圭太くんのお母さんは、自身の子である圭太くんのことを、「メンタルが弱い」と言い
その理由を
「周りのトラブルを
自分のせいだと考えて
落ち込むようなところがあるから。」
と話した。
長男は、友人である圭太くんのことを、「メンタルが強い」と言い
その理由を
「あの母親と高校卒業まで
18年間も一緒にいて
ただの一度も
メンタルの不調を訴えることなく
病気ひとつすることはなかったから。」
と話した。
メンタルとはなにか?
私と圭太くんのお母さんは、
一緒に学校行事に参加したり、たまにはプライベートでお茶したり、極稀にお酒を飲みにいくような間柄だった。
優等生の子を持つ「先走る専業の母親」と、破天荒な子をもつ「先を走れないシングルの母親」の
一面からの正反対さという、互いの領域を侵さないクッションは、案外心地の良いものだったと思う。
そういえば、長男の修学旅行の朝
圭太くんのお母さんは、わざわざ遠回りをして、我が家前まで、車で長男を迎えに来てくれた。
「旅行荷物があるし、集合時間が早いから。」「まこさんは、仕事があるから送れないでしょ?」との心遣い。
圭太くんのことだけではなく、長男のことまでも、気にかけてくれたのだ。
そんな形で
私と圭太くんのお母さん、圭太くんと長男というそれぞれの付き合いのなかで
圭太くんの家の食卓に長男がいたり、我が家の食卓に圭太くんがいたこともあった。
それでも、私が圭太くん自身と接した時間は、ほんのわずか。
圭太君が活躍しているところを、見たり聞いたりした話と
破天荒な長男とも楽しく過ごすことができて、先走る母親とも折り合いがつけられる。
私の中の圭太くんは、そんな
イメージであった。
多くの親子関係がそうであるように
お母さんしか知らない圭太くんもいるし、お母さんの知らない圭太くんも、いるのだろうと思う。
圭太君を、心の病気にしないために
目指すところは公務員
ただし、警察官と学校教員を除く
「公務員」から、警察官と学校教員を差し引いても、その種はあまりに広すぎるとは思うが、
「公務を職とすること」に、いろいろな安定(心身・経済?)を期待するのは、圭太くんの母親、独自の見方ではなさそうに思う。
個人的には、公務員であろうとなかろうと
対人 相談 苦情対応
そんな役割を担わない職は存在するのか?
という、疑問はあるが。
圭太くんから話をきいた長男によれば、圭太くんには圭太くんの考えがあったようで、
公務員試験は不合格だったけれども、彼には他にも「やりたい仕事」があって、それが、ゲームのソフト開発だった。
お母さんは、これまで通りに
圭太くんの母親として
圭太くんの言う「ゲームのソフト開発の会社」が、どういうものかを調べるという、圭太くんのお母さんらしい行動をとったが、
「お母さんが安心できる情報」が収集できずに、知恵の袋を求めたのかもしれない。