「へぇ〜。ぜんぶ話したんだね。

翔さん、よっぽどその人のこと信頼してるんだぁ」


『うん。。話すかどうかかなり迷ったけどね。。

かなり勇気いった」


「それくらい信頼できる、って思えたんでしょ?

そのあい、あい・・だ?」


『相葉さんね』


「そうそう、相葉さん」



助勤に来た救急外来の喧騒を離れ、束の間の昼休憩

たまたま病院の食堂で居合わせた元同僚の松本に

「今夜久しぶりにどう?相談したいこともあるし」

と声をかけられた


一杯だけなら、と軽い気持ちで引き受け、

仕事帰りに近くの居酒屋の暖簾をくぐったのだった



松本は、ハイボール

僕は、烏龍茶で乾杯する



「相変わらずつきあいが悪いな」

と苦笑いされたが


帰ってからも色々やることがあるんだと告げると

それ以上は無理に酒を勧めることはしなかった


テーブルに並んだ料理をつまみながら

松本の話を聞く


まぁ、ほとんどが医局の愚痴や大学病院の古い体制の不満だったけれど(苦笑)



グラスを傾けるうちに必然と話題は自分にも巡り、

差し支えないのない範囲で

今年から診療所で働いてくれてる看護師のこと、

そしてその看護師に、診療所で働くきっかけになった身の上を打ち明けたことなどを話した




相葉くんには

今夜帰りが少し遅くなるとあらかじめ連絡を入れてある


だがあまり長居をするつもりもなかったため、

キリのいいところで先に会計を済ませようと立ち上がった時だった


「あ、大丈夫」


松本はトイレのついでにすでに会計を済ませ、

帰りのタクシーの手配までしてくれていた




ーー相変わらず、察しの良い男だ




二人で並んで後部座席に乗り込み、

それぞれの家路へと向かった


車窓から流れる夜景をぼんやりと眺めているうちに、

やがてタクシーは家の前で静かに停まった



『今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ。

じゃ、また』



多めの料金を松本に渡し、走り去るテールランプを

見送ってから、

あたたかな外灯が灯る玄関へと向かう




『ただいま』

 

扉を開けた瞬間、

パタパタと軽やかなスリッパの音が響く


まるでずっと待ち構えていたかのように、相葉くんが顔を覗かせた



「おかえりなさい、翔さん!

あの、朝作ってくれたおにぎり!めちゃくちゃ美味しかったです!ありがとうございました」



あまりに真っ直ぐでとびきりの笑顔がまぶしくて

胸が鳴る


あんな不格好に握ったおにぎりを

こんなにも喜んでくれるなんて…///



気恥ずかしさを隠すように

あわてて靴を脱ぎ、トイレへと直行した



用を済ませて、手を洗いながら

ふと耳を澄ますと

リビングの方から相葉くんの弾んだ声が聞こえてくる



ん?

誰かと電話でもしているのかな?



会話の邪魔にならないように

静かにリビングを素通りし、自分の部屋へ行こうとした、その時

背後から声をかけられた




「あっ、翔さん!お客さんですよ」



…お客さん?…こんな遅くに??


怪訝に思いながら振り返った僕の足は一緒止まった

そして、二度見した



『え⁈』



そこにはーー

ついさっき、家の前で見送ったはずの松本が

くつろいだ様子でソファーに深く腰掛け、ほうじ茶を啜っていたのだから








つづく……