こうやって過去を振り返ると

鮮明な事柄とぼんやりとした事柄

書いた後に思い出したりと…

たられば…感が湧いてきたり…

なかなか前に進みません…









マサくんの部屋に住み込んだ後も

寮メンバーとも付き合いはあった

ただ、あの暴れた事件の事もあり

皆が低姿勢になっていた

あまり深くは接しなかったが

竜也、大介、圭介、ここいらとは

何故か腐れ縁のようなもので

毛ジラミ事件の後も仲良かった



竜也は仕事中もプライベートでも

とにかく自分では煙草を買わない

常に人の煙草を貰って吸う奴…

俺はイタヅラ心で…


竜也が特に好む煙草を購入して

煙草の中身数本に七味唐辛子を

混入させて、テーブルの上に

無造作に置いていた

すると…

「おー、ショッポーや!

誰のか知らんけど貰うわ」

と言って、仕込み煙草を吸った

…次の瞬間…

凄まじく咳き込んで、顔中が

涙だらけになっている竜也…


「この煙草、絶対におかしい

煙草産業に苦情の電話するわ」



そして、電話の対応が悪いと言い

タクシーを飛ばして煙草産業へと

カンカンになって向かって行った



その後、1、2時間経つ頃に

寮の電話が鳴った…

警察署からの電話だった


煙草産業へ行ったものの

警察を呼ばれて連行されたのだ

仕方が無いので、俺が警察署へ

柄受けに行ったのだが…


警察官が…

「この人、何が言いたいのか

さっぱり理解できないんですよ

味が変、味が変ばかり言って…

とにかく警察も暇じゃないので

連れて帰ってもらえますか?」


俺は警官に頭を下げて

竜也を落ち着かせて寮へ戻った

帰りのタクシーの中で竜也は…


「アキラが来てくれて良かった

帰ろうとしても帰らせてくれんし

何を言っても通じんかった…

アキラは命の恩人や、ありがとう

本当に助かったわ」


さすがに、俺も胸が痛かった…





大介は、ガッチリタイプで

呉弁を喋る親分肌の男だった

新人が入ってくると必ず

まずはカマシを入れて従わす


ただ、相手が開き直って

向かって来ようとすると…


「ワシに向かってくるとは

お前、根性があるのぉ

よし、お前は男として認めたる」


1度すらケンカするのを見た事が

無かったような気がする…

まあ、コケオトシな奴だった…





圭介は、顔は万人ウケする男前

ただ、皆が寝静まった昼頃…

鏡を覗き込んでは


「僕ってどうしてこんなに

可愛い顔をしてるんだろう?

宇宙で1番素敵なのは僕だ…」


と、独り言をいつも唱えている

普段の会話も…

幼い頃に近所に恐れられている

狂犬がいて、10分くらいの間

睨み合ったが、狂犬が目をそらし

恐れをなした、とか

とにかくレベル幼稚園の奴…



こんな愉快な仲間達とも打ち解け

日々の生活もなんとなく充実して

それなりに楽しく過ごしていた…



が、

竜也が俺に言ったひと言が

俺の生き方や考え方を豹変させた

そして皆の生活自体も…









リカもいつも寮の話で笑ってたね

まあ、唐辛子事件の時は

心臓が悪かったら死んじゃうよ

って怒られた記憶があるけど…

そんな時だったんだよね…

あの俺を変えてしまった事件は…