右上腕が強い力でベッドサイドへ引っ張られているので、右手掌も右側によっていく。
右手掌がベッド柵に触れた。
ベッド柵を握った。と、言うよりも右上肢に障害をもっているので、力が入らず柵をもった。
とにかく、ベッドから引っ張り落とされないように、落ちないようにしたかった。
でも、アタシの右上腕を引っ張っている、そこにいるのは誰なのか、を、見てみたい、でも、怖い。
アタシが入っていた病室の廊下を挟んで、病室の前は階段がある。
外来の階段から繋がっている。
だから、不審者が入って来たのか!?とも思った。
手掌でベッド柵をもったまま、指でナースコールのコードを探したがわからず、ベッド柵の他の箇所に手掌を滑らせて、また、指でナースコールのコードを探した。
ナースコールのコードにあたった!
そのまま指を滑らせると、ナースコールにたどり着いた!
押した!
看護師さんがコールをとってくれた!
助かる!
でも、強い力はそのままで、引っ張っている。
ドアが開いた。
看護師さんがもたれていた懐中電灯がまともにアタシにあたった。
「西園さん、どうしたんですか?」
右上腕を引っ張っられていた感触がなくなった。
「誰かに右上腕を引っ張られたんです」
看護師さんが、病室の電気を点けられ、窓のカーテンを開けて見られ、ベッド下も覗かれたが、
「誰もいないですよ」
「そうですか、強い力で引っ張られていたんで、怖かったんです」
「私は、西園さんの恐怖の顔が怖かったですよ~、怖かったらナースステーションに来ますか」と、言って頂いたが、看護師さん方の余分な仕事を増やすだけなので、遠慮をし、電気を点けてテレビを点けてもらうように頼んだ。
翌日の日勤で全身清拭をしていただいている時に、
「右腕(右上腕)どこかで打った?うっすらと青紫色になってるけど」
と、聞かれたが、深夜、アタシは寝ていなくて、うつらうつらとしていたので、「そうですか」と、だけ応えた。
数日後、この出来事を他の看護師さんと話している時に、その看護師さんが、
「ここの病室ではそんなことはないんですけどもね」と言われた。
それ以降は、『引っ張っられる』の現象は起こらなかった。
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