何度か足を運んだあとに
「閉店」と書かれた紙が貼られていた。
それは今後、「開店」することはないということを示すのだろうと、私は、理解したつもりだった。
「焼き鳥屋にも
行かなくちゃ!」
と元日に長男が言ったとき
「閉店したんだよ。」と、たぶん私は、言っていない。
長男は、翌日1月2日に、ここを発つ予定だったから、「今回は、行けないけど。」
そんな空気のままにしているのだと思う。
「おっちゃん」は、今どこにいるのか。
地元飲食店つながりの人たちは、なにか知っているのではないかと期待し
私は、行きつけのカフェレストランに向かった。
当たり障りのない挨拶を交わし
変わりない近況を報告し合ったあとに
「☆☆焼き鳥って、閉店のままになってるよね?」と話題にしたら
店主が
「結構前だよ?」
いまさらなに??
そんな雰囲気で言ったので
「あのおじさん、どうしているんだろ?」と続けたら
さらりと
「死んだよ。」と言った。
え?
言葉もなく、驚く私に
「知らなかった?
あれ?どこまで知ってる?
救急車が来て、騒ぎにはなったけど。っていうかさぁ…」
その驚き方は、焼き鳥が好きだから
ってことだけじゃないよね?
地元の焼き鳥屋の
おっちゃんの死
なんで、そんなにショックなの?
そんな気持ちを、まったく隠さず
店主は、私に
「まこちゃん、まさか
知り合いだったの?
あの、おっちゃんと。」と訊ね
「長男が、高校生のときにね」
受験勉強真っ只中であるはずの
高校3年生の夏
化石的昭和風
見た目はヤクザ中身は恩師の
難関門を無事潜り
学校祭で地元焼き鳥に挑戦したこと
アポなしで、おっちゃんの店を突撃したら「娘が卒業生なんだ。」と快く、受け入れてくれたこと
店の厨房に入れてくれて
日曜日に 1日中 作業をしながら
初歩から教えてくれたこと
御用達の〇〇ミートに話を通し、冷凍保存庫の一部を、何日間も貸りられるようにしてくれたこと
学校祭の当日に
秘伝のタレを持って
高校前に立っていたこと
炭熾しを、一緒にしてくれたこと
そんな話を、聞いてくれた。