利益とは何でしょうか。

それは商人の仕事の価値そのもの。

利益はお客さんに価値を提供した対価であり、社員や取引先、さらにはお客さんや地域社会を幸せにするために欠かせない事業資源です。

もう、誰のためにもならない争いはやめましょう。

 

商業界創立者、倉本長治は『考える商人』という著作で、こんな一文を遺しています。

「安ければよいという議論はないのである。廉売主義にも合理性がなければならぬ。商売が大衆に支持されるのは、売値の安いという事ばかりではないのである」

 

しかし現実はどうでしょうか。

いまだに多くの店が価格競争に明け暮れ、競合店の価格が自店より安ければそれに合わせ、最低価格保証を打ち出しています。

そんなに事あるごとに移ろう価格を目のあたりにして、お客さんはその店の値付け、ひいては店を信じるでしょうか。

 


 

値付けとは商人の意思です。
そして、売上げは商人に対するお客からの評価にほかなりません。

吟味した品を確かな意思に基づいて値付けをする、そこにこそ真商人の本懐があります。

商業界6月号特集「価格で売るな、価値で売れ!」は、倉本が提唱した真商道を目指す新しき商人へのエールなのです。

 

倉本が遺した文章のうち、私がときおり読み返すものがあります。

次に掲げるものも、その一つです。

 

他店より高く売るには勇気がいる。

競合店より良い品を扱うには努力がいる。

 

同じ商品を格安に売っても経営が成り立つというには、相当の自信が必要であるし、無理して安値を出すようでは見せかけの廉売であって、本物の商売ではない。

売価が安いということは、仕入れの安さの裏付けと、つつましいムダのない経営が伴わなければなるまい。

 

その点では、他店より高く売るためには、ただその勇気があればたりる。

しかし、競合店よりも品質の良い品を売る段になると、それは勇気だけではダメだ。

なみなみならぬ努力がいる。

 

商人の仕事に限らず、努力を伴うものほど人間にとってやり甲斐のあるものはない。

それをやりとげた時こそ愉快であり、壮快なものである。

商人の喜びは、そういうところにある。

 


 
いかがでしょうか。

勇気と努力――まずはこの二つをしっかりと見定めましょう。

特集「価格で売るな、価値で売れ」では、法政大学大学院・坂本光司教授に“脱安売り”のための五つのステップを解説いただきました。

まずは覚悟を固めることです。

より良き未来はそちらへと開かれています。
商業界6月号でお伝えしたかったのは、おおよそこんなところです。