少し前、映画『エヴェレスト~神々の山嶺~』を観に行きました。

言わずと知れた夢枕獏先生のベストセラー小説の映像化。

獏先生と言えば、獏節ともいわれる独特の表現方法。改行だらけの白目の文章が好きな人にはハマる作品。私は獏先生の小説は「神々の山嶺」と数冊しか読んだことありません。

だって、「陰陽師」も「餓狼伝」も完結しないまま何年も続くんですもの。

でも「神々の山嶺」を読むだけでも獏節は炸裂し、なんとも暑苦しい文章を楽しめます。上下巻ですが、なんせ改行が多いのでサクッとよめちゃう不思議(笑)

で、映画の方ですが、どうでしょうかね?

結構個人的にはまあまあ、あの分量を映画化するし、こうするしかなかったのかな?という印象です。もし、原作ファンが観ると甘めに評価しちゃうけど、岡田君ファンといきなり観た人からすればイマイチな映画になりそう。

まずは、リアリティーの欠如。8000メートル級の登山というのは本当に凄まじいことなのですが、結構サクサク登っちゃっている印象を受ける。岸の妹とかあの映画だけなら6000メートルまで普通についてきたみたいになってますが、原作では岸景子も山登り人だったりする。

そして、深町のなんかよくわかんない感じ。なんかスゲースクープを追っかける貪欲な山岳写真家みたいな雰囲気になっていますが、実はそうではない。

この話はマロニーのフィルムやエベレスト登山達成を核としての物語ではなく、2人の男と山の話である。

羽生という天才クライマーと深町という凡人クライマーの対比が何よりの見どころだと私は思う。

山を登ることを諦めきれずに写真家として生きる深町。それが羽生との出会いにより、エベレストという神の領域への夢にあてられる。凡人であるが故の判断と天才であるが故の判断。

それは「なぜ生きるのか。」というテーマを帯び始める。

そこらへんがなかなか映像では掴みきれないところ。

深町が酔った勢いで若い登山客につかみかかるシーンがある。一見ただの飲んだくれのシーンではあるけれど、原作を読んでると深町のやるせない気持ちが演技としてよく出てるなと思う。

キャストは良かったです。阿部寛は羽生にめっちゃマッチしてました。イメージ的にあーなるほどって思えた。

そして岡田准一演じる深町。多分「岡田君おっさんになったな」って思った人多いんじゃないでしょうか?しかし!岡田君は読書好きの格闘技マニアで知られています。そんな人が「餓狼伝」を読んでない訳がない。(実際獏先生と岡田君は対談で、彼も獏ファンであることが雑誌のインタビューで掲載されてて軽くガッツポーズ)

あのずっしりとした体格は私は役作りではないかと思っています。山の男を作ってきたからあんななんか汚いおっさんが出来上がったのではないかと。

最後らへんなんかもう、深町ご乱心。とちょっと引いた方おられるかもしれませんが、あそこは原作通りでもあるので安心してください(?)獏先生は熱いんです。

なので個人的には邦画としては大分健闘したんじゃないかな。

ま・・・・映画化はしなかった方がいい気がしますがね。マジで。

それと、洋画で「エヴェレスト」が同じような時期にあるのでそれもね、残念。かけてる金が違うので。

 

ということで、是非、原作読んでみてください。