バレンタインデー。




遠距離で平日だと当日に渡せないが
彼も今更、私からのチョコレートを当日に欲しいなどと、1ミリも思っていないだろう。




今でこそ、バレンタインの扱いが雑な私だが




15年前のバレンタインの直前
チョコレートの特設会場で
彼にチョコを渡すか渡さないか
気軽に受け取れる物にするか
お礼の気持ちだから高価な物にするか

カゴに入れたり戻したり
散々悩み、延々と考えた事を思い出す。



仕事上、一年に渡り彼にサポートしてもらう中で
お互いに好意を持った事は分かっていた。



チョコを渡す事は
サポートに対する感謝だったのだが
本命と受け取られる可能性があるので

重くならないように
サポートしてくれた彼を含めた三人に
気軽に受け取って貰える程度の同じ物を選んだ。



いつ渡そうかな、と思っていたら
彼がたまたまバレンタイン当日に
「順調ですか?」と顔を出してくれたので
「三人にはとてもお世話になったので」
と、すかさず渡した。



ひと月後のホワイトデー。


他の二人からは3倍返しの高級お菓子を頂き
逆に気を遣わせてしまい恐縮する。



仕事が終わる頃

「忙しくてお返しを用意出来なくて…手ぶらですみません」と彼が現れた。


そして

「お返しの代わりに一緒に食事に行ってもらえませんか?」

と、誘われたのだ。

策士な彼。



お店探して連絡しますね、と言われて
自然に電話番号を聞かれた。

彼の作戦通りだったのかも知れない。



初めて行ったお店で
彼から想いを伝えられ
二人で食事に行くようになった。




お礼の意味のチョコだったとはいえ
私は人生で初めて
男性に気持ちを表した経験だった。




どちらの行動が決め手になったのか
それは分からないけれど



今の関係の始まりは、バレンタイン、だ。