身のパンツを見て


「オレ、足短いから

こういうの、似合わないんだよね」と言った。


私、その頃は若かったから

気の利いたことを言えなくて


そんなこと

ないんじゃない?


って言っちゃったのよ。


「いま穿いてるもののほうが

似合うね」とか言えば

よかったんだろうと

今は思うけど。





そしたら、次のデートの時

穿いてきちゃって。


ほんっとに似合っていなくて

それ以来、会えなくなっちゃったの。


友人たちには「ひどい」って言われたけど、どうしても気持ちがついていけなくなってしまって。



みえさん25歳


そのあと一発奮起して

ダイエットを試みて

「普通の体重」になったのだそうだ。




それから数年がたち

30 歳を目前にしたみえさんに



実兄さんが言った。


「Aがさ、同僚の京大卒の独身男を誰かに紹介したいらしくて」

「おまえの友人で誰かいない?」



まずは、その話聞いてみるね。


若きみえさんは、そう答え


自分が紹介してもらう気に満ちて

実兄さんの親しい友人だった

Aさんに会った。



すると


Aさんは、みえさんのことを大変気に入ってしまい


みえさんには

京大男性を紹介できないと言った。


Aさんは

背が高くて手足の長い小顔の

みえさんの現旦那さまである。


みえさんは思うのだそうだ。


現旦那さまの遺伝子を十二分に引き継いだ娘さんたちと共に


家族で街を歩く時


私だけ太っているから

自分だけ食べているみたいで

恥ずかしいんだよね。



あのとき、旦那に気に入られなければ、

私のホントの旦那は、京大旦那だったんじゃないかと思うんだ。




みえさんが、普通の体重だったのは


現旦那さまと結婚し、出産するまでの前後5〜6年間


百分率でいうなら、おおよそ10%

割合でいうなら、約1割の


期間限定だったのだそうだ。


まぁ、結婚はタイミングよね。



そういうみえさんに、いまのところ

現旦那様への蛙化現象は起きていないのだと思う。


そして


20代で、2児を抱えて

バツイチになった私のことを 


「気づくの遅くない?」

「もうちょっと早く気付けばよかったのに」


と言ったけれども



早く気づいてしまっていたら


長男もりくも

この世に存在しなくなる。



気づき

タイミング




人生とは

一瞬の積み重ねなのだろうと

思いながら、私は気づいた。


人生で初めての彼氏と4年付き合い

次の彼氏と出会い、別れ


元の旦那と出会い

結婚して4年で別れた。




現彼氏とは 


付き合ってからそろそろ4年

出会ってから35年  


「いまが、一番かわいいよ。」


アラフィフの私にそういう彼は

誠実なのか 嘘つきなのか


若き日の眼差しなのか

老眼なのか



それとも彼の思い出の中で

もしかしたら





私の姿は

若い頃から

おばさんだったのだろうか