ようやく始まった授業



一通り実験の説明やら器具の説明をして各班ごと実験に取り掛かる



あ~あ…



随分大事に守られてんな…あのお姫様はよ



真剣に実験に取り掛かる○○の周りには俺を警戒した寮生が取り囲んでいる



俺よりも授業に集中しやがれ



こう何度もチラチラ見られてちゃ落ち着かねぇな



さすがに寮生にバラすのは早かったか?



しかし昨日見られちまったからな…



寮生から夏男にまでバレてなけりゃいいが…



だが、ここまで寮生が○○に張り付いてられると補習だなんだ言って呼び出すのは無理がありそうだ



登下校も誰かがついてるだろう



休みの日に家に連れ込むか?



…どうやって?



生徒達に実験をさせながら俺の頭の中は全く別のことでいっぱいだった



窓際で外を眺めているフリをしながらその目には何も見えないぐらい頭を回転させていた



家に連れ込むにしても寮生にバレないようにしなきゃなんねぇし、第一アイツが素直に俺ンち来るか?



俺を好きならまだしも、好きかどうかもわからねぇし…それに



キスしちまったしな…しかも胸まで揉んじまった…警戒されねぇほうがおかしいだろ



…八方塞りだな、こりゃ



1人になった隙を狙うしかねぇが…よっぽどのことがねぇ限りそんな事もなさそうだ



延々そんな事を考えていて、ようやく我に返ったのは授業終了のチャイムを聞いたときだった



いつの間にか片付けも終わった生徒達がゾロゾロと実験室を出て行く



○○も寮生に囲まれて実験室を出て行った所だった



まぁ…



そんなタイミングがあるかどうかわからねぇが



1人になった時を狙うしかねぇな



それが無理なら強引に補習で準備室にひっぱるか…




やっぱりな…



朝のHR



教室に入った途端寮生の突き刺さるような視線を浴びる



普段朝から教室で見かけることの無い藤堂も珍しく教室にいる…わざわざ俺を睨みつける為にHRに出たのか?



その藤堂の横には俯いたまま顔を上げない○○



昨日俺が送ったメールには結局返信はなかった



それでも昨日のキスを忘れるわけがねぇだろう



その余韻が消える前に…なんとかして○○と2人で話がしたい…



HRが終わるとそのまま俺の授業に入る



実験があるために化学室へ移動を促すとゾロゾロと生徒達が教室を出て行く中、移動する○○の後ろ姿を呼び止めようとするとすぐに寮生が俺と○○の間に立ちはだかった



水瀬を筆頭に全員が俺に敵意をむき出している



自分の後ろでこんな光景が繰り広げられている事なんて知らない○○はそのまま化学室へ行ってしまったようだった



「俺に何か用か?」



出席簿を肩に担ぎながらジロリと睨み付けると全員が一斉に口を開いた



龍海「てめぇ昨日○○に何してやがった!」



榊「遊園地の時からなんかおかしいと思ったんだよね!」



吾妻「○○に手出すなよな!」



藤堂「アンタも○○が好きなのか?」



一斉にしゃべり倒すから何言ってるかわかりゃしねぇ



水瀬「落ち着け。まず聞く事があるだろ」



俺の変わりに水瀬がコイツらを静めた



そのまま真剣な目を俺に向け



水瀬「先生と○○は…付き合ってるのか?」



そう聞かれた



コイツらからしたらキスする関係=彼氏彼女、なんて公式が頭にありそうだな



「あ?付き合っちゃいねぇよ…今はな」



水瀬「どういう意味だ?」



途端に水瀬の視線が鋭くなる



コイツは一見悪そうに見えるがそう簡単に喧嘩を売るような真似はしない



龍海や吾妻のように感情をストレートに表に出す事もないと思っていたのに、今日は様子が違うな…



「あ?そのまんまの意味だ」



大人の余裕を見せるつもりでニヤリと笑ってみせた



吾妻「だったら!!」



あん?



急に大きな声を出す吾妻に視線を移すと今にも俺に殴りかかりそうな勢い



吾妻「昨日○○に無理矢理キスしたってことか!?」



水瀬が吾妻の体を抑えているがそれでも俺に向かってこようとしている



「別に無理矢理じゃねぇよ」



キスは無理矢理とはちょっと違うな



胸を揉んだのは無理矢理だったが…



一向に怒りが収まらない様子の吾妻を睨み、俺からも一言こいつらに言っておきたい事があった



「お前らが相手でも、全力で行くからな…」



すっかり生徒がいなくなった教室に授業開始のチャイムが鳴った



「サボるならさっさと行け」



つっても○○が授業に出る以上、コイツらも出席するだろうがな



授業開始からから送れる事数分



化学室に入ると俺より先に来ていた寮生が○○を取り囲むようにして座っていた





たく…俺はなにやってんだ…



その日の夜、自宅でビールを煽りながら準備室での事を思い出していた



もっとゆっくり行くつもりだったのによ…



しかし、あんな顔見せられたら我慢なんてできるはずねぇか



自分に悪態をついて、自分で言い訳をする



さっきからその繰り返しばかりだ…



"このままなかった事にはしない"



アイツの気持ちは多少なりとも俺にあるはずだ



どこから出てくるのか分からない変な自信が俺にはあった



鈍いアイツの事だ"からかわれた"と済まされる前に手を打つ



携帯電話を取り出しアイツのメアドを表示させた



別に返事が欲しいわけじゃねぇ



俺の気持ちを知っていればいい、あとは俺を好きにさせればいいんだからな



"俺を好きになれ"



そう一言メールを送った



明日お前がどんな顔で登校してくるのかが楽しみだ



きっと俺と目を合わせねぇかもしれねぇし…もしかしたら授業をサボるかもしれねぇな



まぁ最初は見逃してやるか…



最初だけは…な…



それに恐らく寮生の事もある…アイツらの事だから俺に○○を近づけないようにしてくるだろう



上等じゃねぇか…寮生どころか山ほどいるライバル共を全員蹴散らしてやる



俺だって教師である前に1人の男なんだ



好きな女がいたらモノにしたいと思うのは当然の事だろう?



いくつも年の離れた野郎共が相手だからって手加減しねぇ



お前らより乗り越えるハードルが多い分、大人である事…教師である事利用したっていいだろう



悩めば悩んだだけビールとタバコの量が増えていく



いい加減寝るか…



空き缶をグシャリと握り締め、案の定鳴らない携帯を放り投げベッドにもぐりこんだ