『Tinker Bell』① | AREA73 MY NEXT THIRTY YEARS

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1973年出現、船長、だけど今は陸での仕事。
海に戻りたい坊主おやじの出来事、気になる事。

最近…というか、リリース当時より断然評価が高くなっている「時間の国のアリス」


この「時間の国のアリス」を軸として作成されたアルバム『Tinker Bell』松田聖子、1984年のリリース。

やはり度肝を抜いたのはこの真っ赤なジャケット。

アルバム『Candy』までの自然なポートレート風ジャケットから一転。

当時欽ちゃんの番組に出演していた際に髪型について語っていましたが、「今アメリカで流行っているソバージュヘア」と。

その後日本で流行るロングヘアでのソバージュヘアよりもかなり短め目ですが、最新のヘアスタイルを取り入れていた当時の聖子。


最近当時プロデュースをしていた若松宗雄氏のYouTubeでも語られていましたが、音楽面だけでなく、ファッションからフォトグラファーにいたるまで当時の最先端で第一線の方が集まり、真剣に松田聖子に取り組み、更にその中心にいた聖子自身も最先端を掴み、吸収し、それをアーティストとしてパフォーマンスし。

かつ気配りのできるアーティストであったと。


そう、当時…いや、最近まで思っていましたが、何故このジャケットの写真、少しボケた感じ、さらには逆光気味の写真なんだろうかと。


コレも同じ若松氏がインタビューに答えておられましたが、ピントが少しズレていようが、逆光だろうが、若松氏がピンッときたものをジャケット写真に選んでいたと…。


確かにこのインパクトある色合いにファッション、更にはこのヘアスタイル…でも、この少しはっきりしない感じの写真の中の聖子の表情。

四次元の世界に佇む感じがするかもしれませんね。


そんなアルバムを飾るオープニングは

1.真っ赤なロードスター

林哲司作曲の車のエンジン音のSEが右から左へ走り抜けて始まるポップなナンバー。

随所に奏でられるパーカッション、抑え気味のドラムの音がイイ軽さを演出していて、過激にならない絶妙なポップロックになってますよね。


松本隆、この曲でも少し松田聖子に課題を与えていますよね。

男勝りな(なんてコトバ、今じゃ叩かれる発言?)な勝気な、でも可愛らしさ兼ね備えた、モテる女性像を描いていますが、アイドル曲には使われないであろうフレーズが。

「女だと甘く見て」、「歯ぎしり」、「蹴飛ばして」、「上等じゃない」、「性懲りも無く」など。

アルバム『Canary』、「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES 」、「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラ」でぐっと大人の雰囲気を歌い上げた聖子に、次は時代を牽引すべく、大人しいだけのお淑やかな女性だけではなく、「男勝り」な女性像を当て嵌めて。


コレをまたまた聖子は嫌な感じを全く感じさせずにこれらのフレーズを歌いこなしているんですよね、まだ当時は22歳なのに。


正直初めて聴いた時、アルバムのオープニングとしては弱いかな、それに歌声もあまり調子良くないのかなぁ?なんて思いましたが、いやいや聴き込んで行くにつれて、このハスキーな語尾の発声や少しトーンを落とし気味の歌声が、この激しすぎないサウンドにピタッとハマっていて、アイドルらしがらぬフレーズも、勝気な女性像も闇雲にトンがった印象にならない聖子ポップに仕上がっているコトに気付かされるんですよね。


もちろんトーンを落とし気味であっても、情景描写、心情描写の表現力は抜群で、サビの「ロードスター」のフレーズだけでも


1番は ♪男達にテールを振って 走る赤いロードスター

この時は勝気な女性のまま「ロードスター」と歌っていますが、


2番では ♪誰も 誰も追い越せないの ちょっと寂しいロードスター においては、普段見せている顔とは違う、主人公の中にいるホントは寂しがり屋な部分が垣間見れる、囁くような吐息まじりの「ロードスター」と。


間奏後の♪ハイウェイ〜は、時折り覗かせる寂しさをも振り切り、晴れやかなイメージで聖子の抜けるような歌声で伸びやかに。


そのまま主人公の女性が海岸までのカーレースに向かうところ敵なしの圧勝で走り抜けるかの如く、突き抜けるように一気にラストスパート。


最後の「走る赤いロードスター」で寂しさをも昇華して、前を向いて進んで行こうとするレース前よりも成長した女性が、少しハスキー気味な歌声、でもブレることがない芯のある声で ♪ロードスターと締めくくっていますよね。


