「ご馳走様でした。美味しかったです」
『ね!美味かったでしょ!
時々ここの蕎麦、無性に食べたくなってさぁ。
でも2人前からしか出前頼めなくてね、、
相葉さんのおかげです。ありがとう』
「ありがとう、だなんてそんな、、こちらこそ本当にありがとうです」
先日手持ちのお金がなくて払えなかった診察代を
払いに来ただけなのに、お昼までご馳走なってしまった
にしても
一度しか面識のない患者に
ここまで親切にしてくれるなんて
こんな優しい医者、他にはいないよなぁ
『相葉さんは、コーヒー派?紅茶派?』
「どっち…も派?」
『ちょっと待っててね。今、食後の一杯淹れてくるから』
「あっ…そんなっ…おかまいなく……」
その言葉に笑顔で返した先生は
空になった麦茶のグラスと
食べ終えた出前の食器をトレイに乗せて
行ってしまった
一人残されたオレは
痺れた脚をほんの少し崩し
部屋を見回した
どこか懐かしい昭和レトロな感じ
たくさんの食器が飾られた食器棚
ガラス戸のついた本棚
このテーブルや革張りのソファーも長いこと使い込まれてはいるけれど、相当お高いのだけはわかる
あの絵画だって
どこぞの美術館に飾られてるのか、っていうくらい
クラシカルで品のある額縁に飾られている
やっぱり金持ちじゃなきゃ
医者にはなれないんだなぁ
羨ましいとかそんなんじゃない
ただ
ネットカフェを転々とする
今の生活から早く抜け出さなきゃ、、
そんな焦りが
乾いた溜息となってこぼれた
つづく……
