- 森崎書店の日々 (小学館文庫)/八木沢 里志
- ¥500
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あらすじ
恋人と仕事を一編に失った貴子のところに本の街、神保町で古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る・・・・。
古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。
「第3回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。
感想
この本は随分昔に購入していたのですが、その時はミステリーにかかりきりでなかなか読めないまま本棚に突っ込まれていました。最近お風呂タイムで読んでみました。
失意の中にいる主人公が新しい環境で徐々に生き生きとした生活を取り戻す・・・・・というのが大筋ではあるのですが、なんともこの主人公の腰が重いこと(笑)
私は結構思い立ったら吉日タイプなのでガツガツなんやかんややってしまうのですが、彼女は色々考えはするものの、途中で思考を停止してしまう。
でもそれが読者が共感する部分なのではないでしょうか?
傷ついた時、その現実から逃げたくなる。考えることすら止めてしまって、ダメだと思いつつも時間を貪ってしまう時って誰にでもあるもの。
そんな中、本の魅力に取りつかれ、徐々に街の皆とも打ち解けて行くのが、なんとも劇的ではないですが物語全体から醸し出されているゆったり感を存分に味わうことができます。
続きもあるのですが、貴子に恋の匂いがしたところで終わっていたのでそのことかなー。なんて考えています。
それに舞台の神保町は私も行ったことがあり、東京で大学院生をしていた先輩に連れられ、その街の不思議さに圧倒されたものです。
本好きが集まり、話に華をさかせるには素晴らしい場所です。いたるところに無造作に並べれた(もしたしたらこだわりがあったのかも)書籍をじっくりと眺め、その質感や香りからその本の人生を感じられるって素敵です。
時々、名前やしおりまで本に入っているときもあるんですよね。あと、線を引かれているセリフを読んで「前持ってた人と話してみたいなー。」なんて(笑)思っちゃったり。
古本はロマンです。新品扱っている人間が言うもんじゃありませんが。
あーまた行きたいな。
話しに戻って、この本を読んで、「食堂かたつむり」を思い出しました。
- 食堂かたつむり (ポプラ文庫)/小川 糸
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この本も恋と仕事をうしなった主人公が地元に帰り食堂を開きます。彼女の作る料理に皆が癒され幸せな気分になります。そして彼女自身も・・・・。
正直なところ、こちらの方が一般的には共感できる作品かもしれません。
自然や動植物の恵みを受け取り、食べることの幸せ、楽しみ、そして大事な人と向かい合って食べる食事の有難さ。食って日々の糧だから余計ですね。
共通するのは、自分が自分らしく日々生きて行くきっかけをつかむこと。
それってなかなか難しい。
見過ごしているのかもしれないし、そもそも自分がいるべき場所が違うのかもしれない。
それとも「いるべき場所じゃない」って思いこんでるだけかも。
自分が夢中になれるものがあれば世界は明るくクリアになるんだなって感じました。
読むこと・食べること・寝ること・働くこと・聴くこと。
生活の一つ一つを大切に感じて行きたいなってこういう本を読むと感じます。