もう、やはりこの表現力っホント凄いですよね。

約4分半の曲の中で、主人公の心情を表現するチカラ。

若松氏が良く語っていますが、変に歌いこますのではなく、少ない回数での歌入れで、聖子の直感、感性を活かしていたと。


若干22歳でこの短いストーリーの中に織り込まれる主人公の胸の内を嫌味なく表現して、どんな曲もフレーズも聖子ポップスにしてしまうって。


2.ガラス靴の魔女

南佳孝が作曲ですね。

このアルバムの中で1番キャンディ・ボイスを感じられる曲ではないかと。

この曲も結構難しいですよね、サラッと歌っている感じですが。

サビよりもAメロ、Bメロ。

1音1音に言葉が当て嵌められていて、ダラダラと歌うとホントつまらぬ曲になりがちなトコをきちんと1音1音に言葉を置き、でも必要以上に歯切れ良くならない程度に。


♪ アンブレラ手にフワフワ 

 青空を飛ぶの


フワフワだけど、ムダにフワフワしていない‼︎


コレがイイんですよね。

淋しい歌詞でもどっぷり浸ってしまい重たくなるトコまでには絶対にしない。

フワフワだからって、フワフワ歌わない。

この感性、ある意味寸止め的感覚がホントに素晴らしい‼︎


♪洒落たジャケット着て デートなのね

 もう絶対許さない 邪魔してあげる


このフレーズのデートも「デ・イ・ト」なのね と歯切れ良く。


2番においても

♪煙突に腰掛け 溜息つく

 あなたの器用さには お手上げだもの

「た・め・いき」と。


先にこのアルバムの中で一番キャンディ・ボイスかもと言いましたが、一方で一番嗄れた声かも。

そう、ハスキーではなく、しゃがれた。

大音量で聴くと、高音部分の発声歌唱、ちょいとぶれるというか、割れるというか。


ここまでな感じは珍しいなぁ〜と思っているんですが。

そう、コレまたいつも以上に勝手な想像、想いなんですが、こんな感じって「風立ちぬ」や「白いバラソル」時期、そう声変わりする頃にテレビなんかで聴いた感じに似ていると。


約2年半前頃の声変わりからの喉の調子が戻りつつある時なんじゃないの⁇って。

黄金の1983年…なんて言われている時期はキャンディ・ボイスを確立した時期ですが、そのキャンディ・ボイスにデビュー当時のロングトーンの大声量を取り戻しつつって感じかなぁ〜と。


この後の『Windy Shadow』では、やや嗄れ感はあるものの、ロングトーンの発声が戻り、キャンディ・ボイスと共に素晴らしい歌声を見せてくれていますから。


3.いそしぎの島

この楽曲は聖子自身からアルバムにもう1曲バラードが欲しいとのことで採用されたと言われている尾崎亜美作曲の切ないバラード。

この曲の採用が「天使のウィンク」や「ボーイの季節」につながるワケですよね。

更には映画【カリブ・愛のシンフォニー】の挿入歌としても起用され、この映画のサウンドトラックにも収められていますよね。


ここでの注目はやはり松本隆氏の言葉運びとキー。

エリザベス・テイラーとリチャード・バートン共演の往年のハリウッド映画【いそしぎ / The Sandpiper】を思い浮かべてます。

この映画ではヒロインが助けた“いそしぎ”を治療し、再び大空へ放つシーンがこのヒロインの心情を現したモノとしてタイトルにされていますが、この「いそしぎの島」も松本隆氏がこの映画を意識せずに書き上げたとは思えません。

