この時期になるといつも思い出す作品があります。
藤沢周平の「山桜」。
- 時雨みち (新潮文庫)/藤沢 周平
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時雨みちに入っているわずか数十ページの短編なのですが、藤沢文学っぽい素敵な作品です。
私は特に映画が好きです。
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藤沢作品はよく映画になるのですが、キムタクとか起用してから若干金の匂いがするのでなかなか手が伸びなかったのですが、レンタルでなんとなしに借りてきて大好きになりました。
私が基本映画に求めるのは時間内に収める技量とクローズアップすべき箇所のチョイスです。
しっかりと起承転結があってこそのエンターテイメント。
しかし。この作品は全体的に静かです。
アクション中心に観る方には盛り上がりに欠ける作品ではありましょう。
でも、私は正直、こういう映画をもっと日本映画は作ってほしいな。と思っています。
中島監督の「告白」などの鮮やかな従来の日本映画にはない技法を取り入れた作品もいいと思うのですが、
シンプルである美しさというものは本当に人の心を洗うんです。
「間」というのでしょうか。
古臭い人間の私には日本人にはこうあってほしいと感じてしまう。
っていうか、好きなの、個人的に。こういう恋愛や行き方をしたい。恋愛映画で一番好き。
ストーリー:下級武士の娘野江、最初の嫁ぎ先の夫は病死して、実家に戻る。剣術の名手の手塚弥一郎、彼はかつて野江を妻にと申し込んでいたが野江の親の判断で野江は別の家に嫁ぐ、しかし再婚した相手は金と地位に執着して、野江につらく当たる。耐えに耐えたが、二度目の嫁ぎ先からも離縁される。
不作にもかかわらず重い税と労役で、農民は困窮する、しかし藩は益々締め付ける。弥一郎はこれを見過ごすことができず、私腹を肥やす諏訪平右衛門を切る。
男は正義を貫き、女は熱い思いを胸に秘めた。
まっすぐに生きた故の遠回り。2人の結末は・・・・。
作中、2人が合うのは冒頭のたった一回きり。後は想い忍ぶだけ。
愛を語るシーンも抱擁や手が触れるシーンもありません。
互いの幸せをただただ祈るだけ。
素敵だ!素敵過ぎる!
庄内の美しい四季や当時の日々の人々の生活。美しい映像に階級に似合った着物や食事風景は素晴らしいです。
原作に奥行きを出した感じ。
今の時代では考えられなかった女性の待遇は受け入れられない人もいるかもしれませんね。
でも、どんな時代も一生懸命生きる人に幸せがあるって私は思いたい派。
意外と時代劇でもいける田中麗奈の透明感
殆どセリフがないからこそ際立つ東山紀之の美しい殺陣
終盤で物語を引き締める富司純子。
キャストも若いながらにいいと感じました。
桜が活けられた床の間の完成された「美」は日本人で良かった!って思いました(オオゲサ笑)
しかし、最後の一青窈の歌がなんであんなとこから流れるんだ!とがっかり。エンドロールでいいじゃない。
それと、牢に入れられているのに小綺麗な東クン・・・・。髭くらい演出で生やそうよと思いました。
それ抜きにしたら素晴らしい作品です。
結局最後に毒を吐いちゃうのか、私(笑)