宮古のNさんに受け入れられる   9月8日(金) | モラトリアムな日々

モラトリアムな日々

隙あらば壁に張りつき、酒あらば飲んでしまう。そんな日常です。

銭湯を出ると、襖を持ったおばさんが僕の前を通り過ぎていく。

重たいのか、休み休みである。手伝ってあげようと思い


「僕持ちますよ」


と言って、代わりに持ってあげた。10メートルほど先の荷物置

き場までそれを運ぶと、おばさんは礼を言ってきた。そして僕を

見て、


「どちらから?」


と聞いてきたので、この自転車旅のいきさつを説明した。

おばさんはたいそう驚いていた。そして


「今日は雨が降るしねぇ・・・・」


と言って数瞬考えた後、


「もし良かったら、うちの空いてるアパートに泊まっていいよ」


と言ってくれた。 まじっすか!!? それはとてもありがたい。

どんよりした曇り空は、いつ降りだしてもおかしくないように思

えたし、何よりその親切が嬉しかった。

小さな親切はしてみるもんだ、と思いながらそのおばさんに着

いてアパートまで歩いた。そのアパートは本当に昔ながらの

作りで、木造1階建てであった。僕に貸してくれるという部屋は

、おばさんの長男が使っていた部屋で今は仕事で上京してい

るから空いているのだという。


「これも何かの縁だしね。襖運ぶの手伝ってもらったから」


と言っておばさんは行ってしまった。

旅のエピソードで、知らない人の家に泊めてもらう、というのを

聞いたことはあったが、まさか自分がその親切にあえるとは思

ってもみなかったので、僕は喜びつつ少し興奮していた。


こうなったら道の駅でビクビクしながら野宿をする必要はない。

早速荷物を回収し、アパートに運び込んだ。

部屋を使っていた長男様に感謝の祈りを捧げ、畳に寝転がら

せてもらう。 少しウトウトしていると、襖(ここではドアではなくて

、鍵付き襖)を叩く音が聞こえ、おばさんがやってきた。何でも、

蔵を見せてくれるという。


蔵?


僕のいたアパートの隣は蔵であった。中は薄暗く、大きな柱が

中央にデンと入っている。かなりの年代物だろう。明治頃からあ

る物だと言っていた。急な階段を上ると、2階に行く事も出来る。

小さな窓から差し込む光の中交わした言葉によると、この蔵は

明日御祓いをして新たに使い始めると言う事、おばさんの名前

はNさんであると言う事、6人いる子供は全員国立大に入ったと

いうこと、旧姓が僕と同じであると言う事、おじいさんはサイクリン

グ協会の会長であったという事などが明らかになった。

よくよく話していると、頭のいい人なんだという事が分かる。知的

な顔をした人であった。


貴重な蔵を見せてもらった僕は再び畳の部屋に戻り、地図を見

たり本を読んだりしながら、


こんな事ってあるんだな。


と感慨に耽っていた。 数十分もすると、再び襖がノックされた。