商業界創立者、倉本長治の遺した商人の行動指針「商売十訓」の2番目に挙げられているのが「創意を尊びつつ良い事は真似ろ」です。


商売十訓の元となった「商業界ゼミナール誓詞」には、こう記されています。

「商売に創意工夫を尊重し、なお善いことは研究のうえ大いに真似る進取性を持とう」

 ここからもわかるように、まずは創意を尊重することが大切です。

 

戦後、日本の小売業はアメリカを模範として、徹底的にその技術を真似てきました。ダイエーの創業者・中内功さんはかつて、こんな言葉を残しています。

「商業の世界には製造業のように知的所有権でノウハウが保護されることはない。自分にとって良いことがあれば、猿真似でも、物真似でもどんどん真似ていい。それが許される世界である」

 

この言葉のとおり、ダイエーは猛烈にアメリカの事例に学び、日本一の小売企業となりましたが、その後はご存じのとおりです。他のチェーンストアも同じような道のりを歩んできました。

 

ここで大切なのは「良い事」を真似ること。自店にとって「良い事」とは何かを見出す精神がなければ、良い事は真似られません。創意工夫とはその精神そのものだと理解しています。

 

同業の成功事例を表層的に真似ても、その接ぎ木から芽が吹き、花を咲かせることはありません。簡単に真似られることは、簡単に廃れます。

 

真似るならば、まったくの異業種・異業界の事例から、その本質をとらえることです。そのためには高い抽象化能力を持たなければなりません。

 


倉本長治はこんな言葉も遺しています。

「バイブルにも論語にも商売のやり方は書いていない。だが、商人に一番大切な本が、そのバイブルと論語なのだ」


どうですか、どうせ真似るなら、ここまで突き抜けてみては。創意を尊びつつ良い事は真似ろ――この14字の意味するところを、あなたも考えてみてください。