数年前の話だが


友達が突然
親戚の若い女の子を連れて私の家に来た。
まだハタチくらいの綺麗な女の子で
その子は新婚さんだと言う。



ご主人とは中学時代から付き合っていて
看護師になりたかったが
彼に早く結婚したいから進学しないで欲しいと言われ
高校卒業後、すぐに結婚。


ご主人が農業をやりたいと
新婚の二人は住み慣れた地を離れ
農業研修に行った所で指導してくれていた30代のバツイチ女性とご主人が恋に落ちた、という。



その子は離婚はしたくない。
でもご主人に離婚を強く迫られていた。




なるほど。

…で?
それで、なぜ、私のところへ?



「離婚しないように説得して欲しい。
それが無理なら離婚の話し合いに立ち合って欲しい」

と、友達が言う。


…だから、なぜ、私??
初対面の部外者よ。
ムリムリ!



「お願い!私だけならこの子の旦那、ぶん殴っちゃいそうだから。
穏やかに話せて中立の立場で離婚に詳しい人、他に居ないからさ」


離婚は経験したけれど
私は離婚に詳しい人、では無い。


でも、あれよ、あれよといううちに
ご主人と相手の女性もうちに来てしまい
話し合いが始まった。



怒る友達。
土下座する二人。
号泣の新妻。


その空気に耐え切れず、仕方なく口を開く私。



「中学から付き合って自分の夢を諦めて、ご主人の夢を一緒に叶えようと知らない土地に移住したのに
たった8ヶ月で離婚したい、なんて言われた奥さんの気持ち、分かる?」


ご主人は「分かります。全て僕が悪いから出来るだけ慰謝料払います。でも彼女と結婚したい気持ちは絶対に変わらない」と言い


隣でバツイチ彼女が「お願いします」と泣き続け
新妻が罵倒する、という図。



カオス
修羅場
地獄絵図



「じゃあ、責任として奥さんを元の夢の道に戻してあげるのはどう?看護師になる為の学費を払ってあげるのは?
もちろん、それとは別に二人とも慰謝料もだよ?
婚姻期間が短いと慰謝料は少なくなりがちだけど
誠意をみせてあげて欲しい」と言った私に


「出来るだけ謝罪の気持ちを金額で表します!」と
ご主人が表明する。


なんとなく全員が納得した形になり

すったもんだありながらも

なんと、翌週に学費込みで1000万が支払われた。



二人から500万
祖母から350万を借り
消費者金融から150万借金して用意したのだそう。

1000万はびっくりした。





その後、その子は実家に戻り
看護学校に進学、無事看護師となり
同じ病院のドクターと再婚した。


今年の年賀状には赤ちゃんの写真。




あの時は
全く見ず知らずの夫婦の仲裁をする流れになり
なんで、私が?…
腑に落ちない…荷が重い…なんだこれ…と、

自分がどの立場で話しているかよく分からないまま苦しい時間の中にいたが


若いその子は
たっぷり慰謝料を貰い
軌道修正して
今は幸せそうで


数ヶ月で離婚に至ったけれど、早い決断が結果的には良かったね!
人生何が起こるかわからないね!

と、その子から年賀状が来る度に思い出す。




ご主人の方は
付き合って3ヶ月の熱烈な、盲目な時期に
全財産投げ打って出した結果が
せめて吉と出ていて欲しいな、と思ったりする。




が、ご主人とバツイチ彼女のその後は分からない。




年賀状の当選番号を確認していて思い出した
巻き込まれエピソード。