一昨日は毎月恒例、法政大学大学院の坂本光司教授へのインタビュー日。

商業界の好評連載「坂本光司の世界に自慢したい会社」の収録でした。
毎号、人を大切にする経営を実践する企業を紹介していただいていますが、今回はNPO法人六星
主に視覚障がい者のための授産施設「ウイズ」を運営しています。
 
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坂本教授によると、日本に障がいを持つ人は800万人、その中で視覚障がいは32万人。
そのうち65%の方々が途中失明、3分の1が重度障がい、4分の1が他の障がいを併せ持っているそうです。
 
生まれながら目が見えないことの苦しさはもちろんですが、人生の途中で目が見えなくなることの苦しさもさぞかしと思います。
いままで頼っていた視覚が利かなくなるのですから、その環境の激変ぶりに落ち込み、外出できなくなる人も少なくないそうです。
 
そうした視覚障がい者の方々のための仕事を創造し、産み出した商品で社会に貢献することを事業目的とする六星の始まりは1954年、現代表・斯波千秋さんの父が、視覚障がい者が用いる白杖をつくるために興した作業所です。
敗戦の焼け野原から立ち上がり、多くの事業家が新たに産業が興そうと汗を流した時代。
父もそんな事業家の一人で、本田宗一郎と共にホンダの礎を築いた人物でした。
 
あるとき出張先で父は疲れの溜まった身体を癒そうと、あん摩マッサージ師をお願いしたそうです。
やって来たのは、目の見えないマッサージ師。
彼が手にしていたのは、竹でできた粗末で機能としても優れない杖。
 それを見た父は自分が生涯をかけるべき仕事として、目に見えない人々のためになることを選んだのです。

「おまえは自動車をつくれ!   わたしは杖をつくる!」
父は本田宗一郎にそう告げて、志を貫いたそうです。
 
写真はウイズで働く視覚障がい者の皆さんによってつくられたマグネット。
点字印刷で用を終えた鉛版を有効利用しています。
猫ちゃんの首元をよく見てください。
小さなビーズを通した首輪がつけられています。
大変なお仕事ですね。
 
商売とは一見関係ない取り組みに思われるかもしれませんが、ご紹介したのには理由が二つあります。
一つは、日ごろ商いに向き合う皆さんに、あなたのほかにも頑張る人がいるという当たり前の事実を伝えること。
彼らの努力を思うと、まだまだ自分も頑張りたいとわたしなどは思います。
 
もう一つは、商人として彼らの商品に光を当ててほしいと願うからです。
生活者は、これからは何を買うかと同じくらい、誰から買うかをますます大切にするようになるとわたしは思っています。
そのとき選ばれるのは、人にやさしい店。
彼らのつくったものを扱うことは、その一助となると考えるからです。
 
 
そんなことを考えながらパンフレットに掲載された取扱店を見ていると、取材を通じて知る店の名前がありました。
長坂養蜂場ーーたしかに、やさしい店です。
若き経営者兄弟の笑顔が目に浮かびます。