街の至る所にあり、地域のインフラとなったコンビニの数はおよそ5万4000。

じつはコンビニよりも数の多い施設がいくつかあります。

今日はその一つ、歯科医院の話です。

全国に6万8000超を数える歯科医院は完全な飽和状態。

人口1万人あたり5軒強、都市部では7軒がしのぎを削ります。

その中で超優良経営を継続するのが東大阪市にあるヨリタ歯科クリニックです。

 

 

 

 

歯科医師の数は厚生省のデータによると10万人強。

ほとんどの歯科医院が1医院あたり歯科医師2人弱という小規模経営です。

一方、ヨリタ歯科クリニックには歯科医師が12人、歯科衛生士が18人も在籍しています。

診療台も普通の歯科医院なら4~6台ですが、同医院は16台。

通常の診療台は6台、予防のための診療台が6台、そのほか小児用が2台、個室診療台が2台という充実ぶりです。

さらに待合室は約160坪もあり、40人がゆったりできます。

一般患者用の待合室と、ファミリー用の待合室を完備していて、子ども連れの患者が気兼ねすることなく通える心遣いを配しています。

加えて、託児専用のスペースがあり、5人の保育士が小さな子どもの面倒を見ていて、安心・安全を目に見える形で患者に提供しています。

 

しかし、10年ほど前まではどこにでもあるような歯科クリニックでした。

そこで、患者を確保するために顧客満足(CS)に注力しました。

しかし、クリニックはまったく成長しませんでした。

なぜなら、スタッフが次々に辞めていったからです。

一時は、3分の1のスタッフが一斉に辞めたこともあったといいます。

このとき寄田院長は、「患者さまをいくら大切にしても、患者さまに接するスタッフが満足できない職場環境では、CSを向上させることはできないと痛感した」と言います。

以来、福利厚生を重視し、院内の勉強会を定期化し、クレドやサンキューカードなどの従業員満足(ES)のしくみをつくり、「ありがとう」や楽しさがあふれている家族のような組織体を目指しました。

 

 

 

 

歯科医院が大きくなれないのは、所属する歯科医師が独立して辞めていくからにほかなりません。

寄田院長は同医院の歯科医師をビジネスパートナーとしてリスペクト(尊重)しており、同じ志を持つ「同志」と見ています。

所属する歯科医師たちも、一人で開業するよりも、同志が互いに刺激し合い、成長し合える職場の方が楽しいという院長の考えに共感を寄せています。

 

ESが向上してくると、次は患者視点で院内を見直し、通路幅を1.2m以上にするなどバリアフリー仕様に改造。

前述のゆったりした待合室や託児室も設け、専任の保育士も雇い入れたのです。

また、来院する患者をサポートするコンシェルジェというポジションを設置。

患者の自転車を受け取って納車したり、治療を終えた患者には、自転車を患者が帰る方向に向けて出したりするなど、きめ細かなサービスを提供しています。

 

 

 

 

寄田院長の口癖は「東京ディズニーランドが永遠のライバル」。

患者を待つ受け身であるはずの歯科医院でも、市場を創造することはできるし、顧客に感動を提供することも、従業員満足度を高めることもできることを教えてくれます。