分かれと旅立ちを重ね合わせて描いたんじゃないかと。


ピアノを主とするメロディラインで綴られています。

キーボードは山田秀俊。

松本隆の切ない歌詞が並び…。


♪ 柱の影で あなたを見たのよ

   誰かに腕を回して スローダンス


実のトコ、スローダンスの「ロ」あたりの音域はちょっと厳しい感じ。


サビの♪いそしぎが 鳴いている の「が」もこのキーではちょっと苦しそう。


でも、松本隆氏が描き並べる言葉にこの少し聖子自身の音域外の音も、淋しげで憂鬱な気持ちを表現してされているんですよね。


♪渚のパーティー テラスから海へ

  火照った頬に冷たい風ね


コレは渚のバルコニーの続編?とも思わせる情景。


♪いそしぎが 鳴いている

  何も感じない 濡れた砂のシェード

  誰と踊っても 怒ることもできない

  懐かしい人


  Twilight 透明なメランコリー


もうこの歌詞は素晴らしいですよね。

いそしぎは磯を拠点として営みをする鳥。

まだ、あなたへの気持ちが残っていて、いそしぎのようにあなたの元へ戻りたい気持ちがあるにも関わらず、あなたは見知らぬヒトとチークダンス(スローダンス)を。

濡れた砂浜に写るあなたの影はもう、私のコトなんて気にもしていない。

ただ,懐かしい人。


でも、この夕暮れ時、私の気持ちは漂うだけ.まさに透明なメランコリー。


この描写、ホント凄いですよね。


そこにこのキー、もう一つキーを上げた方が聖子的には歌い易いはず。

高音も全然地声でまだ出せたはず。

でも、敢えて少し苦しい目のキーを充てがう。


コレってやはり大村雅朗氏のなせるワザ?

だって、大村雅朗氏なら当時、聖子のキーなんて誰よりも知っていたはず。

なんなら、聖子と大村雅朗氏の信頼関係なら聖子自身もキーが低いと言えたはず。


でも、そこを敢えて狙う大村雅朗氏と松本隆、聖子自身。


綺麗な、少し淋しげな曲としてサラッと聴いてしまいがちですが、結構ハードルの高い曲ですよ。


それにこの尾崎亜美の曲、難なく歌っているように聴こえますが、かなり難しくないですか?

上げ下げがかなりあり、どちらかというと音の取りにくい上げ下げ。

囁くかのように優しく歌ってますが、コレかなり難しい曲ですよ。


どこかのレビューで、ただキレイ目の曲で可もなく不可もなく、どちらかと言えばチョットざらついた感じ…みたいなコメントを見たことがありますが、この楽曲を可もなく不可もなくに仕上げる、歌い上げる聖子の凄さを全く分かってないですよ。

80年代の他のアイドルはまず歌いこなせなかったでしょう、この曲。


アルバムの3曲目、ファンタジーをコンセプトとしたこのアルバムの中では派手さはなく、インパクトからすればやや薄い目ではあるものの、タイヘンさを感じさせない歌声,表現力に脱帽って感じです。


4.密林少女(ジャングルガール)

いや〜、もう初めて聴いた時から大好きな曲ですね。

2007-2008年のカウントダウンパーティーのオープニングで久々に披露、更には異例の同曲アンコールにも応えてくれ、アンコールでも非常に盛り上がった曲ですよね。

あのパフォーマンスはホントにヨカッタです‼︎

この曲はやはり大村雅朗氏のアレンジが光りますよね。


第1音からしてプラスの音でジャングル、ターザンな雰囲気に一気に聴き手を導き、密林を冒険するワクワク感を掻き立てる前奏。


個人的に好きなのがこの高揚感を感じる前奏から本編への繋ぎにおけるコーラス。

好きなコーラスアレンジの曲をよく見ると、比山さんと木戸さんのコーラスなコトが多いんですが。

この「密林少女」もやはり木戸泰弘氏と比山清氏によるモノ。

ハモるサビの部分においても聖子の歌声を全く邪魔せず…というかベストマッチで。


サビの


 ♪私はジャングル

   おませなジャングル・ガール


のジャングル、ジャングルガールのトコがイイのはもちろんなんですが、1番の1回目のAメロ、Bメロに続き、2回目のAメロに繫るトコの一聴シンセによる高音によるフック的なサウンド部分。

本編に何度も奏でられ、聖子の歌声が響くときにはこのコーラスは入っていないんですが、このBメロからまたAメロに戻る際のワンフレーズにだけ、2人のコーラスが乗せられているんですよ。

2番はAメロ、Bメロの後にサビの流れなのでこのコーラスは1番のみ。

「ルルル」なのか「ウウウ」なのか、発音的に上手くは聴き取れないですが、イイんですよ、ココが。


更に先述の前奏から本編、間奏後の2番の本編前の繋ぎもホントイイんですが、2番のサビからブリッジ的に重ねられ、最後のサビへ繋がるコーラス。


このコーラスがこの歌のクライマックスへ高揚感満載で導いてくれるんですよね。


えっ、聖子の歌声じゃないの⁇とって?

