「草 餅」
加 藤 高 穂
草餅母の温みをほゝばらん
母の手の温もり今も草餅
子供の成長は早い。3月最初の礼拝に、三男夫妻の長女(2歳)も出席。会食が終ったときだった。いつ、どこで覚えたのか?「あかりをつけましょ、ぼんぼりに…」と、小さな声で歌いはじめたのである。
あれっと、みんなが聞き耳を立てる間に、「きょうはめでたい、ひなまつり」と歌い終え、思い掛けない拍手を浴びて、はにかみながら嬉しそうな表情を見せていた。
女の子の成長を祈る雛祭の起源は、形代で身体を撫で、穢れを移したものを川に流す祓いの行事と貴族の子女が節句に関係なく行っていた雛遊びが結びついたもので、現在の段飾りは、江戸中期以降の流行によるらしい。また3月3日は、「草餅の節句」と呼ばれるように、雛段に供える菱餅の一段は、緑の色濃い草餅となっている。
草餅に搗きこまれる蓬の葉は、不老長寿の薬として重宝され、邪気を払うとされてきた。そのため、5月5日の端午の節句には、菖蒲と一緒に軒先に挿したり、湯舟に浮かべて風呂に入り、草餅を食べて、この日を祝う。菖蒲は剣を、蓬は炎を表わし、いずれも魔よけの効果があると、伝えられている。
少年のころ、和菓子屋の友が、学校帰りに蓬の若葉を摘むのを手伝ったことがあった。
あの蓬特有の香りは、気取らない、好ましい「春」を感じさせてくれると共に、なぜか割烹着姿の優しかった母の記憶へと繋がっていくのである。
〔2018.3.20.〕