りく 高校1年生 夏🌊



大手大学受験予備校からの

誘惑メール


あなただけではないけど特別

招待 手ぶらでいいけど

やる気を連れてお気軽に



高校生向け


夏期特別招待講習





映像授業のメリットなのか…


夏季休暇中の都合のよい数日間、朝から夜までの都合よい時間に行くと、自分が選んだいくつかの講座を体験できるのだという。




大学受験予備校 地元校の

その場所は


高校から駅まで歩く 道の途中


一分たりとも 一歩たりとも無駄がない

ミラクル便利なところに位置していた。



無料なんだぁ。

それなら、部活の帰りにでも寄ってこようかなぁ。




部活の帰りにひょっこり立ち寄る

夏休みの数日間



わかりやすい映像授業を堪能したうえ


休暇中にも関わらず、塾生である学校の友人たちと顔を合わせることもでき、それはとても、充実した時間だったと思われた。


生活の一部に、「塾に寄ること」が加わることで、「塾生たちの生活」も体験できたし、通塾することは、今後の自己学習時間を確保し、学習スキルを高めることにもつながるのかもしれない。


そう思いながら




体験期間が終わったりくに、聞いてみた。


塾生になるのか、それとも

ならないのか。



塾生には、ならないよ。

ウ~ン、夏休みだから行ったけど…


学校と部活の後は、そのまま家に帰りたいし😏


俺が、今回無料で受けたのって、だいたい4万円分の講座だったらしいけど、そう聞くとさぁ…


そこまでの成果は、

俺にはないかなぁって。




⏳⏱  




りく 高校2年生 夏🎐



2回目の

夏期特別招待講習のご案内が届いた



無料なんだぁ。

それなら、部活の帰りにでも寄ってこようかなぁ。


既視感あるやりとりのあと、また数日間、部活の後に立ち寄って映像授業を受け終わる頃だったのか



りくが、意外なことを私に言った。


今回

最後のめんだんは、母さんも一緒なんだって。


めんだん とは

面談?


塾の先生との、三者面談があるらしいことが、わかった。


数日間の無料体験には、三者面談という名の、進路指導までもが含まれていたのか。


大手は やり手





三者面談 当日


小綺麗な部屋のカウンターの向こう側から、小泉進次郎風の男性スタッフ(塾講師?)が、とても爽やかな笑顔で迎えてくれて、


面談はこちらで。


部屋の一角にあるテーブルセットに案内してくれた。



そのあとに 


中尾彬風 やや強面の貫禄ある男性が現れて、支部長だったか?を名乗り、私達の向かい側に座った。



りくは、映像授業を受けただけではなく、なんらかの模擬試験的なものも受験していたようで、まずは、その結果について説明があった。


そして、


いまの志望校よりも、もう少し上を狙って…



と、大学ランク表を示しながら、ある大学をすすめてくれた。



りくの志望は工学部…

そのなかでも、関心高い学科の提案


それは、とても有益な情報だったので


中尾支部長の示すあたりの、さらに少し上に位置づいていた、ある工業大学について聞いてみたところ


「そこは、群がちがいます」


と言った。



随分おこがましいですね。おかあさん。

なにか、勘違いされていますよ。


上位層の偏差値の僅差って、どういうものか、考えたことありますか?



と、言いたかったのかもしれないが

さすが、大手予備校支部長である。



しっかりと言葉を選びながら



「その大学は別格。手が届きませんよ。」

ということを、無知な母親にも伝わるように、うまく説明した。



私の隣にいたりくは、兄と違い不穏で無礼なオーラを全く出さずに


はい、はい😊🙂 

ほどよくうなずきながら、中尾支部長の話を聞いていた。






中尾支部長は


無料体験で視聴できる講座は ごく一部なので、ぜひ今後も継続して…


と、重み深く語りながら、りくに通塾継続を促し、希望する講座を打診した。




するとりくは、



「今は😊とくに。

とりたい講座はありません。と答えた。







今でしょ!


