扉を開けてくれた先生が先に中に入っていく…



私の為に中からドアを押さえててくれてるけど…私帰った方がよさそうだよね…



ものすごく機嫌が悪そうだし…きっと休みの日に補習しなきゃいけないことがめんどくさいんだろうし…



先生が不機嫌な理由を私なりに考えてみたけど、補習しか思い当たらない



だって啓一郎に送ってもらった事に怒ってたらソレってヤキモチになっちゃうよね?



まさか先生がヤキモチなんて妬くわけないし…となると補習がめんどくさいんだろうなって…



だから開かれた扉の前に立ったまま、先生に向かって頭を下げた



「すみません…お休みの日に補習なんてめんどくさいですよね…あの…私帰ります…」



先生が持ってくれている鞄に手を伸ばすと、無言の先生の手が伸びてきて手首を掴まれた



「!?」



そのまま室内に引っ張り込まれてパタン…とドアが閉まる…



「せ…先生!?」



私の手首を掴んでる反対の手が伸びてきて私の後ろにあるドアの鍵を閉めた



その時フワリと香るいつもの先生とは違う香り…



シャンプーの香り…?タバコの香りじゃない香りに妙に先生を意識してしまう



冴島「さっさと入れ」



そう言ってさっさと奥へ行ってしまった



玄関に取り残されどうしていいかわからず…しかも先生が私の鞄を持ってちゃってるし…



「お…おじゃまします…」



恐る恐る先生の家に足を踏み入れた…



いくつか扉のある廊下の突き当たりにリビングがあった



日当たりが良くてお昼寝したら気持ちよさそう…ってのが第一印象で、部屋の中を見渡すと先生らしいシンプルなお部屋だった



ソファーとテーブルとテレビ…だけ…



こんな広いお部屋にそれだけ?なんて気になってキョロキョロしているとキッチンから先生が顔を出した



冴島「その辺座って教科書でも出してろ」



「はい…」



言われたとおりに鞄から教科書を出してテーブルに置いた



そして床に敷かれたラグの上にペタンと座ってシャーペンを取り出す



冴島「なにからやるんだ?」



後ろから先生の手が伸びてきてテーブルの上に買ってきた飲み物を置いてくれる



そしてそのまま私のカラダを取り囲むように…



両サイドに伸びた先生の長い足の間に挟みこまれてしまった



!?



先生…近い…



すぐ後ろに先生を感じる



こんなに近いと緊張して全然勉強できない…!



後ろから前かがみになってテーブルに肘をついて開いたノートを覗き込んで



私の肩のあたりに顎を乗せてつまらなそうにため息をつく…



「あ…あの…先生…」



先生の吐く息が頬にかかってくすぐったい…



きっと私の心臓がドキドキと煩いぐらいに脈打ってるのが聞こえてそう…



冴島「…あ?」



「あの…もう少し…離れてもらえませんか?」



私の顔を覗きこむ先生に、顔が赤くなってるのを気づかれないように教科書をめくってごまかした



でも…



フッ…と先生が笑ったのか吐息がかかる…



そして教科書に視線を落とす私の顔を無理やり覗き込んで、背中に先生の大きな掌が触れた



冴島「お前心臓うるせぇな」



そんな風に私をからかって笑っている



「さ…触らないでくださいッ!」



背中にある先生の掌の感触にドキドキしてそっけない口調で言い返してしまう



なのに私が少し言い返したところで大人の先生にはなんてことないみたい…



いつもの口調で



冴島「いいからさっさと始めるぞ」



なんて言って、私の手から教科書を取り上げ、パラパラとページをめくり始めた…




啓一朗のバイクに乗せてもらって目的のコンビニに着いた



「ありがとう!啓一朗!私1人じゃ絶対迷ってたよ」



バイクから降りてヘルメットを返すと大きな手が私に伸びてきて乱れた髪を直してくれる



なんか…啓一朗がこんな事してくれるなんて変な感じ…



そう言えば先生も…こうやって髪を直してくれたな



男の人の手って意外と優しいんだなぁ…



啓一朗の手に先生の手を重ねてしまう



水瀬「じゃぁな。もし帰りが遅くなるようなら連絡しろよ。迎えに来るから」



そう言って啓一朗のバイクは走り出してしまった



「あ、そうだ!先生に連絡しないと」



冴島「その必要はねぇよ」



後ろから先生の声が聞こえて振り向くと私服姿の先生が咥えタバコで立っていた



遊園地に行った時も先生の私服は見てるけど、やっぱり雰囲気が変わるからなんだか意識してしまう…



フードにファーのついたモスグリーンのジャケットにジーパン



インナーには黒のロンT。やっぱ黒が好きなんだなって思った



「え?いつからいたんですか?」



ドキドキを悟られないように少し目を反らしながら聞くと



冴島「水瀬とイチャついてる時から」



一言冷たく返された



ものすごく機嫌の悪そうな先生はタバコを揉み消すとコンビニの中に入っていく



慌てて後を追うと飲み物やらタバコやらカゴに放り投げてる先生



…もの凄く機嫌が悪いというか…今日は普段の不機嫌より一段と機嫌が悪そう…



冴島「お前何飲むんだ?」



私の方を見ないで聞いてくる先生に戸惑いながら紅茶のペットボトルを手に取ると私から奪うようにしてカゴに投げ込んだ



私、何かしたかな?



お休みの日に補習なんてしなきゃいけないから怒ってるのかな?