もちろん聖子の声でこの歌が歌われているからは言うまでもなくなんですが、このコーラスが素晴らしい。


そして、クライマックスへの流れにおいて、2番のサビの

♪ 私はジャングル

   勝気なジャングル・ガール

   肩に乗せた 黄色いオウム


の「黄色いオウム」の「い」の発声くらいからオーバーラップして奏でられる松原正樹氏のギター、コレが最高‼︎


1番のサビでも、最後のサビでもこのフレーズのあたりからこのギターがオーバーラップして行くんですが、この2番におけるこのギター、もう松原氏も凄く乗っているのが分かるくらいイイ感じに走り、クライマックスのサビでもその勢いは止まらず。


コレも若松氏が言ってましたが、アルバムの曲についてはあれこれ細かい事を言わなくても、聖子プロジェクトに参加するアーティストのアイデアや感性にお任せしているトコが多かったとのコトですが、この曲しかり、「時間の国のアリス」しかり、編曲担当の大村雅朗氏やギターの松原正樹氏など、聖子のデビュー当時からのチームワーク、信頼関係がなせるワザなんだと、今改めて聴いても思いますね。


もう、どんどん長くなっちゃいますが、

サラッと聴いちゃうとあまり気付かないんですが、2番のサビ前の「あなたが好き‼︎」って、「青い珊瑚礁」と同じ流れ?

音階はやや異なりますが、サビへ繋がる前にこの印象的なフレーズをもってくるあたり、松本隆氏なりの三浦徳子氏への敬意? それともたまたま??


そう、実はこの前奏、結構長いんですよね、約35秒ののちに聖子の歌声が。

このアルバムの翌年NYのヒットファクトリーで歌入れされる『SOUND OF MY HEART』からのリードシングルの「Dancing Shoes」。アルバムの1曲目を飾るこの「Dancing Shoes」は日本向けに前奏や全体の曲長さを調整して約29秒にされたとか。

12インチシングルとして発売された「Dancing Shoes -Club Mix-」は約5分50秒で、前奏は約1分。

今思えば、全然長くなく自然な曲構成なんですが、当時の日本でのポップスにおいては前奏は短く、約3分みたいな風潮があり調整されたんでしょう。


さて、話は密林少女で、オープニングナンバーの「真っ赤なロードスター」と共に当時にしてはバラードでもないのに意外と前奏が長い曲。

でも、全然長さを感じさせない曲。


アレンジがよく、その前奏により導かれる歌声。

トータルアレンジ、構成がホント光る楽曲達ですよね。


5.時間の国のアリス

引き続く40周年企画の2021年の第2段シングルとして「時間の国のアリス〜Alice in the world of time〜」としてセルフカバーがリリースされましたが、やはりこの松原正樹氏のギターとついつい…。

原曲は、今の時代なら松田聖子featuring with 松原正樹でリリースしても決しておかしくないくらいのギターが今尚聴くことができますよね。


ホント当時の松田聖子プロジェクトに参加する方々が真剣に取り組まれていたコトが分かり、今尚この楽曲が語られて、更には当時より高い評価をされる…。

アイドル曲として当時影に隠れて、聖子の歌の表現力や楽曲の完成度の高さにあまり目を向けられなかったですが、ホントに高い技術と感性により作り上げられたんだなぁ〜と。


でもね、当時はちょっと売り上げ的には低評価。

1983年からすると何故か評価低めの1984年後半……ってそんなコトよりも前奏から響くこのギターサウンド。


正直、このアレンジは大村雅朗氏と松原正樹氏とのコンビが作り上げた傑作ですよね。

作曲は呉田軽穂ことユーミンで、松任谷正隆がコレまでは編曲担当していましたが、この大村雅朗氏の採用‼︎ ホントにホントに素晴らしい‼︎


松原正樹氏のギターは間奏でたっぷりと聴かせてくれますが、前奏からしてもうイイ感じなんですよね。

このギターでワンフレーズ奏で、島村英二氏のドラムで一気に弾け、本編の聖子の歌声と共に始まるベース。

目立たないけど、このベースがホントにいいんです。

ポイント、ポイントで響くストリングス。

こんな生楽器の合間にプログラミングされた電子音がなんとも言えぬタイミングで流れ。


イヤ〜、この演奏だけでも凄いのに、ここに聖子の声。

この大村雅朗氏の感性と計算がすばらしくって。

ただ、伴奏と歌い手の足し算だけに留まらぬ、掛け算や、何乗にも及ぶ仕上がりになるコトを見込んでのアレンジ‼︎


ココで聖子の歌声、凄く落ち着いているんですよね。

コレってやはり「Strawberry Time」の時も同様なんですが、ファンタジー系の歌詞が並ぶ楽曲では、その可愛らしいさを前面に出した歌声ではなく、ハスキーな落ち着いた声でしっかりと曲のメッセージをも伝えているんですよね。

