午後3時過ぎ、ハードな行程を走りきり、グテグテになりながら観光客
でごった返す道の駅に入る。ここ上北町は温泉街であるらしく、付近の
温泉10件ほどが簡潔にまとめられた紙が置いてあった。
その中の1件である、「玉勝温泉」はなんと素泊まり2500円であると
いう。これはヘタに小川原湖のテントサイトを使うより安いかもな。(大
洗のテントサイトは2500円であった)
早速電話を掛けてみる。
「あの、本日宿泊したいのですが。素泊まりで一人です」
「え~とっ・・・・うちは素泊まりしかやってないですよ。
・・・・・・・・はい、お一人で大丈夫ですよ」
「チェックインはありますか?」
「ええ~、もう大丈夫ですよ。お名前と電話番号を」
「~~~です。ではすぐに向かいます」
電話に出たのは青森訛りのあるおばさんであった。結構デンとした対
応だったな。大衆的な宿なんだろうな・・・・・・・。
玉勝温泉は道の駅から僅か5分ほどの場所にあった。建物は意外と
大きく、駐車場もしっかりしている。「玉勝温泉」と赤い字で書かれてい
る。ここだ。
中に入ると、僕はタイムスリップした様な感覚に襲われた。
床も柱も木造で、かなり使い込まれているのか独特の艶が出ている。
テレビとマッサージ機が置かれ、おじさんが2~3人くつろいでいる。
受付もまた年季の入ったものであった。先ほどの電話のおばさんと思
える人が対応してくれる。宿泊客リストは、ノートに手書き。
うわぁ・・・・、メッチャ雰囲気あるわぁ・・・・・・。
本当に素泊まりは2500円であった。受付をした本館の他に別館があ
るらしく、僕が明朝早くに発つことを伝えると、人の少ない別館の方が
いいだろうと、気を利かしてくれた。
別館は本館の向かいにあり、ややこじんまりしていた。僕が入るとおば
さんが待っていてくれ、すぐ近くの部屋に案内してくれた。部屋は6畳
ほどの畳張り。布団がすでに敷いてあり、小さな机と、テレビが置いて
ある。古めかしい感はあるが、とても清潔な印象を受けた。
穴場だぁ・・・・・。
俺は本当についているなぁ。今日一日辛かったけど、最後の最後に大
当たりを引く事が出来た。
8部屋ほどある別館は、僕を入れて3部屋ほどしか使われていない様
であった。別館には洗濯機や調理場もある。もちろん温泉も。
どうやら、ここは湯治客が主に利用していく宿である。料金表には湯治
客は素泊まり2000円と書いてある。すげえ・・・・・・。
穴場的温泉宿を見つけたことで僕は疲れも忘れ興奮していた。早速温
泉に入る。もちろん貸切。
浴槽はやや小さめで、お湯は少し黄色味がかっている。匂いはあまり
ない。肌をこすると、ツルっとする。いい感じだ。
湯船にゆっくり浸かりながら、この旅を思う。
明日40キロも走れば、いよいよフェリーに乗って函館だ。
明日にはゴールを向かえることになるのか。
よく頑張ったな、というのは確かにあるが・・・・・・・・・・。
正直つらいというよりは楽しい事の方が多かったな。
そして何より多くの人の親切を受けた。
何も大きな親切だけでなくとも、例えば僕をいちいち大きく避けて
走ってくれたドライバー達だって、僕の旅の支えになったんだ。
そう考えると感謝だよなぁ・・・・・。みんなに感謝だ。
そして、僕のこの変わり様は何だろう?
今じゃ人見知りの「ひ」の字も感じられない。
困難があっても頭と体をフル活用して解決してきた。
もちろんまわりに助けを求める事もあった。
いろんな意味で、この行動力はすごいな。
旅が終った後も是非継続していきたい・・・・・・・・。
ああ、最後にいい宿にも泊まれたし・・・・・・・・。
本当に旅に出てよかった・・・・・・・。
僕は、大きな満足感に浸っていた。
温泉を出ると洗濯をすませ、明日のフェリーの予約をした。
11時30分発 青森~函館 2000円。
自転車込みの値段にしては安いと思った。やっぱり青森まで頑
張って進む価値はあったようだ。(八戸からだともっと高い)
今日はせっかく自炊所もあるんだし何か料理でも作るか、という気
分になった。食材を買いに、ブラっと外へ出た。
この部屋なら十分だ
割とこじんまりした浴槽
洗濯機と自炊場
脅威の料金体系