翔ちゃんの幸せを祈る、

って決意を固めたばっかなのに…


オレときたらダメダメで

ユルユルに緩んだ頬を引き締め直すことができなかった


引き締め直すどころか

気を抜いたら笑いが溢れてきそうなくらいで



だって

婚約者なんていないって

部長に翔ちゃんはハッキリ宣言して


おまけにその勢いでか

オレとの同居生活まで申告してくれたんだもん



そりゃ

部長に色々詮索されようが

もうそれどころじゃない



まるで

心にまで羽が生えちゃった?ってなくらい

オレのハートはフワフワしてて


今日一日

ミスなく仕事を終えるために

僅かに残った理性をかき集め

何とかミスなくこなすことができた


…と思う


…たぶん


…きっと







もう他の同僚の目を気にすることなく

オレと翔ちゃんは一緒に会社を出て

帰宅した



急いで手洗いとうがいを済ませる


疑ってしまったお詫びに腕によりを寄せて

ご馳走を作ろうと

張り切ってエプロンに手を伸ばした

その時



翔ちゃんが

キッチンに向かうオレの目の前に立ち


『マサキ、話の続き、今からしてもいいか?』

と言った




「話の…つづき?」


『嗚呼』



翔ちゃんのその真剣な眼差しに

オレは小さく頷いて

食卓テーブルの席につく





『先ずは謝らせてくれ』



「・・?」

 







『お前にずいぶん酷い態度をとってきたことを』


「え?」


正直今?それ謝る?と思った

確かに翔ちゃんと(人間界)初めて会った時の第一印象は最悪だった

厄介な奴を押し付けられて嫌そうにしてるのが見え見えだったから


けど…



「そんなことないよ!最初は…そう感じたけど、翔ちゃんはオレの仕事もちゃんと見ててくれたし、オレのピンチを何度も救ってくれた。

マンションが荒らされて帰る場所を失くしたオレをこの家に住まわせてくれたもん!

感謝してもしきれないくらい感謝でいっぱいだよ」




『俺さ…最初断ったんだ。ゼウス様に。

人間界へ堕りて、お前の警護にあたること』



「そ…なの?…ゼウス様が?」



『嗚呼…』




人間界での記憶しか

翔ちゃんとの記憶がないオレは



翔ちゃんから話される言葉の続きを

固唾を飲んで待った





つづく……




はい

出逢った頃なぜあんな態度だったのかも

紐解かなきゃね