以前にこの「時間の国のアリス」へのレビュー的なモノを目にした際に、あまり聖子の声が乗っていない、いや、詩の世界を理解できていなかったのでは…みたいなのを読んだコトがあるのですが、この落ち着いた感じ、ハスキーな感じをそう感じるのかも知れませんが、ファンタジーな世界の詩に込められたメッセージ性を理解しているが故の歌声だと思うんですよ。


少女から大人への変わりつつある、葛藤と不安、そして期待感を抱き、大人の恋へ踏み出した主人公の心情をアリスを通し描かれている、ただきらきらのファンタジーだけではないんですよね。


鳶色のほうき星 流れて消えて

街角を客船が通り過ぎるわ


物語の頁を開き、語りかけるような歌声、それは幼い子供に眠り際に絵本読むように。


半袖のセーターを 着ているあなたが

Wow wow

三日月に腰掛けて 指笛吹くの


Wow wow で少し元気な、子供っぽいところを覗かせて、



魔法の時計 逆に回せば

赤いリボンと ピースの指輪


時計を逆に回し、幼い頃の素直な少女を思い描く。


Woo Fairy Girl

あなたを追いかけ空を飛ぶけど

うまく飛べない

Woo Fairy Girl

私はちょっぴり不機嫌

時間の国のアリス


少し背伸びをして憧れの貴方の後を追うけれど、なかなか大人の女性にはまだなれないもどかしさ、そんな主人公をロングトーンにWooを乗せ、精一杯大人の女性へ頑張る感じが表されており、でも、やっぱりまだ私はFairy Girlこと少女の純真さを持っているのよ、Fairy Girlをアピール。

だから、ちょっと待ってよ‼︎と言わんばかりに勢いよく、時間の国のアリス。


この強弱の付け方が、ホント素晴らしいんですよ‼︎

Fairy Girlな一面を見せる時は元気に、でも大人になりつつある面を見せるトコは落ちついたハスキーな声。


誰だって大人にはなりたくないよ

永遠の少年のあなたがいうの


こんな彼は既に落ち着き払った大人。

まだ見ぬ世界へ招き入れてくれるのはそんな彼。


ここでも、ハスキーな歌声により大人な彼を表し


シャム猫のぬいぐるみ 抱きしめながら

Wow wow

叱られた子のように 私立ってた


で、まだ彼からすれば子供っぽい自分をちょっと甘い声と、元気なWow wowで表現。


瞳閉じれば 四次元の道

タキシード着たウサギが走る


ここで大人への世界への憧れを楽しげな歌声で歌い、期待感が言葉以上に伝わってくるんですよね。

そして、サビで少し子供っぽい感じを勢いよく歌う。


Woo Fairy Girl

童話の世界じゃ キスする時は

おでこにするの

Woo Fairy Girl

くちびる尖らせ 振り向く

時間の国のアリス


さらに、ここでやはりイイのは松本隆の言葉運び。

♪童話の〜おでこにするのって歌詞、そう、裏返せばもう子供じゃないからそんなおでこへのキスだけじゃ満足しないから、なのに何故進んでくれないの?ってコトをファンタジーの世界を旅するアリスでオブラートしているんですよね。


松原正樹氏の極上のギターによる間奏に導かれ


♪かぼちゃの馬車と毒入り林檎

頬つねっても 痛くないのね


それは夢の世界…私を夢の世界へ連れてって…大人の世界へってコトですよね。


この歌詞達をただ、ファンタジーな童話な可愛らしい歌だけのものではなく、少女の心を描いたものとして捉えたが故の曲全体の歌唱表現。

もう、パーフェクトですよね。


松本隆による詞、ただ単にファンタジー路線を描いただけではなく、しっかりと聖子が歌う女性像をまた一歩、大人の世界に進めているんですよね。

このアルバムには収録されていない、当初この「時間の国のアリス」のB面、後発売では両A面として「夏服のイヴ」と共に、大人の世界へ揺れ動く気持ちを表現していますよね。


今尚、いや改めて評価されるこの楽曲。

いや、何故当時あまり、評価されなかったのかが不思議な程完成度の高い楽曲だと思うんですけどね。



さてさて、すっごく、すっごく長くなりました。

後半はまた、後日ってコトで。