圭太くんの「困りごと」は「内定をもらっていないこと。」ではないのではないか。
私が、そう思ったのは
長男がこう言ったからである。
やりたい仕事があったけど
応募しなかったみたい。
ちょっと、思い当たる節
珍しく真顔
いゃ、浮かない顔の長男は
圭太くんから、どんな話を
聞いたのだろう。
圭太くんが魅力を感じた会社は
ゲームのソフト開発の会社のようだった。
数年前に、圭太くんの先輩の親しい人が起業したとのことで、その先輩もそこで一緒に働いていた。
そのつてだったのか、圭太くんは、その会社で補助的なバイト業務をさせてもらっていたらしい。
関心がある仕事に、高い意欲をもって励んでいた大学生の圭太くんに、先輩が「4月からの正社員を公募するから是非。」と勧めてくれて、ほかの社員さんたちも応援してくれていたのだという。
それなのに、
どうして応募しなかったの?
と、私は長男に聞いた。
それを聞かなければ
この話の真髄は見えないし
長男が私に話したかったことは
そこに関連するもの
なのではないかと思ったからである。
浮かない顔のまま、長男は言った。
圭太の…かあさんがさ。
ちらりと私の表情を見たのは
私と圭太くんのお母さんは
そこそこ仲の良い、ママ友だからなのだと思う。
圭太くんのお母さん?
圭太くんのお母さんは
「圭太は、公務員になるの。」
と、圭太くんが高校生の頃には、すでに言っていた。
それが、だれの希望なのかは
たしかにわからなかったけれども
「公務員になりたい。」
小、中学生でもなんらかの理由で、そう話す子どもはいると聞くから、それ自体はそれほど、インパクトの強いものではなかった。
だけれども、圭太くんのお母さんは、
「圭太は、公務員になるの。」
そう言った後に、こう続けた。
「公務員とはいっても、警察官や学校教員は除外。」
圭太くんは、スポーツや勉強ができるだけでなく
中学生の頃には、長期休みを利用して、ひとりで短期海外留学をするなど、いろんな経験をしていて
そして、とても器用だった。
絵を書くのも、物を作るのも、そしてゲームも上手。
天分にも環境にも恵まれた圭太くんが、これからどんな大人になるのか、私はとても楽しみだった。
そんな圭太くんの将来
「公務員とはいっても、警察官や学校教員は除外。」
その理由は??
「圭太は、
メンタルが弱いから」
「ストレスの
高い仕事にはむかない。」
圭太くんのメンタルが弱い??
圭太くんの実母がそう言ったことが、私にとっては、意外だった。
賢くて、身体能力が高くて
なんでもできて、しっかりしている。
我が家の長男の破天荒(天真爛漫?)ぶりを嫌な顔せずに受け入れ、友人として、快くフォローをする。
中学3年生のときには、高校受験の下見にいくつもりなく、自宅でゴロゴロしていた長男に、声をかけてひき連れて行ったり
高校生になったら、忘れ物をしたため、家に走って戻るという長男のために、重たい学校用リュックを預かったまま、駅で待っていてくれたこともあったし
学校祭のcafeで、私と圭太くんのお母さんのところにコーヒーを運んできた長男が身につけていた、とてもよく似合うブルーのエプロンが、実は圭太くんのものだったり。
「長男はさ、お父さんがいたら
あんな風には育ってないよね🤣」
お父さんがいたら?
圭太くんのお母さんのそんなセリフにも、私は、不快さを感じたことはない。
これは、褒め言葉🤣
なぜなら、
圭太くんのお母さんは、そういう人だからである。
これは彼女の、嫌味のない本音
サバサバ系、見方によってはズケズケ😆系のお母さんを中心とした、圭太くん一家は
ものすごく細やかに、長男だけではなく我が家のフォローを、なにかとしてくれていたからなのだと思う。