完璧・無量大数軍の来襲は、原爆を思わせる描写だった。
恐怖は空から落ちてくる。
戦争で原爆が使用されたのは、人類の歴史上たったの2回。1945年8月6日の広島と、8月9日の長崎だ。漫画の中で完璧・無量大数軍は2回に分けて来襲するが、これはかつての2度の原爆投下をほうふつとさせる。
まさか先生もそこまで意識して描いてるわけではないと思うが、よくよく読んでみると、さまざまなワードに暗喩が隠されているのが分かる。
東京ドームの屋根を突き破って降ってきた完璧・無量大数軍。
東京ドーム・・・つまり、そう。東京ドームは原爆ドームの暗喩なのである。
ならば、このストロング・ザ・武道はどうか。
そもそもこの男の前身は、超人タッグ編に出てきたビッグ・ザ・武道である(正体はネプチューン・キング)
応募時は、このような剣道スタイルに身をつつんだ超人だったが
本編登場時には、このようなデザインに変更されている。
では、ビッグ・ザ・武道の元ネタはなにかと言えば、実在したケンドー・ナガサキというレスラーなのである。
ケンドー・ナガサキ(正体は桜田一男)。
剣道の防具を身にまとい、頭部をそり上げた「落ち武者スタイル」で、米・フロリダマットを主戦場に暴れまわった。かのザ・グレート・カブキとのタッグでは、アメリカのプロレスファンに絶大な人気を誇っていた。
こちらは初代ケンドー・ナガサキ(正体はイギリス人のピーター・ソーンリー)。このように剣道着のギミックで英マットで活躍していたが、日本に来日した際にはこのギミックを使用せず、リングネームをミスター・ギロチンに変えている。
マスクだけ剣道風にした、ミスター・ギロチン。
なぜ日本でケンドー・ナガサキというリングネームを使わなかったのか?これは推測だが、原爆を落とされた長崎への配慮なのではないだろうか。
欧米人レスラーにとって、オリエンタルなリングネームをつける際に日本を連想するワードをいかにセンス良くミックスするかが勝負。ケンドー・ナガサキというリングネームはつまり、「剣道」と「長崎」のハイブリッドなのである(ケンドー・ヒロシマでも良かった)。ナガサキは原爆が落とされた都市として欧米人に認識されているのだ。
ストロング・ザ・武道のルーツがケンドー・ナガサキだという事を考えると、思い当たるのがもうひとつ。それは、長崎に落とされた原爆の通称である。
そう、ファットマンだ。
ストロング・ザ・武道のでっぷりと突き出た腹を見て、この男には「ナガサキに落とされたファットマン」という2つの暗喩が込められていると考えるのは、いささか物騒な考え方だろうか?
ではもうひとつの原爆・・・広島に落とされた原爆の通称は何だったか?
そう、リトルボーイだ。
この男ピーク・ア・ブーこそがリトルボーイの暗喩であると、言ってしまおう。
今はまだおとなしくしているが、そのうちこの男が真の覚醒をして、キン肉マンたちにとって最大の脅威になる気がしてならない・・・。
ところで今朝方、ショッキングなニュースが飛び込んできた。世界を牛耳るロックフェラー財閥の総帥デヴィッド・ロックフェラー氏が亡くなったというのだ。享年101歳。
心臓移植を6回も繰り返し生き永らえてきたため、6つの心臓を持つ男とも呼ばれていたロックフェラー氏。金があれば命も買える。
完璧超人始祖をはじめ、選ばれたエリートである完璧・無量大数軍の面々には寿命がない。何億年も生きながらえる事が可能だ。地球上の超人たちをシステムごと管理しようと目論んだザ・マンと、金で世界を牛耳るロックフェラー。そこに何の違いがあるのだろう。
管理される我々からしたら、彼らは雲上人。
今の「キン肉マン」は、労働者階級の正義超人たちが雲上人に闘いを挑んでいるのだ。そう考えるとますます応援したくなる。そう考えるのは、いささか先生ウェットな考えだろうか?