圭太しかいないから。
圭太くんのお母さんが、そう言った。
一人っ子親の一人っ子
というのだそうだ。
圭太くんは一人っ子で、圭太くんのご両親も、それぞれ一人っ子
そのまたご両親である、圭太くんの祖父母4名は
少なくても
私達がときどきお喋りをしていた
圭太くん18歳の頃までは、ご健在だった。
圭太くんのお母さんは
相続税対策に詳しくて
年間110万円 教育費贈与
いろいろ教えてくれたけれども
「多すぎるから、分けてあげる」と
言われたわけではないためなのか
よく覚えていない。
彼らが
高校生になってまもなく
長男が、
「圭太のお年玉は、100万円で
合格祝いにも、100万円もらったんだって！！😄😃」と言った。
自分がもらったわけでもないのに
嬉しそうにみえるのは
お前の金は俺の金 ということでも
お前の幸せは俺の幸せ ということでもなく
驚きと興奮の表情が笑顔😆😄😃
というだけのことである。
いつもどおりの大きな声で
スクープ報告をする長男に、私は言った。
「圭太くんはね、おにぃちゃんだけに
話したんだよ。」
「仲良しのお友達だからね。」
「だから、その話を外で他の人にするのは、絶対にだめ。」
「聞いた人の中から
『あいつ、カネ持ってるんだ！』って
圭太くんから盗ろうとする人が現れたら、大変なことになるからね。」
お母さんは、心配症
犯罪報道 恐喝 強盗 特殊詐欺
脚本のあるドラマではない。
「悪い人」は、実在の人物
「こいつは悪役」
顔をみて、そう思うのは
岸部一徳 香川照之
〇〇しちゃダメ
それはダメ出し
子どもに善悪を教えるときの
言葉のチョイスは難しい。
失敗は星の数ほどあったと思うが、
覚えていないことよりも、
気づいていないことのほうが断然多い。
自覚とは、氷山の一角が見えたということ。
信じる心と自衛の心
自己主張力と傾聴力
それらは同時に育まれながら
人間性を形成しつつ
自尊と他尊は相互尊重
依存から
自立にむかったその先に
あるのは きっと相互依存
「祖父母の気持ちは、圭太には
ちゃんと伝えるようにしているけれど。」
「全部私が管理しているに
決まってるでしょ！そんな大金🤣🤣」
一人っ子親の一人っ子
優等生の圭太くん
生まれながらに
才に恵まれ 人に恵まれ
見えるものも、見えないものも
たくさん背負い
見える努力と見えない努力を重ねつつ
自分でも気づかなかった
そんな努力も、きっとある。
破天荒な
母子家庭の長男
幼い頃から背負っている
そういうものの重さには
本人さえも気づかない。
「圭太くんは、大丈夫」
私が、そう思ったのは
圭太くんが、ずっと
帰省をしていないと聞いたからである。
お母さんへの就活経過報告は
電話かラインか、zoomプレゼン？
駅前マイホーム発 浪人駅停車なし
公務員行 特急列車は
引き返したりは、 していない。
大阪発関空快速
8両編成
前4両 関西空港
後ろ4両 和歌山行き
今の私は、何両目？
このままどこへ、向かうのか？
切り離されても、すすんでいけば
その先に 海の幸と山の幸
美味しいジュースと
素敵な時間がきっとある。
圭太は、なんだかんだと、どうにかなる奴でもあるから。
なんの仕事かは、まだ聞いとらんけど。
また、会えたときにゆっくり聞くわ。
コロナが落ち着いてるとええなぁ。
俺等はまだ
みんな、これからやからなぁ。
みんなの未来は
これからで
みんなの過去は
これまでではない。
あれは3年前
長男 大学2年生
新型コロナウィルス感染症
世界的襲来による
大学生の経済苦境
バイトでめっちゃ稼いでいたし
そういう生活しとったから。
父方祖父に助けを求め、
送られてきた現金書留20万円
とても驚き恐縮したが
「誰にも言うな。」と言われている。
父さんにも、母さんにも。
と、長男は言った。
コロナ前の
高収入のバイトとは？
みんな親にとめられて、
結局俺しかいないから
たった一人で デビュー戦
世界に発信していたらしい
長男のtwitter
いいの？
辞めさせなくて。大丈夫なの？
圭太くんのお母さんが、そう言った。
自立に向かう道の途中の 大学生のアルバイト
親たちは、みな心配症
こぞって止めることもある。
高待遇 高収入
未経験者・学生歓迎
昇給 独立支援あり
キャバクラ黒服
ホールスタッフ
みんな親にとめられたから、
たった一人で デビュー戦
コロナ前まで、キャバクラボーイ
結局俺しかいないから
どこに転職したって、
親は気づかんて？？
言われてみれば
たしかに、そうやな。
だけど、そういうもんかね？
私が、本当は知っていたこと。
長男は気づいているのか、いないのか。
信じるものへの気づかぬふりは
探り合いでも嘘でもないし
無関係でも無関心でもない。