パラレルワールドへ行ってきました


いや…夢の中でね




夢の中の俺は若く、恋愛で人生を


壊したりもしていない


社交的で見栄っ張りな奴のようだ


親戚と遊びに行ったりしている


…時折り現実社会の記憶がある俺は


その光景を不思議に眺めていた



家に帰ると親父が寝ている


具合が悪く、何も食べれてないようだ


夢の世界の俺は冷たく


あー、もう親父も永くないな


って感じで素知らぬ振る舞いだ


すぐに外に遊びに出掛けた



福岡の天神あたりを徘徊していた


と、遠くから目の前まで人が走ってきた


紛れもなくお袋さんだった


あんただけは、プラプラばかりして…


親戚の○○ちゃんにホタテば送っちゃる


って言ったとも忘れとうやろ?


しっかりせんね


しょんなかね、こればやるけん食べりい



何故かグミをくれた


ホタテ? 何故に福岡でホタテだろう


ただ、確かにそんな約束をしてた


その世界の俺は、思い出したかのように


走りだして冷凍コインロッカーに行く


ホタテの入った3つの箱


それをロッカーから取り出して


お袋さんからもらったグミを食べる



…と、俺の思考は、その世界の中の俺に


取り込まれてしまった


一目散に家へとフルダッシュで帰った


両親にホタテを食べさせたくて…



家に着くと両親がいた


親父は食欲が無いせいかフラフラしてる


お袋が俺に向かって話す


あんた、やっと戻ってきたっちゃね


もう、お父さんとも会えんくなるけん


ちゃんと話しんしゃい



俺は親父にホタテを食べるように言ったが


胃癌なのか、親父は食べようとしない


ただ、ありがとうと言うだけで食べない


松屋の痛み止めを飲めば少し良くなるけど


もう買い置きがなかったい


と親父が言った


あんたが戻ってきたとが一番良かとよ


松屋は危なかけん行かんでよかよ


最後にお父さんといっぱい話しんしゃい


俺は引き止める両親を振り切り


松屋へと走っていった


って…松屋って牛丼屋じゃね?


だって本当に松屋やもん


「胃の痛み止めを特盛で下さい」


「痛み止めは転送となりますが


厨房でご自分で作ってくださいね」


ハンバーグをこねるように


気持ちを込めて作るのだと教えられた


親父を助けたい…そんな気持ちを込め


…薬はなんとか完成した


「たくさん特盛りができましたね


確実に家のほうに転送しときますね


ついでにお客様のほうもね」



転送…現実社会での目覚め


異世界の父はきちんと食べてるかな?


どのパラレルワールドでも俺は親不孝だな


お父さん、お母さん、兄ちゃん…


そんな呼称で呼んでた頃が懐かしいな


夢って記憶を呼び起こす為のものなのかな



そんな気がする昨今の浮雲でした