ニュ-スでもさかんに報道されていましたが、競馬の当選金の課税方法についての判決が大阪地裁で判示されました。なぜ競馬の払戻金に課税されるのか??ということを書きたいと思います。

事件の争点

事件の争点となるのは、「外れ馬券」が経費となるのか??ということです。

税務上の言葉でいうと、今回の払戻金の所得が、「雑所得」になるのか「一時所得」になるのか??ということになります。

一時所得と雑所得とは??

一時所得とは、所得税法34条において、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、役務の対価としての性質も資産の譲渡の対価としての性質も持たない所得とされています。

対して雑所得とは、所得税法35条により、利子所得から一時所得までの9種類のどの所得分類にも該当しない所得とされています。

一時所得の特色としては、偶然得た所得であったり、一時的に得た所得が該当します。したがって、懸賞金や借家の立退料などが具体的に一時所得に該当します。また法令ではありませんが、所得税法基本通達34-1において、一時所得に該当する所得が例示されており、そのなかで、競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等と示されています。法令で例示されている訳ではないのですが、この通達の存在もあり、「競馬の払戻金は一時所得」という課税実務が行われています。

本件ではないと思うのですが、国税不服審判所に平成24年6月27日裁決でも同様の内容の事件があったので、その裁決での納税者及び課税庁の主張を見てみます。

【 課税庁の主張 】

・一時の所得とは、所得源泉を有しない所得と解すべきであり、所得源泉の有無は、所得の基礎に源泉性を認めるに足る継続性、恒常性があるか否かが判断基準となる。

・馬券を購入する行為と馬券の払戻金を受け取れるか否かは、臨時的、不規則なもので所得の源泉性を認めるに足るだけの継続性、恒常性を有しているとはいえない。

・安定した払戻金を過去に受けたとしても、あくまで結果であり、臨時的、不規則的な払戻金が連続しているものである。

⇒ 簡単にいうと、継続的に馬券が当たるという訳ではなく、過去安定的に当たっていたとしてもそれはたまたま連続して当たっただけという主張のイメ-ジです。

なぜ一時所得では外れ馬券を経費とすることができないのか??

一時所得の経費の考え方については、所得税法34条において、「その収入を得るために支出した金額」と規定されており、括弧書きで,「その収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」とされています。したがって、直接要した金額=当たり馬券のみ経費とするという考え方となります。

また、別では、競馬というギャンブルを楽しむための支出という側面も当然に備えている。にもかかわらず,これら競馬や競輪で収入を得た時にそれまでギャンブルに費やしてきた金額をすべて控除することを認めてしまうことは適切ではない。したがって税法は,「支出はそれが収入を生んだ場合に限って控除を認めるという建前をとっている」と説明されています。

したがって、競馬の払戻金から控除することができる馬券購入金額は、当たり

馬券

の分のみと考えられています。


本件の判決について??

上記の別の裁決では、納税者は雑所得に該当する旨を主張していたのですが、審判所は、一時所得に該当すると判断しています。これに対して今日の大阪地裁の判決では、雑所得に該当すると判示しています。判決の内容は「馬券の払戻金は偶発的、偶然に入り、継続性は認められず、一時所得に当たる」と示しましたが、「元会社員は無差別に一定の条件で網羅的に購入し、多額の利益を得ていた。元会社員は娯楽ではなく、資産運用の一種ととらえていた」と指摘し、雑所得であるとしました。


まだニュ-スしか見ていないので細かい内容や主張はわかりませんが、上記のような内容で判決が下されています。今回の判決を受けて、競馬の払戻金=雑所得という図式になる訳ありません。今回のポイントとしては、市販の予想ソフトを改良した独自のシステムで、週末ごとに多いときで1日1000通り以上の馬券を買い続けたことが判断する上で大きなポイントとなっているのかもしれません。

もし判断がこのシステムの存在によりなされていれば、今回の判決がニュ-スでもたくさん流れていますので、もう少ししたら、このシステムが売られるようになるかも!?