県道五号線を左に曲がれば 桜の並木通りが姿を現す。
この道順が好きなので 少しばかりの遠回りならば ここを通る事にしている。今は 同じ面を並べてハゲ茶瓶が冬の寒さを強調して ピンクのパワーを溜め込んでいるので 根元周りの雑草の逞しさに心を奪われて ゆっくり ゆっくり進んでいる。雪は積もらずに厳しい寒さだけを置き去りにして 消えてしまった。自画自賛の笑えるネタは今年 陽の目を見る事があるのだろうか。
(フフフ…)

思い出すたびに笑えるいいネタなのに
まとまった雪が舞っている。珍しいことなので テンションは自然と上がっていく。このまま降り続いてくれたらいいのに。と いつも思うけど 中途半端に春が来るんだ。
以前 降り積もった時には本当に面白かった。
目にする光景が ほとんどコントの舞台だったからな。

俺自身を筆頭に全ての人たちがドリフターズ。
あとは
志村を演じるか。いかりやで笑いを取るかの選択だけだ。

さあ 今日は コントのネタを考える事を念頭に置いて 生きていく。
3日前に熊本の後輩から電話があった。
新年の挨拶と称して昔話に花が咲いた。その時の話題に俺と縁があった女性が亡くなったというのもあり 複雑な思いで電話を切ったのだが もう20年近くも前の ほんの僅かな時を共有しただけの思い出の中だけの女性だから 現実的な感情も生まれず本日に至った。

夕暮れの バイパスを車で走っていた。
雨が1日中降っていて ものすごく道は混んでいた。規則的に動くワイパーに眠気を覚えながら ラジオのチューニングを変えた矢先に 彼女の好きだった曲が 流れ出した。その瞬間 記憶があの頃の時代に吹っ飛んでしまい その時に味わった切ない胸の痛みがよみがえってしまった。

(彼女はもうこの世界には居ない。死んでしまって 骨になり 冷たい地面の下で 大地に帰っていった。)

あの頃 触れた 肩や髪や唇を リアルに覚えている。自分の好きな曲を録音したカセットテープを持って 真夜中に家を抜け出して俺に会いに来てくれた彼女と聴いていた唄が切なくラジオから流れているんだ。
雨は 意地悪そうに センチメンタルをエスカレートさせ続け ゆっくり ゆっくりと 車は 我が家へと近づく。多分 二人で聴いた曲を耳にするたび思い出すのだろう。

いつの間にか 瞳いっぱいの涙が 瞬きと共に ハンドルを濡らした。


いつまでも 忘れることは ないのだろう。