先日のブログで紹介した奈良の和菓子の名店「千壽庵吉宗」の店主、山本哲也さんから経営方針を教えていただきました。
穏やかを創ろう――このひと言に山本さんが目指す商いの姿があることを知りました。
同店の看板商品はわらびもち。
その品質とおいしさを裏づけているのが、実は次に紹介する「志」なのです。
千壽庵吉宗が目指すのは、お菓子を通じて人々に「穏やかな幸せ」を提供することです。
お店に入った瞬間やお菓子を食べた瞬間、こころがふっと穏やかになるような商品、店舗、おもてなしを目指しています。
同時に、ここで働く社員一人ひとりも、穏やかな人であってほしいと願っています。
このとき、穏やかとは何を指すのでしょうか。
千壽庵吉宗では、こう定義しています。
穏やかなお店
(非日常にいるような気持になれるお店)
穏やかなお菓子
(いつ食べても同じ品質、同じ商品)
穏やかな人たち
(やるべきことを自分で考え行動する)
穏やかなサービス
(お客様のペースやニーズに合わせたサービス)
家に帰って穏やか
(ほっとする時間を創る)
ご覧のように、店や商品・サービスはもちろん、そこで働く仲間、その先にある家庭にまで“穏やか”を実現する対象としています。
では、どのように穏やかを創ろうとしているのでしょうか。
千壽庵吉宗では、次の3つを行動指針として掲げています。
①「ありがとう」と言われる仕事をしよう
商いの本質とは「ありがとう」の交換にあります。
自分と同じように大切な存在であるお客様や仲間を、自分と同じように大切にすることからしか「ありがとう」は生まれません。
相手の心をおもんぱかり、相手の気持ちに寄り添い、「いま自分に何ができるか」を見極めることが「ありがとう」の源泉です。
②2つの「わ」を創る
人々が集う「輪」と、心がすっと穏やかになる「和」、この2つの「わ」を創ることを、同店では行動指針に掲げています。
和があるから輪になれるし、輪があるところに和があります。
商いの役割とは関わる人たちを幸せにし、未来をより良くしていくところにあります。
そのためにも、この2つの「わ」は欠かせません。
③一流とは減点されないこと
こうした「志」に命を吹き込み、形とするためには、行動が伴わなくてはなりません。
掲げる「志」の純度が高ければ高いほど、行動にもその純度が求められます。
純度とは他を圧倒する力量であり、己に対する厳しさです。
わが店がお客様に選ばれる理由は何か――あらゆる段階で、この問いかけが大切です。
こうした行動指針を掲げる店主、山本哲也さん。
彼がもっとも自分に厳しく、人に優しい人物です。
これからもますますのご研鑽を、多くのお客様が期待していることでしょう。
またうかがえるときを楽しみにしています。
商業界草創期の指導者、岡田徹が遺した文章「母親の心」を贈ります。
お菓子屋さんの仕事は
一袋のお菓子に
おかあさんのこころを
そえてあげること
夕げのさとのだんらんの一とき
まるまると肥えた子らの顔をみつめて
生きることの喜びを思う人たちに
力一杯手を握ってあげようよ
あなたのお店で
ふと母親の愛情を思う
そういうお店になろうよ
山本さんのお店に伺ったとき、私がか思い出していたのが、この岡田の一文でした。



