『太陽』と『月』とカノンは
ありとあらゆる
星を超え、銀河を超えて
全く光の差さない
暗闇が広がる空間に辿り着きました。
もっとも二人の天使は
ほのかな光を放っていたので
完全な暗闇では
ありませんでしたが。
カノンは二人に
「ここは何処なの?」
と聞きました。
『太陽』と『月』は
「人間の心のなか、
もっと正しく言えば
人間の孤独や悲しみの心のなかさ」
と答えました。
そう言われてみれば
なるほど
暗闇のなかから
「悲しいよ
淋しいよ」という声や
泣き声が聞こえます。
小さな子どもというのは
暗闇を怖がるものですが、
『太陽』も『月』も
全く怖がっていません。
むしろ
いたずらっ子のような
キラキラと輝く
柔らかな笑顔を
浮かべています。
天使である
太陽と月は
鍵を取り出すと
互いの胸の扉を開き
大きな箱を取り出しました。
大きな箱には
赤、青、黄色、白、緑、ピンクなど
色とりどりの海の貝殻が
入っています。
二人の天使たちは
貝殻を開き
虹色の光の玉を取り出しては
それを暗闇に投げつけました。
暗闇のなかに放り投げられた
虹色の玉は
桜の花や紅葉
マーメイドや
ユニコーン
色あざやかな蝶々など
ありとあらゆる
美しい姿に変身したかと思うと
打ち上げ花火のように
金色のきらめく火花を放ち、
爆発し
白い光を
放ちながら消えて行きました。
『太陽』と『月』は
「この虹色の玉は
誰かの幸せを願う気持ち」
「この虹色の玉は
誰かを愛する気持ち」
「この虹色の玉は
優しさ」
「この虹色の玉は
思いやり」
と呟きながら
虹色に光る玉を
一つ一つ
宇宙の真ん中に投げていきます。
カノンは心のなかで
「そうか!!
二人ともこうして
人間たちの悲しい気持ちや
淋しい気持ちという闇に
光を投げかけているのね!!」
と閃きました。
そして
二人の天使たちと一緒に
虹色の光の玉を
暗闇に投げ始めました。
それは
とても楽しい遊びでした。
どれくらい時間がたったでしょうか?
かつては暗闇に
支配されていた世界は
キラキラと輝く純白の世界に
生まれ変わっていました。
天空から
天使の羽が
ひらりひらり
フワリフワリと
優しく
舞い降りています。
この天使の羽
一つ、一つに
天使から人間への愛が
こもっているのです。
カノンは天空から舞う
天使の羽を見つめながら
「私たちが暗闇に投げかけた
愛の光は
人間たちの
悲しい気持ちや
淋しい気持ちに
届いているかしら?」
とつぶやきました。
カノンの問いかけに
『太陽』と『月』は
ゆっくりと静かに答えました。
「ある人は突然
誰かに愛を伝えたいと
思うかもしれない。
ある人は
誰かから
愛のメッセージを
受け取った結果
自分の心の痛みが
癒されたような気がして
とても不思議な気持ちになるかも
しれない。
大丈夫。
僕たちの
ささやかな愛の贈りものは
ちゃんと
人間たちの心に届いているさ。」
3人は
しばらくの間
幸せな静けさに
包まれていました。
そして
「もうそろそろ帰ろう」という
誰かの言葉を合図にして
『太陽』と『月』とカノンは
柔らかな笑顔を交わし
そっと優しい抱擁を交わしました。
ハッと
気がつくとカノンは
家の前に広がる野原に
立っていました。
あれから
時間は全く
流れていなかったらしく
空には美しい冬の星座が
きらきらと輝いています。
カノンは一生懸命
天使たちの姿を探しましたが
天使たちは
どこにも見当たりません。
その代わりに
ふんわりとした
ひとひらの天使の羽が
カノンの肩の上に乗っています。
カノンはひとひらの天使の羽を
ギュッと胸に抱きしめ
幸せそうな
深呼吸をしてから
ゆっくりと家に帰っていきました。
(終わり)
