2020.8,7
英文学者の外山滋比古(とやましげひこ)が、亡くなったとのことだ。
満96歳でのご逝去なので、大往生といってよいだろう。
私が高校生の時以来、著書の多くを愛読し、教科書や入試問題、模試の問題等でもしばしば氏の文章にお目にかかってきたので、とても残念だ。
[過去公開記事]
外山滋比古は、お茶の水女子大学名誉教授。英文学の先生なのだけど、外国には一度も行ったことがないとおっしゃっているそうだ。氏の書いた文章は国語教科書や入試・模試でよく使われてきた。
この本は、
1983年3月28日 筑摩書房より新書版で刊行
1986年4月24日 ちくま文庫の一冊として刊行
それから後、異例とも言えるロングセラーとなる。
ネット記事 ポストセブン から
【引用開始】
1983年に出版された同書は2016年11月15日現在、111刷、累計211万部を超えた。出版不況のさなか、驚異的な売り上げである。
11月3日のNHK『ニュースウオッチ9』でも、同書は「異例ともいえるロングセラー」と紹介された。放送翌日はアマゾンや紀伊國屋で売り上げトップになり、売れ行きがさらに加速した。
ただし、同書は最初から注目されたわけではない。1983年に出版された新書版の発行部数は2万部ほどで3年後に文庫化されたが、出版全盛の時代にも部数はさほど伸びず、年間1万部ほどの上積みで推移していた。
同書が大きく部数を伸ばしたきっかけは、2007年、岩手県盛岡市にある老舗・さわや書店で、店員の松本大介氏が記したこんなPOPだった。
〈“もっと若い時に読んでいれば…”そう思わずにはいられませんでした。何かを産み出すことに近道はありませんが、最短距離を行く指針となり得る本です〉
宣伝効果は抜群で、同店での売り上げが激増した。同様のPOPを全国展開すると瞬く間にベストセラーになり、2009年に100万部を突破した。その後も快調に売れ続け、今年2月に200万部を超えるダブルミリオンとなった。
【引用終了】
外山先生は、この本からどれぐらいの印税を手にされたのだろうか? うらやましい限りである。
ところでー
この本の冒頭のエッセー「グライダー」には青春の思い出がある。
1986年、文庫本が発刊されて間もないころ、私は大学入試模擬試験問題の問題文としてこの文章を選び、設問を作り、解答・解説、本文解説を執筆、そして採点基準も作成した。文字通り「眼光紙背に徹する」という気合で読み込んだ文章なのである。
その内容を簡単に言うと、
グライダー人間
見た目は美しいが自力で空を飛ぶことはできない。
受験秀才、学校の優等生の多くが該当。
飛行機人間
自分の力で空を飛ぶことができる。真に有為な人材。
で、結論は、
「グライダー専業では安心していられないのは、コンピュータという飛びぬけて優秀なグライダー能力の持ち主があらわれたからである。自分で飛べない人間はコンピュータに仕事を奪われる」
1983年にそう喝破した外山先生は大したものだ。
同書の紹介記事
筑摩書房 HP
ブログ トーマスィッチ