地獄に堕ちた勇者ども 1969年 | 裏窓のブログ

裏窓のブログ

ブログの説明を入力します。

1月も後半、31日(水曜)に年明け一発目のライブ、もうすぐだ!


今回はこの作品、1969年のイタリア、西ドイツ、スイス合作、監督は美青年好きで有名な巨匠ルキノ・ヴィスコンティによる代表作の一つ


  (地獄に堕ちた勇者ども)


第三帝国の黎明期に、その陰謀と野心の犠牲となって崩壊していく、鉄鋼王国一族の悲劇的な葛藤をデカダンス調に描いている、(ベニスに死す)(ルードヴィヒ)へと続くドイツ三部作の第一作。


1933年.ナチス台頭の時代、ヒトラーが首相に就任したばかりのドイツ、ルール地方に巨大な権勢を誇る製鉄王エッセンベック家では総帥ヨアヒム・フォン・エッセンベック(アルブレヒト・シェーンハウス)の誕生日パーティーが開かれていた


パーティーに集まったのは、ヨアヒムの戦死した息子の未亡人ソフィー(イングリッド・チューリン)、その愛人であり製鉄所の総支配人フリードリッヒ(ダーク・ボガード)、フリードリッヒを支援しエッセンベック家の当主に担ごうとしているアッシェンバッハ、製鉄会社の重役でありながら突撃隊に所属し虎視眈々と次期社長の椅子を狙うコンスタンチン(ラインハルト・コルデホフ)、ヒトラーを嫌う反ナチスの自由主義者ヘルベルトなど


そしてパーティー会場にそぐわない下品な余興が始まる、会場につくられた小さな舞台に女装したソフィーの息子マルティン(ヘルムート・バーガー)が網タイツ姿で歌い出す、総帥ヨアヒムは気色悪い孫の姿に顔をしかめるが、ソフィーは歌い踊る息子の姿を舞台にそでから楽しそうに覗いている


このオカマショーの最中に、ベルリンの国会議事堂が放火された! という知らせが入る、ヒトラー嫌いのヘルベルトはナチの謀略だと言い放つ、険悪な雰囲気の中、ヨアヒムはナチスとうまくやっていかないと会社の未来はないと判断し一族の前で突撃隊の幹部でもあるコンスタンチンを副社長に昇進させることを発表する

反ナチスのヘルベルトは怒りに燃えるが結局は一族から追い出される


だが一族の陰にはナチ親衛隊の幹部アッシェンバッハが暗躍していて、その命令でフリードリッヒは計画を実行する

ヨアヒム男爵を殺して国外へ逃亡したヘルベルトにその罪をなすりつける!

ヨアヒムが死ぬと、遺言によりエッセンベック家の筆頭株主は孫のマルティンとなる、そこでソフィーは息子のマルティンを上手く丸め込み、自分の愛人であるフリードリッヒを社長に指名させ会社の実権を握る

出し抜かれたコンスタンチンは激怒したが後の祭りだった、ナチス親衛隊のアッシェンバッハ、そしてソフィーと愛人フリードリッヒの3人はこうして鋼鉄王国を支配する


そして、ある時ロリコンのマルティンが幼女を手なづけようとしているスキャンダルをいち早くつかみソフィーとマルティンを脅迫したコンスタンチンは歴史に名高い(血の粛清)の日に親衛隊による突撃隊急襲の際にアッシェンバッハとフリードリッヒに殺されてしまう

これは1934年に起こったに(長いナイフの夜)と呼ばれる事件で、クーデター計画の発覚によりヒトラー率いる親衛隊が保養中のSA幹部らを急襲、逮捕したらしいが、映画では大量殺戮に置き換えられている


休暇を与えられ湖畔で乱痴気騒ぎをしていた突撃隊隊員たちを急襲し銃を乱射する親衛隊のシーンがこの作品を盛り上げる見せ場となっている


射殺された隊員の中にコンスタンチンの死体を発見し冷やかに見下すアッシェンバッハ……


コンスタンチンを排除したソフィーとフリードリッヒは結婚式を挙げてエッセンベック家の正統な後継者となり鉄鋼王国に君臨しようとする、だが、行き過ぎた二人を見限ったアッシェンバッハはマルティンを巧みに利用し、コンスタンチンの息子ギュンター(ルノー・ヴァルレー)の純粋な心に家族の醜い野望の毒を注ぎ込みナチ党員に引き入れてしまう


そんな時に逃亡していたヘルベルトが戻り妻と娘を強制収容所に渡したフリードリッヒとソフィーを激しく避難した、だがこれもアッシェンバッハの指金だった


権力を奪われたフリードリッヒとソフィーに親衛隊の黒制服を身に着けたマルティンが結婚式をお膳立てする、だがこれは娼婦などを狩り集めた狂宴だった……

そしてナチスドイツの恐怖の軍靴はもはやドイツ中に響き渡っていた……


この作品はリアルな戦場の描写にしびれたい、という軍事映画をみる感覚だと少し物足りなくなる、が欲にまみれた一族の権力闘争に巻き込まれて、その中で最後には華麗に転身を遂げるロリコン青年のドラマだと言う視点で観るとそこそこ楽しめる。