アタシの「なんですと!え゙え゙ぇ゙~」を言い終えた直後に、
いのぶが声を荒げて「何に使うのに50万(円)も借りたんや!」
「材料費と支払いと生活費や」
「なんでそんなにいるんや」
「お母さんも知っとったんか!」
「いくら借りてるまでは知しらんでなぁ」
携帯電話をカバンから取り出し、どこかにかけ始めた。
「とらか、今、何処や」
「そうか、じゅあ、寄れんな」
とらに、色ぼけがキャッシングで50万円借り、明後日支払いのことを報告していた。
しばらく、いのぶはとらと通話しており「頼むわな」と言って切った。
「とらがキャッシングの会社に連絡して、分割で返されへんか相談してくれるさかいに」
「日曜日にお姉ちゃんにも来てもろうて、もう会社を畳む方向で話し合いするからな、それまでいくら借金があるか、整理しとくんやで、わかったな!」
いのぶがアタシに「もう、帰ろうか」と、立つように促した時に、
とよが、「今日、病院から計算ができたゆうて、連絡が来たんや。だからな、明日、病院にスリッパ返しにとな保険証だしにと、病院代を払いに行くのに、いのぶ行かれへんか?」
救急車で行ってるから、スリッパ借りてきたんや。
でも、マミの自動車で帰って来てんから、裸足で良かったやろうに。
「仕事を休まれへんからな、マミはどうなんや」
「マミはお花(習い事)があるからな行かれへんゆうしな」
「マミに1回くらい休んでもらいや、病院代もマミに払うてもらいな、今、持ち合わせがないからな」
もぅ、なんか、いのぶに叱られ、背中をまるこっくして、太ももあたりに小さい染みが付いている、ズボンを履き、毛玉がついたカーディガンを羽織り、散髪もしていない白髪の色ぼけをみながら、
アタシは、平家物語を思い出していた。
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす。
どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという。ねぇ。
色ぼけ、哀れ。
帰りの自動車の中で、いのぶが、色ぼけが社長で栄えていた時代の頃と自分の子ども時代の裕福だった頃を回想し、アタシに話し聞かせるように話しをし、ため息をついた、いのぶに、
「『ぎおんしょうじゃのかねのこえ,しょぎょうむじょうのひびきあり。しゃらそうじゅのはなのいろ,じょうしゃひっすいのことわりをあらはす』やな」と言ったら、
「『栄枯盛衰』もな」
ちょっと、ちゃうと思うけどなぁ。
『栄枯盛衰』って、栄えたり衰えたりすることやん。
でも、色ぼけは衰えたりはしとるけど、もう、栄えることはないやん。
だから、『盛者必衰』:盛者もやがて必ず衰える。の、
四字熟語が今の色ぼけに適しとるやろー。と、
いつものように、いのぶと四字熟語論争になると、タタカイもできるがこの日は黙っていた。
だって、
いのぶを観てたら、切なーくなったから・・・。
アタシは、この日、福沢諭吉サマ3枚財布に入っていたので、
とよに「病院代の足しにしてください」と、渡しとけばよかったかな!?と、思いながらの帰途だった。(-"-;)
あっ、でも、渡しても1枚だけでしたがね。(笑)
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