私は現在、水素エンジンの研究開発に携わっています。水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しない可能性を持つエネルギーとして注目されています。しかし、新しい技術だからといって、それだけで社会に受け入れられるわけではありません。
技術者として私が常に考えているのは、「その技術は本当に使われ続けるだろうか」ということです。
研究室の中では優れた性能を示しても、実際の現場では事情が異なります。暑い地域、寒い地域、整備環境が十分ではない場所。そうした条件の中でも安定して動き続けてこそ、本当の意味で実用的な技術と言えます。
その点で、私はスーパーカブから多くのことを学びました。
スーパーカブは世界中のさまざまな環境で使われてきました。開発者たちは単に性能を追求したのではなく、「誰が使っても安心して動くこと」を重視しました。その考え方は、時代が変わった今でも色あせていません。
水素エンジンも同じです。最高効率や最高出力を競うだけでは十分ではありません。人々の暮らしの中で長く使われ、信頼される存在になれるかどうかが重要なのです。
未来の技術を考えるとき、私はいつも過去の名機たちを思い出します。優れた技術とは、新しいだけではなく、人々の役に立ち続ける技術なのだと思います。
