”社員の「一行報告」が会社を変える”(仙石通泰 書 かんき出版)という本の紹介です。


「私なんか、コレだけですよぉ」

竹村健一さんがこう叫んで小さな「コレだけ手帳」をかざす一昔前のコマーシャルだ。

そのIT版とでも言おうか、企業にとって垂涎の的と思しき「サイバー虎の巻」ができた話だ。

とにかく、ふつふつと元気が沸いてくる本である。

実はのっけからやたらカタカナIT用語が多いので、つい身構えるが、3分我慢すれば幸福に出会える。


23年間ソニーに勤務した著者が、父上の会社の後継者となってからの実体験に基づく経営手法の指南だから臨場感に富んでいる。グローバル・センス豊かなソニーから、旧態依然とした赤字体質抜けやらぬオーナー企業への転身。その企業文化の落差に唖然としながらも、果敢に革新を遂げていく過程が理論的でかつ大変解り易い。


その結果「サイバー・マニュアル」というビジネスモデルソフトを開発するにいたるのだけれど、その過程と構造、思考が細微に至り惜しげもなくひもといてある。

私の周りの経営者たちもテーマの多くは、透明性、コミュニケーション、情報の処理、コンプライアンス等々、多岐にわたり腐心している。


やれ広報だ、営業だ、現場はどうなった、社員教育はどうなっておる?とひとたび事が起こればてんてこ舞い。だからもっと情報をオープンに・・・などといっても、分かっちゃいるけど、どう手をつけるのか、といったところだ。「クレームや失敗は宝」「OJT(実務をしながらの訓練)だ」といってもなかなか真髄は遠い。それを実に具現化したのが「サイバー・マニュアル」。これによって末端社員からトップまで瞬時にして情報が伝達され、日々顧客情報から技術における暗黙知的要素まで開示、更新される。顧客の冠婚葬祭からそのマニュアルまで一目瞭然、横串縦横無尽。出金伝票も「コレだけ・・・」でできる。システムも分かりやすくパソコンのツリーから無駄なくアクセスできる。(図解入り)読んだだけでもあらゆる業種のソリューションのヒントになりそうなほど親切な解説で、私などは自分のパソコンを同じような構築にしようかと思うほどだ。


と、そんな自慢話だけではない。本書はドラッカー理論が要所にあぶり出しのように出てくる。私がドラッカー(未熟者ですが)に最近物足りなさを感じていたのは、そこに人間がもうひとつ感じられなかった点だったが、本書では会社を生態系に譬えてあり、働くものへの愛情が感じられる。電脳社長が自ら雑巾がけを思い立つシーンも対照的で面白い。

オントシ・・・・60歳は軽く超えている電脳社長のイノベーション!若きも見習おう。