お会計を済ませるとスタスタコンビニを出て行く先生



その後ろを小走りで追いかけていくけど…先生歩くの早い…



息が上がってきちゃったよ…



立ち止まって呼吸を整えると少し向こうで先生が立ち止まってくれた…でも…



冴島「早くしろ」



…冷たい…



なんで今日の先生こんなに機嫌が悪いの?



ココまで機嫌の悪い先生初めてかも…



これ以上怒らせないために、まだ呼吸が整わないうちに先生のもとへ走った



なのに、私に向かって手を差し出してくれる



冴島「ほら」



先生の横に追いつくと鞄を持ってくれた



怒ってるんだかなんだか分からないや



さっきよりは少しゆっくり歩いてくれる先生を横目で見ると、まだ少し機嫌は悪そう



何に怒ってるのかな?



さっきの先生の言葉を思い出す



"水瀬とイチャついてる時から"…もしかして…啓一朗に送ってもらった事怒ってるのかな?



他にも記憶を辿ってみるけど他に思い当たる事がない



…でもなんで?



別に送ってもらうぐらいで怒る事なんてないよね…第一それで先生が怒るって…やきもち妬いてるみたい…



そんな事あるはずないか…じゃぁ何に怒ってるんだろう…



先生の家に行くまでの間、ずーっと考えてみるけど全然分からない



そうこうしてるうちに先生の自宅マンションまで着いてしまった



冴島「お前ココまでの道順覚えただろうな」



エントランスを抜けエレベーター待ちをしてる時にチラリと横目で私を見る先生



「…すいません…」



他の事考えてて全然どこ歩いてきたか分からなかった…



怒られると思って身を縮こまらせているとエレベーターの扉が開く



冴島「お前は…そんな事だろうと思ったぜ」



乗り込んだエレベーターがため息で充満する



余計に怒らせちゃったかな…



沈黙のままエレベーターが止まり先生の部屋の前までやってきた




○○side




「やっぱり寝坊しちゃった…」



ベッドから飛び起きて急いで身支度を整える



慌てて食堂に飛び込むと既に皆がご飯を食べている最中だった



榊「おはよ~♪○○ちゃん」



晃が引いてくれた椅子に座って朝食を取る



榊「どうしたの?そんな可愛い格好しちゃって」



梅咲「あら、本当♪可愛いわ、○○ちゃん。さてはデートね?」



キッチンから顔を出した梅さんがデートだなんて言うから皆が急に騒ぎ出した



吾妻「デートって…!?」



龍海「誰とだ!?」



藤堂「まさか…冴島じゃないだろうな…」



榊「え!?本当!?由紀ちゃんとデートなの!?」



水瀬「そう言えば昨日鍵のかかった準備室で2人きりだったしな」



どんどん話が進んでいくから口を挟む隙がない



「ちょ…ちょっと待ってよ!デートじゃないから!」



まさか冴島先生の名前が出てくるのはビックリだったけど…



さすが零…するどいなぁ…



ちょっと感心してしまう



榊「じゃぁなんでそんなお洒落してるの?」



…やっぱりちょっと気合入りすぎちゃったかな?



勉強しにいくのにミニスカートなんて履く必要ないよね…ニーハイとか…



でも、せっかく先生に会えるんだから可愛いって思って欲しい…って思っちゃった…



龍海「あ?これなんだ?」



持ってきた鞄の中を亮が覗き込む



龍海「現国?」



よかった…一番上に現国の教科書入れといて…もし化学だったらなんかキマヅイよね…



梅咲「あら、○○ちゃん。教科書なんて持ってお勉強?」



「あ、はい…前の学校の友達と勉強しようと思って…テストも近いし」



よかった…なんとか怪しまれずに寮を出れそう



勉強と聞いて耳が痛いのかソソクサと食堂から出て行く亮と佑



それに続いて晃も出て行ってしまった



藤堂「分からない所あったら聞けよ」



食器を片付けた零がポンと頭を撫でながら去り際にそう言ってくれる



「うん!ありがとう!」



水瀬「俺も出かけるから送ってやろうか?」



「本当!?」



実は先生に言われたコンビニがよく分からなかったんだよね



「▲丁目のコンビニで待ち合わせなんだけど…」



水瀬「ちょうど通り道だ、送ってやる」



そう言うと支度してくると啓一朗が食堂を出た途端、梅さんがニコニコしながら私の元へ走ってきた



「?」



梅咲「由紀ちゃんに宜しくね♪」



「へ!?」



お箸に乗せていたご飯がポトリと落ちた



な…なんで先生の家に行く事知ってるの!?



梅咲「うふふ♪」



凍りついたままの私を見て鼻歌を歌いながらまたキッチンへ戻っていく梅さん



もしかして先生に聞いたのかな?



2人は仲いいから知っててもおかしくはないか…



1人で納得してご飯を食べ終わる頃、ちょうど啓一朗が食堂に戻ってきた



水瀬「そろそろいいか?」



「うん!!」



梅さんに挨拶をして寮を出ると既に啓一朗のバイクがエンジン音を鳴らして待っていた



啓一朗に手伝ってもらってバイクに乗せてもらう



ヘルメットをかぶると前に乗った啓一朗が私の手を取って自分の腰に巻きつけた



水瀬「掴まってろよ」



「うん!」



啓一朗の大きな背中にしがみ付いてバイクが走り出した