突っこみを待つ私の期待は、みごとに裏切られた。


ここには、そんな程度のセンスを持つ人も、いないのか…。


いゃ、もしかすると


あえて、彼らは口をつぐむことで、

私の教育ママとしてのスキル試し

に委ねようとしているのかもしれない。




なんでも自分に都合よく考えながら、すぐに人に流される私は、




一講座だけでも、続けたほうがいいのかなぁ。自習室も使えるし。



まんまと罠にハマって考えながら、りくに




体験講座で、受けたのはどれなの?

と聞いてみた。


すると、


これと、あれと、それ

と 答え


今後は、受講を継続する意思がないことをしっかりと私に伝えた。





そんな私達を見て、中尾支部長は




無料体験というのは、あくまでも、このシステムを体験してもらうのが目的であって、


無料の分だけを受けても、学習効果は実感できないものなんです。



うちのように、塾生がたくさんいる支部では、



とても、大変なんですよ。無料体験のための席を用意するのは。


ですから



本当は、

「無理にやらなくてもいい」

と言われているんです。


と言った。



本当は?  

無理に?  

やらなくてもいいと?

言われている???


それは?  だれに?  なにを?



私は、

「それは誰から?」とは聞かなかったし、


私のところに来た

「あの案内メールの発信元はどこなんですか?」とも、聞かなかった。




たぶん中尾支部長は



おまえら、なんか勘違いしてねぇ?


買う気もねぇのに、試食品2回も食いにくるんじゃねぇよ。


買う気がないなら

来るな




と、言いたかっただけなのだろうと思ったし 



もしかしたらりくは、


前年の2者面談(と、りく自身が自覚していたかどうかは別として)のときにも、


同じような説明を受け、同じように答えていたのかもしれないと、思ったからでもある。



りく自身は、

今 試される君の本気の断り

と感じていたわけでもなさそうで



始終、一人だけ

穏やかな空気に包まれていた。



そんなりくは 


面談を切り上げ、外に出てから

少しだけ焦った様子で


意外と、時間かかっちゃったなぁ。



午後から部活があるのに‥。

早く帰って



昼飯食べなくちゃ。


と言った。



物理も数学も

りくの足元にも及ばない私は


家まで車で往復40分

ここから、学校まで徒歩3分



という事実を踏まえ、



このあたりで、なにか食べたほうがいいんじゃない?


と言った。すると、


そうできるなら、ありがたい😁

と、とても喜んだ



その日、私達ふたりは、

学校近くの小さな喫茶店に入った。




そこでりくは


自分用にピザとパスタを、

そして、私が選んだハニートーストとコーヒー☕をオーダーした。


りくの前には、すぐに注文通りのものが出揃ったが、私のハニートーストは、しばらく運ばれてくることはなく



店主に声をかけたら、ピザとパスタがそれぞれ私達のランチで


ハニートーストはデザートなのだと、勘違いされていたことがわかった。




食事を終えた私は

もちろん「お会計は別々で」などと

言うつもりはなく、


支払いは現金のみ

そんな張り紙のあるレジに向かった。




2500円ほどの食事代に対して、


財布には一万円札が1枚と

千円札が2枚


他は数十円の小銭しかなく

恐縮しながら、一万円札を出したら


店主も恐縮しながら、

自分のプライベート財布までもひっくり返したけれども、


やはり

「お釣りがなくて」と言ったので





まだ、テーブルにいたりくに


1000円いい?


と、デート中の女性に対しては

あまりよくないらしい打診を


息子だからべつにいいかと思って、してみたら


財布持ってたかな?

と小さく呟き


ゴソゴソとリュックをあさって

財布を出し、1000円をくれた。

 



高校生から大学生への

道の途中の彼らしさ


無料 奢り 驕り 計算違い

勘違い 誤解 間違い 非常識 困惑 

差し金 探り合い 駆け引き 


迷うことなく


落ち込むことなく

傷つくことなく



闘うことなく

憤ることなく




躱わしたというわけでもないらしく




気づかないまま通り過ぎ

思うがままにすすんでいった



    行ってきます  

 予定通りに   
午後から部活へ


俺が、今回無料で受けたのって、だいたい4万円分の講座だったらしいけど、そう聞くとさぁ…


そこまでの成果は、俺にはないかなぁって。



〇〇高校
※※部
○△りく

名前を背負った
ベンチコート
チームTシャツ

それらは合わせて数万円



その成果はきっと
彼が自分で、決めること